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女子大生が思い描いていた妊婦像


大学時代は超体育会系の部活に所属していた。
周りの友人たちが飲み会や人間関係を楽しみにやっているサークル活動とは毛色が違う。

週5で練習があり、全国大会優勝を目指すような。
上下関係が厳しく、女子しかいないので色恋に浮つくこともない。

当時は本当にアスリートの気分だった。

練習中は緊張の連続で、大会のある冬の期間はいつも精神的に追い詰められたし、若いなりにも肉体は常に疲弊していた。
どこかしら怪我や痛みを抱えるメンバーも多かった。


大学生ってもっと楽しいことだけやって、嫌なことや辛いことからは目を背けるものじゃないの?
と自分でも少し疑問に思いながらも、変に真面目すぎる性格のせいで、逃げたら負けと半ば意地で続けていた。

その頃の私が気に入っていつもチェックしていたInstagramのアカウントがある。

20代後半くらいの女性が、自分のウェディング姿だとか、イケメン夫、そしてめちゃくちゃビジュのいい幼い娘の写真や動画を投稿していて
一般人だけどとても人気のある、ママインフルエンサーのアカウントだった。

(今はフォローを外してしまったけど、変わらず続けているようだ。)

他にもひとつ、2才くらいのまだまだ赤ちゃん味ある子どもの可愛い動画が投稿されるアカウントを楽しみに見ていたと思う。

さらにはその頃放送されていた、涙なしでは観られない産科の医療ドラマ『コウノドリ』にもハマっていた。


日々勉学と部活に励む、彼氏もいなければ癒しもない成人したての女子大生にとって子をもつことは、
現実味のない、けれど憧れの将来像だった。


迫る試験期間や、ゆくゆくは必ずぶち当たる就職活動、その先に待つ社会人生活など
まだ何も見えず、いつもぼんやりと不安な将来を想って
「赤ちゃんになりたーい」なんて、よく親しい友人と言い合っていた。


母親に守られ、生きてるだけで100点満点の赤ちゃんそのものになりたい願望と同時に、

か弱い幼子を育てることを生活の本分としたいという、女性としての本能だろうか、湧き上がる欲望が両立していた。


こんなかわいい子どもがいたらどんなに癒されるだろう。
妊婦さんって幸せの象徴だよね。
いつも笑顔で、自分の子が生まれてくる日を楽しみに、ゆったりのんびり過ごすの。
そりゃつわりってもんがあるのは知ってるし、陣痛だって恐ろしく痛いんだろうけど、
それでも勉強や仕事をしなくてよくて最高じゃん。


そんな風に思っていた。

アラサーになり、今まさに妊娠期間も終盤となった私から一言「いやいやそんなにお花畑じゃないよ」と言ってやりたい。

当時より今の方が幸せを感じることが多く、心が満たされているのは間違いない。
期せずして専業主婦になったので、時間とこころにゆとりがあるのも間違いない。

けれど初期も後期も、妊婦には大変なことがたくさんあるんだぞ。



一人暮らしの東京生活だからか、楽しい友人や仲間がいても孤独や寂しさを感じることが多々あったし、
部活動を猛烈に頑張ったのは間違いないが、
率直に言って、純粋な愛や情熱を注げる対象を私は持っていなかった。


彼氏でも子供でもいいから、尽くせる相手が欲しい。

自分一人のためだけに、周りにちょっとでも優秀だと思われたいために
何かを頑張るのはもう飽きた。

自分自身の厄介な心や、イケてない容姿と付き合っていくのにもう飽きた。

周りの友人たちの方が私よりずっと幸せそうに見えたし、なぜ私だけ幸せが来ないんだろうと思っていた。

人生の主役を誰かに譲ってしまいたい。


こんな仄暗くて現実逃避したい気持ちを抱えて男に入れ込んだら大変なことになっていた気がするから

4年間彼氏ができなくて良かったのかもしれない。


いつも真面目に頑張っていたのは偉かったけど、
本当に好きなことを探す努力だったり、自分の心地よさや楽しみを優先して行動する勇気がなかったのが勿体なかったな。

親も誰も望んでないのに、いい子でいたくて、どうやって自分の心を満たすのかを知らなかった。

かと言って、今の私がその方法を分かってるかと言われると微妙だけれども。



その後就職して、結婚願望はさらに増していたけれど、あの頃の子育てへの憧れはしばらくの間なくなっていた。

まずは恋愛しないといけなかったし、
社会人として実際にお金を稼いでみて、自分自身が子どもなのに他人を育てるなんてまだまだ難しいと現実を見たからかもしれない。


当時はとても忙しいと感じていたけれど、本当は時間がたっぷりあって、暇で、私はとても退屈してたんだね。

そして間違いなく、疲れ切ってたんだね。


幼稚園の頃から夢だった結婚と、母になることが叶いつつあって本当によかったね。



大学時代の友人は、よく「母になることは人生の主役を降りること」だと言ってたけど、それは間違ってると思う。

自分が主役で、第一に自分のケアに気を配りながらでないと、きっといい母親になんてなれない。
いつも犠牲になっていると感じてるような、心に余裕のない疲れた母では、子どもが安らげる親子関係なんて作れないと思う。



これから出産・子育てに挑む私へ。

上手くやろうとしなくていいし、立派になろうとしなくていいから!
大切な私自身と、娘と夫が、みんなで幸せになれる方法をいつも考えてね。

妊娠9ヶ月、34週2日、28才の私より。


さぁ明日は里帰りだ!


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