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会えない時のオーダーメイド

30分でもライブ配信って体力使いますね…
今まで全く縁がなかったビデオ通話をする日々が続いています。
最初は「同時に喋っちゃう」「ハウリング」「通信環境」「ライティング」など気を付けないといけないポイントが多くて慣れませんでしたが、回数を重ねると「あれ、意外といけるかも」と思うようになってきました。

そして昨日(4月11日)は、まとまった時間としては初めてインスタライブをして、delightful toolの寺田さんとお話しをしました。

数値ではわからない「感覚」

テーマは『会えない時のオーダーメイド/シャツと靴の場合』。
僕らはオーダーメイドでものづくりをしていて、対面でオーダーを受けるということがほとんどです。
それは、数値だけではわからない「着心地」「履き心地」という感覚の部分を大切にしているからです。
この「感覚」を確かめるのには、思いの外たくさんの細かなやりとりが必要で、それが「機能」に関わることであればあるほど慎重に会話を重ねます。

そんな僕たちにとって今のこの状況は逆風以外の何ものでもなく、お互いに活動のあり方を考えさせられています。

オンラインでできること、できないこと

holo shirts.では、ご自宅で試着、ビデオ通話で相談をしてオーダーを受ける形『ORDER at HOME』をすぐに立ち上げました。
ありがたいことにすでに数件のお申し込みをいただいています。

holo shirts. がこれをできたのは、現在「セミオーダー」という、サイズサンプルの試着と、生地・ボタン・襟を選んでオーダーができるシンプルな形をメインに活動していたからです。
そして、このセミオーダーシャツ のデザインが、より多くの方に着こなしていただけるような「余白」と「包容力」を持った設計になっているということも大きく寄与しています(詳しくはまた)。

「見た目を楽しむ」のか「悩みを解決したい」のか

一方、delightful toolが同じようなサービスを始めたかというと、そうではありません。
正直、同じ形は難しいだろうなという、なんとなくの予想はあったのですが、寺田さんと話していく中でその理由がはっきりしてきました。

僕自身がそうだったように、靴をオーダーする時に思い描いていたのは「足に合うものが欲しい」でした。
もちろんファッションアイテムとしての要素もありますが、こと革靴になると「足が痛い」経験をしたがゆえに苦手意識を持っている方は多いと思います。

そんな「悩みの解決」がオーダーをする理由の大きな割合を占める場合、オンラインで納得のいくやりとりをするのは容易ではありません。仮に

サンプルを送る

ビデオ通話をする

試し履きをしてもらい、しばらく歩いてもらう

画面の前に戻ってきて、感覚をイメージで伝えてもらう

必要なら調整用の革を後日送って靴に入れてもらう

ビデオ通話をする

以降、繰り返し

これをしようと思うと、お客様にも寺田さんにもかなり大きな負担がかかります。
書き出しただけでもハードルが高そうです。

オーダーシャツでも、僕がフルオーダー(採寸をしっかりして、一人ひとりの型紙を作るやり方)だけやっていたとしたら、オンラインでの接客は考えなかったと思います。
それだけフルオーダーの場合、体型、機能面でのお悩み解決的な色が濃くなるケースが多いのです。

「学びのため」のオンラインコミュニケーション

僕も寺田さんも、活動の意義を見失わないように、考えて考えてお互いの(現時点)での結論を出しました。
ただ、インスタライブでの会話の中で、「試してもらう機会」「学びの場」ということにフォーカスしたオンラインのサービスは誰にでも考えられるかも?という芽が出てきました。

革靴も「どんなもんか」知りたいけど、わざわざイベントに行ったりアトリエを訪れたりはちょっと…という方には、足のサイズになるべく合ったサンプルをお送りして「履いてみてもらう」ことで、靴単体を見ていた時にはわからなかった見た目の印象や、ベースの履き心地を感じてもらえるかもしれません(今はZOZOMATみたいな便利ツールもありますし)。
「こんなシャツ/革靴もあるんだな」という引き出しが増える事は一生の財産になります。
ついでにお手入れの方法なんかをビデオ通話で聞けたらいいかも、なんて思ったりしています。

この「人と会うとこが難しい期間」がいつまで続くのか予想できないというのがとても辛いですが、使えるツールを活用して「僕たちを頼りにしてくださいね」というメッセージは発信できると思います。
実際にお会いできるようになった時、信頼してオーダーしていただけるようにする準備は、体力の続く限りコツコツ続けていかなければと改めて思いました。

シャツや革靴は、お出かけできる機会があってこそ本当に活躍します。
そんな日がまた来ることを想像しながら、僕たちは強く進みます。

オーダーという業態を選んだ時点で「無駄なものを作らない」が頭にありました。これまでもこれからも、ちゃんと袖を通して着倒してもらえるシャツ作りを続けていきたいと思います。