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オーダー専門のブランドが、予めたくさんのシャツを縫ってもらった意図と現状

結論から言うと、たくさんの在庫を抱えています。

もう、何を当たり前のことを?!って感じですよね。わかります。

結論の次は言い訳です。

この春、もっとシャツを見て、触って、試していただける場があったはずなんです。(ちなみに、以前もこの記事で触れた理由から、オンラインでの在庫販売はしていません)

4月、5月のお出かけが気持ちいい時期に予定していた受注会は全て延期・中止。
プロモーションのために作ったリーフレットも配る機会が限られました。

(かわいいでしょ…襟みたいなディテールは僕が一枚一枚折ってるんですぜ…シャツもこれも自信作。だから、試してもらえればきっと気に入ってもらえるはずという希望も抱えてます…!)

オーダーという業態と量産という仕組みの相性

オーダーというと、1着ずつ大事にゆっくり作っているイメージがあるかもしれません。間違ってはいないのですが、なんというか余裕があるわけではないです。

実際には、適正な利益を生むために一度にある程度の数は受注しないといけないし、そうなると完成まで数ヶ月お待たせすることもしばしば。

「待っていられるから大丈夫だよ!」と言ってくださるお客様も多く、今はその優しさに支えてもらっています。
でも、人によっては春にオーダーして春のうちに着たいと思う方もいて、僕自身その気持ちめちゃめちゃわかります。

そうなると、どうにかして短い時間でお届けする方法を考えなければと思っていました。

そして現段階でたどり着いたのが、外部の工場に縫製をお願いすること。

またしても普通のことをもったいぶった言い方して何?とお思いですね。
いや、本当にそうなんですけど、オーダーという業態と量産ってあまり相性がよくないんです。

生地も、仕様も、サイズも違うオーダーの数々は、まとめて作ってもらう事ができず、そもそも量産になんかならないんです。

工場は、実際にはいろんなイレギュラーも対応してくださいますが、厳密には同じ生地を使った同じ形のものを一定数縫うことです。

となると、出来上がるのは同じ形をした同じ色のシャツです。
「オーダーメイド」との矛盾はすぐお分かりだと思います。

でも、ここにいくつかの工夫をすることで「同じ形の同じ色のシャツ」「違う形のいろんな色のシャツ」になって、お客様一人ひとりの元に旅立っていくと思っています。

「無駄のない量産」とは

量産となると「作りすぎて売れ残って無駄になる」イメージをお持ちの方が少なくないと思います。
僕もその一人です。でも、その無駄をなくす量産の形を実現させたくて、オーダーメイドで一点もののシャツを作っているブランドが量産を決行しました。

これ以降は、手の内をフルオープンって感じの内容で結構長いので、シャツや服の企画に興味のある方、一緒に何か企みたい、単純にシャツの背景を知りたい!という方に読んでいただけたら嬉しいです。

ポイント① セミオーダーという仕組み

工夫したポイントはいくつかあるのですが、まずは現在、オーダーの形を「セミオーダー」という形に絞っているのが大きいです。

ユニセックスの(XS〜L)サイズを試着して、襟、生地、ボタンを選び、オプションで袖や着丈の長さを調整することができます。

パターンは、全体的にゆとりがあり「力を抜いて」着られるように設計しています。サイズ選びによっては、あえて肩を落として着たり、ジャストで着たり、応用の利く「包容力」のある形です。

この人によって様々な着こなしが可能なパターンであるという点も、量産に踏み切れた要因の一つです。

今回は半袖に絞って、各サイズ一定数を縫ってもらいました。
(そのうち数着ずつは「襟を付けずに納品」してもらい、襟のバリエーションに対応する工夫もしています)

長くなっている夏を睨んで、6月、7月くらいになっても半袖のオーダーを受けて、素早くお届けできるようにとの狙いがありました(春が吹っ飛んだので、全く計画通りにいってませんが)。

ポイント② オススメしたい大好きな生地がある

同じ生地でたくさん縫ってもらうとなると、その生地選びがとても重要になってきます。でも、ここは全く迷いませんでした。

自分でも縫って着ていて本当に気持ちよく、心からオススメできる生地があったからです。

綿麻のとても柔らかく軽い生地なのですが、春夏にはもちろん、着はじめがひんやりしないので、秋冬ニットのインナーにもバッチリ機能してくれます。

ポイント③ 製品染め

ここまで読んでも、ポイント②がどうしてそこまで大事なのかはわからないかもしれません。
でも、ここでわかっていただけると思います。

たくさん縫ってもらった「同じ形の同じ色のシャツ」を、どうやって一人ひとり違うシャツにしてお届けするのかというと、

後で染め分けるんです。「後染め」とか「製品染め」とか言います。

心からオススメできる生地は、一色だけじゃなくて何色も色違いが欲しい…!!!という個人的な欲望から思いついたのですが、やっぱり「好き」は伝わっちゃうんですよね。
結果的にたくさんの方にこの生地を気に入ってもらっています。
(将来は、お客様のお好きな色にシャツを染めるサービスとかもやってみたい…)

製造面で言うと、同じ生地をたくさん仕入れた方が生地在庫のリスクは小さいし、同じ生地をたくさん縫う方が効率がいいのは当然です。ということはお支払いする加工費も抑えられるだろうと。

それを染めてもらえば、あら不思議!いろんな色のシャツが目の前に!!

ただ、細かいところで単純にはいかない部分が出てきます。「糸」です。
現在、ほとんどの服はポリエステルかナイロンのミシン糸で縫われており、コットンやリネンなどの天然繊維とは成分が違います。

ということは、生地を染めようと思うと糸が染まらないということがおきます。
例えばこんな風に。

これはこれでカジュアルでいいのですが、今回意図しているデザインには合いません。
そこで「染まる糸」かつ縫製のしやすいものを探しました。(綿糸は縫製に高い技術を要するので、たくさん縫ってもらうことを前提に考えると選択肢から外しました。)

そこで見つけたのが「M CELL®️
コットンなどに近いセルロースを原料としたテンセル製の縫い糸です。
セルロース純度が高いからか、コットンよりも少し鮮やかに色が出ますが、しっかり生地と同じような色に一度で染まってくれます。

これは藍染めですが、しっかり染まってくれています。
この糸を見つけたことで、今回の仕組みが完成しました。

僕が考えたこの仕組みでは「製品染め」をしましたが、例えばこれが同じ形のシャツに「プリントをのせる」でも「刺繍を施す」でもいいと思います。Tシャツなんかだと当たり前にされていることですし、珍しいことではないと思います。

でも、あくまで受注生産にこだわっているホーローシャツでは、考えに考えてドキドキして決行した取り組みです。なのに販売機会が少ないまま夏が来ようとしています(2020年、もう半分終わり…?????)

シャツを試してみませんか?

出来上がった半袖シャツをいいと思ってもらえるかは、試していただかないとわかりません。(でも、多分気に入っていただけると思います)

納期を短くするために「オーダーと量産」の両立を目指して、たくさん作ってもらったはいいけど、多くの販売機会が奪われて、やっと受注会を再開しようとしています。

シャツを試しに来てくれませんか。

無理のない範囲で6月19日〜22日に都内で開催する受注会にお越しいただくでもいいです。

『ORDER at HOME』という、ご自宅で試着→ビデオ通話で相談してオーダーできるサービスを使っていただいてもいいです。

とにかく、自信作を着てみて欲しいんです。

ちゃんと管理すれば腐るものでもないし、定番として数年古びないシャツだと自負しています。来年に持ち越しても無駄にはなりません。
でも、在庫を抱えるというのは商売上も気持ちの面でも健全ではないです。

作ったものが売れていき、それを原資に次の企画に動き出せる。
ただ今を乗り切るだけでなく、将来を見据えるにはこれを続けていかなければいけません。

受注会は、感染予防策の一つとして予約制(1組1時間)でのご案内になりますが、あまりハードル高く感じずに、物件の内覧をするくらいの気持ちでご連絡いただければと思っています。

納得いかなければオーダーしない。これは当たり前のことです。
まずは試して欲しいです。

半袖のシャツであれば、最短2週間でお届けできるものもあります。夏に間に合います。状況の許す方は、ぜひご検討いただき、info@holoshirts.comまでお問い合わせください!ぜひ!(くれぐれもご無理はなさらず…!)


オーダーという業態を選んだ時点で「無駄なものを作らない」が頭にありました。これまでもこれからも、ちゃんと袖を通して着倒してもらえるシャツ作りを続けていきたいと思います。