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野球上達のために、小学生に筋力トレーニングは必要か?


子どもが筋力トレーニングをすると身長が伸びない?

こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。

今回は、子どもの筋力トレーニングについて考えてみたいと思います。

まず、筋力トレーニングの話をするためには、ここ数回にわたってお伝えしてきたことを整理しておく必要があります。
それらをまだ読んでいないという場合は、とても大切なお話をしているので、ぜひ、確認してみてください。

ここ数回にわたってお伝えしてきたことは、子どもの野球の上達には、順番があるということです。

野球初心者は、小学校の低学年が多いと思います。
ですから、技術練習を繰り返しても、なかなか上達しないというお話をしましたね。
そして、なかなか上達しない理由についても説明しました。

小学校低学年の子どもにとって、まず必要なことは「脳から筋肉に伝える指令の通り道」をつなげること。

そして、体を思い通りに動かせるように、運動能力を高めることからはじめましょうというお話をしました。
さらに、野球のスキル向上には、運動センスを高めることも必要でしたね。

運動センスとは、体を動かす時に必要になる【調整力】だと説明をしました。

素早く正確に動ける調整力、体を匠に動かす調整力、そして、体の姿勢を維持したり回復させる調整力。

それらを、敏捷性、巧緻性、平衡性というのでしたね。

さらに、運動能力と運動センスに影響を与えるのが、感覚神経と運動神経だというお話をしました。

野球初心者の小学校低学年の子どもの場合、目で見た情報を感覚神経が脳に伝えても、筋肉を動かす指令がうまくできなかったり、瞬間的に筋肉を動かす力(パワー)がありません。


ということで、今回は筋力トレーニングについて考えてみたいと思います

小学校低学年の子どもに、筋力トレーニングは必要かどうか?
あなたは、どう思いますか?

よく、子どもに筋力トレーニングをさせると、身長が伸びなくなるという話を耳にしますよね。
それは、体操選手の身長が、平均的に高くないことから、そう言われています。

しかし、それには根拠はありません

逆に、ちょうど良いトレーニングで骨に刺激を与えることで、骨も強くなり体も成長することが、近年の研究でわかってきました。

ですから私の意見は、こうなります。

これからの体の成長と、野球スキルを高めることができるトレーニングは、やりましょう
でも、成長期前後の子どもの場合、ケガのリスクが高まるトレーニングもあります。
ですから、リスクの高いトレーニングはしないようにしましょう。

そして、もうひとつ大切なポイントがあります。

それは、子どもの成長には、個人差があるということです。
つまり、個々の成長に合わせたトレーニングの設計が必要です。

しかし、今までは、それぞれの子どもの成長に合わせたトレーニングの設計、という考え方自体がありませんでした。

そこで、ホロス・ベースボールクリニックでは、コンディショニングチェックをすることで、個々の体のストレングスポイントを発見し、体の状態に合ったトレーニングを設計するサポートをしています。

それが、長期的にケガをすることなく、野球を楽しめる方法だからです。


筋肉には、強さとしなやかさが必要です

コンディショニングチェックをすることで、体全体の筋力のバランスがわかります。
そして、体全体の柔軟性もわかります。

ですから、コンディショニングチェックは、運動能力を高めるためのバロメーターになります。

運動能力の4要素にバランス能力と柔軟性、筋力が含まれていることからも、理想的に体を動かすためには、筋力の強さとしなやかさが必要なわけです。

そして、バランスを保つには、体がフラフラしない体幹力が重要な要素になります。
体幹とは、胸や背中、腰やお尻などの体の中心部分全体のことを言います。
また、体幹力は、立つ、歩く、走るといった基本的な動作を支える基盤になります。

ご存知のとおり、野球の上達にとっても、体幹力はとても大切です。

体幹力がしっかりしていると、投げる、打つ、走るといった野球の全てのプレーで安定感が高まります。
逆に考えて、体幹力が弱くてバランス能力が低い場合をイメージしてみてください。

全てのプレーが上手にできそうにないですよね。


小学生の場合、体を支える骨も筋力も強くありません

ですから、子どもの走り方を見ると、左右に体を揺らしていることが多いです。
体を揺らしながら走るということは、体を捻るようにして走っています。
すると、子どもの未発達な骨に負担がかかります。

当然、体幹力が弱いということは、ボールを投げる時、バットを振る時にも体を捻るので、骨に負担がかかります。
特に、腰へのダメージが大きくなります。

ですからトレーニングは、子ども目線で考える必要があるわけです。
そして、小学生のうちから、日頃のトレーニングには、体幹力を鍛えるメニューも加えるようにしましょう。

しかし、難しく考える必要はありません。

たとえば、縄跳びをしたり、友達と鬼ごっこをしたりすることでも、楽しみながら体幹力を鍛えることは可能です。


オススメは、アニマルトレーニングです


体幹を鍛えるトレーニングというと、あなたは何をイメージしますか?
おそらく、腹筋運動や背筋運動をイメージする人が多いと思います。

もちろん、ホロス・ベースボールクリニックでも、腹筋や背筋を鍛えるトレーニングを指導しています。
ただし、これもまた、子どもの場合は注意が必要で、間違った方法では、腰の骨に負担がかかります。

そして、野球の動きには、いわゆる腹筋運動のような動作はあまりありません。
ですから、野球でトップレベルを目指すのであれば、野球の動きが強化されるようにトレーニングを設計することも必要になります。

そこでオススメするのが【アニマルトレーニング】です。

アニマルトレーニングは、動物の特徴的な動きをマネして、体全体をトレーニングできます。

運動能力の4要素、バランス能力柔軟性筋力有酸素性能力はもちろん、運動センスの3要素、敏捷性巧緻性平衡性も合わせて鍛えることができます。
さらに、運動センスの各要素に必要となる、連結能力リズム能力変換能力反応能力定位能力識別能力といった、合計で10の能力を高めることができます。

そして、最大のポイントが、それぞれの動物の動きは、とてもシンプルでマネしやすいことです。

正直、アルマジロの動きは、覚えるのに少し時間が必要かもしれません。
でも、ホロス・ベースボールクリニックがお伝えしている18の動物の動きは、とてもシンプルです。

アニマルトレーニングについては、以前にお伝えしていますので、そちらも併せてチェックしてみてください。

そして、ホロス・ベースボールクリニックの会員サイトでも、アニマルトレーニングのレッスン動画をご用意しています。
ご興味があれば、こちらもご確認ください。


ちょっとだけ、筋肉の種類について

筋力トレーニングのお話ですから、筋肉の種類についても、少しだけお話をします。

ひとつ目は、速筋
速筋は、力を短時間だけ発揮できる筋肉で、すぐに疲れてしまう筋肉です。

二つ目が、遅筋です。
遅筋は、速く動くのは得意ではありませんが、ある程度の時間動いていても疲れにくい筋肉です。

そして、その間の働きをする中間筋という筋肉もあります。

小学生の場合、長い時間動かせる遅筋が主に育っています。
ですから、公園などで走り回っても疲れることなく、一日中遊ぶことができるのです。

以前に、有酸素性能力のお話をしましたが、覚えていますか?

ある程度、長く動かせる遅筋が使われている小学生です。
有酸素性能力を高められるのも、遅筋が関係しているとイメージできるでしょうか?

そのほか、筋力トレーニングについてお伝えしたいことは、負荷をかけ過ぎないことです。
小学生のうちは、ダンベルのような器具を使わないで、自重でできるトレーニングをするようにしてください

先ほどお伝えした、アニマルトレーニングのほか、スクワットなども効果的です。

協力:総合予防医療クリニック田園調布長田整形外科 Green Health  モデル:石井直樹

小学校低学年からの基礎づくりが大切です

すでにお伝えしたように、野球初心者のスキルアップには、運動をするための基礎体力が必要です。
基礎体力を高めるためには、運動能力の4要素を高めるトレーニングとコンディショニングが必要です。

野球初心者は、小学校低学年の子どもが多いと思います。
それは、まさにゴールデンエイジです。

ゴールデンエイジという言葉を聞いたことがあるでしょうか?

ゴールデンエイジは、9歳から11歳くらいの子どもで、この時期に楽しみながらコツコツと練習を繰り返すことで、能力を伸ばしやすいことがわかっています。

楽しみながら」というのがポイントですが、楽しみながら繰り返し 練習をすることで、脳から筋肉への指令の通り道がつながりやすくなります。

ですから、運動能力と運動センスを高めるトレーニングをしながら、スキル練習に取り組むことで、自然と野球のスキル上達に道が開けて行きます。

上達がすぐに実感できなくても、楽しみながらコツコツ前に進みましょう。


技術的な練習で注意してほしいこと

野球初心者ですから、上手になるためには、練習が必要です。

ですが、親が熱心になりすぎると、練習の時間が長くなることがあるようです。
また、大人目線になりがちで、子どもにとって負荷の高い練習になってしまうこともあります。

先ほども言いましたが、楽しみながらコツコツと上達していけるように練習をしてください。

その際に、注意したいポイントをお伝えします。

まず、重すぎるバットは振らせないでください
これは、先ほどもお話をしたとおりです。
体幹力が弱く、骨も未成熟な小学生に重いバットを振らせても、スイングスピードを高める効果は期待できません。

以前にお伝えしたように、軽めのバットでスイングの再現性を高める練習をしてほしいと思います。
そのための方法として、以前にスローモーションスイングを提案しました。

理想的なスイングを、スローモーションで行い、体の各部の細かな動きを覚える練習方法です。
その際、スイングを各フェーズに区切って、動きを脳にインプットしましょう。

そして、野球の基本といえばキャッチボールです。
キャッチボールについても、初心者には注意点があります。

これも、体幹力に関係してきますが、体幹力が少ない小学生の場合、反動を使う投げ方になってしまいます。

反動を使うということは、体がブレるので、投げるたびにフォームが違ってきます。
フォームが違うということは、リリースポイントがバラバラになってしまいます。

ですから、コントロールが定まりません。

それを繰り返していても、理想的なフォームを脳がインプットできませんから、間違った司令の通り道になってしまいます。

つまり、悪いクセがついてしまいます。

そして、反動を使う投げ方は、体が早く開きやすくなります。
体が早く開く動作は、肩やヒジに無理な牽引力がかかってしまうため、ケガのリスクも高まります。

ですから、野球初心者が理想的なフォームでキャッチボールするには、「反動を使わなくていい距離」で行うことが重要なポイントになります。

野球初心者に限らず、小学生の場合は、速いボールを投げることも、遠くまで投げられることも気にする必要はありません。
ケガのリスクが少ない理想的なフォームで、コントロールよく投げられるようになりましょう。

そのためには、反動を使わなくていい短い距離でキャッチボールをすることをおすすめします。
体の成長にしたがって、強く投げる力もつきます。
ですから、トレーニングを続けていけば、いずれ速いボールをコントロールよく投げられるようになります。

楽しみながら、コツコツ頑張りましょう。


いかがでしたか?

今回は、運動能力と運動センスを高めるためには、適切な筋力トレーニングをしましょうというお話でした。
そのオススメは、アニマルトレーニングやスクワットなどの自重でできるトレーニングです。

そして、将来的なケガのリスクを軽減するために、負荷の高いトレーニングをしないこと、重すぎるバットを振らせないこと、反動をつけずに投げられる距離でキャッチボールをすることをお伝えしました。

今回は以上です。

次回もまた、あなたのお子様の野球の上達を、効率的にできるアイデアをお伝えできればと思います。

それでは、またお会いしましょう。


【石橋秀幸プロフィール】

広島県出身 日本体育大学卒。
慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科スポーツマネジメント専修卒。 1987年から2002年まで15年間、広島東洋カープの一軍トレーニングコーチ。
1997年ボストンレッドソックスへコーチ留学。

現在は、神奈川大学人間科学部非常勤講師、慶應義塾大学スポーツ医学研究センター研究員。
また、2022年11月からホロス・ベースボールクリニック代表として、球児の成長のサポート事業をスタート。
これまでも、プライベートコーチとして、小学生から大人まで、アスリートはもちろん、プロの演奏家へもトレーニングとコンディショニング指導を行う。
著書多数。

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