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では、どうすれば初心者の野球スキルは上達するのか?
じつは、【指令の通り道】以外にも必要なことがあります
こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。
前回は、運動神経についてお話をしました。
運動神経は、良い悪いで判断するのではなく、神経の通り道ができているか、できていないかという見方をしましょうとお伝えしました。
そして、神経の通り道をつくるには、繰り返しのトレーニングが必要です。
しかし、トレーニングを大人目線で考えてしまうと、成長期前の子どもにとっては、負荷が高すぎるケースがあります。
負荷が高すぎると、成長痛やスポーツ障害につながりますし、きつい練習に、お子様の気持ちが負けてしまうことがあるかも知れません。
ですから、お子様の体のコンディションを見極めてトレーニングをしてほしいと思います。
今回は、お子様の野球スキルが、なかなか上達しないと感じているとしたら、何か効果的な方法があるのかどうか、その点を考えてみたいと思います。
感覚神経をご存知ですか?
では、野球のバッティングを例に考えてみます。
バッターは、投手のモーションを見ながら始動します。
そして、リリースの瞬間を見て、瞬時にバットを振るタイミングを判断します。
これは【感覚神経】が、目で見た情報を脳に向けて伝達しているのです。
投手からリリースされた瞬間から、バットを振るか振らないかを判断する反応スピードの平均は、0.18から0.2秒だと言われています。
その後、運動神経が筋肉を動かすように指令を出すことになります。
感覚神経とは、人の体が外部の刺激を感じ取るための、特別な通信システムといった感じでしょうか。
たとえば、手が熱い物に触れた時、感覚神経はその熱さを感じて、速やかにその情報を脳に送ります。
脳はその情報を受け取って、「あっ、熱い!」と理解して、火傷をする前に手を引っ込めることができるわけです。
感覚神経は、目、耳、鼻、舌、肌からの情報を脳に送ります。
いわゆる五感ですが、野球の場合は、特に視覚、聴覚、触覚は重要ですね。
仮に、成長期前の小学生とプロ野球選手で、感覚神経の伝達スピードに違いが少ないとします。
その場合、成長期前の子どもでも、プロ野球選手のように一瞬で反応して打てることになります。
しかし、現実問題として、プロ野球選手のように十分に手元まで引きつけて、バットを振れる小学生は少ないはずです。
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その違いは、やはり運動神経と、そのほかの要因によるわけです
バッターは、投手がリリースしたボールを視覚でとらえて、それを感覚神経が脳に伝達します。
そして、受け取った情報をもとに、脳が運動神経を経由して筋肉に「動け」と指令を出すことでスイングができます。
脳からの指令の伝達は、「シナプス」という、特別な糸のようなものを通して伝わっていきます。
そして、シナプスはいくつも連なることで情報を伝達します。
そのシナプスを連ねることが、指令の通り道をつくることになります。
そのためには、すでに何度もお話をしているように、繰り返しのトレーニングが必要です。
そして、シナプスにも伝達スピードがあります。
つまり、脳からの指令に、どれだけ早く筋肉を始動させることができるかということが、もうひとつのポイントになります。
投球されたボールが、ホームベースに到達するまでの時間は、少年野球の場合、だいたい0.5秒ほどです。
先ほど、感覚神経の反応時間が0.2秒ほどだと言いました。
そうすると、バットを振るか振らないかを判断する時点で、すでにボールは、リリースポイントからバッターまで、半分ほどの距離を移動しています。
そして、残りの0.3秒以内にインパクトポイントまでバットを振る必要があるわけです。
しかし、小学校低学年の子どもでは、そのような瞬発的な筋力が未発達です。
ですから、小学校低学年の野球初心者の場合は
脳からの指令の通り道がうまくつながっていないこと
そして、瞬発的な筋力が未発達
という二つの理由から、ボールを迎えに行くバッティングになってしまうんです。
こういった反応能力は、守備でも同じことが言えますね。
打球のバウンドを、目で見て反応したとしても、捕球しやすいバウンドがどこなのかを判断できるまでには、繰り返しの練習が必要です。
そして、捕球しやすい場所まで、素早く移動する筋力も発達させる必要があります。
間違いないことは、目で見た情報は、脳に伝わっているのです。
けれど、小学校低学年の野球初心者は、その情報を上手に利用できる指令の通り道ができていません。
そして、素早い瞬発的な筋力も未発達ですから、野球スキルの上達には時間が必要です。
ですから、このような考え方もあると思います
おそらく、スイングスピードの遅い我が子を見ると、「スイングスピードを高めるために重いバットを振らせよう」と考えるお父さんが多いと思います。
しかし、私たちホロス・ベースボールクリニックでは、それはおすすめしていません。
それには、いくつかの理由があります。
まず、小学校低学年の子どもの場合、まだ瞬発的な筋力の「速筋」が発達する時期ではありません。
そして、重いバットは、子どもの体に大きな負荷を与えますから、たくさん振りすぎると、未発達の骨へ悪影響を与える可能性があります。
バットのヘッドが、極端に下がってしまうような重いバットは、振らせないでほしいと思います。
もちろん、強くスイングできるようになるのは大前提です。
でも、現状で筋力がないとすると、スイングの始動で反動を大きく使ってしまうでしょう。
そうすると、体幹力も弱い子どもですから、体が突っ込んだスイングにもなるでしょう。
そして、反動を大きく使うと頭がブレます。
頭がブレるということは、視線もブレることになります。
それでは正確にボールを見ることができません。
もちろん、スイングの軌道も定まりませんから、そのような素振りを繰り返しても効果は上がりません。
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だからスローモーションで10回スイングする
お子様が、理想的なスイングを身につけるために、スローモーションでスイングをさせてみてください。
構えたら、軸足に体重を乗せ、スローモーションで踏み込み足を地面につきます。
そこからのスイングも、全てスローモーションで行い、フィニッシュの形をつくります。
その時のコツは、スイングのフェーズを細切れに分けてみることです。
そして、構えからフィニッシュまで、スローモーションでスイングしたら、逆再生のように、フィニッシュの位置から構えまで、スローモーションで戻ります。
これを繰り返すことで、スイングの形を脳にインプットして、筋肉に指令を出す通り道をつくることが可能になります。
次のような方法で行ってみてください
「とても軽い」と思うバットで、スローモーションスイングを10回行う。
「普段使っているバット」でスローモーションスイングを10回行う。
「普段使っているバット」で普通にスイングを10回行う。
「少し軽いバット」で普通にスイングを10回行う。
まずは、お子様が「とても軽い」と感じるバットで行ってください。
たとえば、プラスチックのバットでも大丈夫です。
そして、普段使っているバットで同じことをしてみましょう。
普段使っているバットが、少し重く感じるようなら、少し軽めのバットを用意してあげてください。
たとえば、短いノックバットは振り抜きやすいのでおすすめです。
とても軽いと感じるバットと、スイングの形が同じかどうか、意識しながら行いましょう。
そして、普段使っているバットで普通に振ってみます。
もちろん、スローモーションのスイングの感覚を意識しながら行います。
最後は、少し軽いバットで普通にスイングをしてみましょう。
軽いバットを振る効果は、スイングのキレを感覚的に覚えられることです。
できれば、それぞれのスイングの映像を撮って、比較できるといいですね。
スイングをするときに、大切なポイントがあります
スイングをするときは、マウンドにいるピッチャーを視覚化するように、お子様に伝えてください。
バッティングは、ピッチャーのモーションに合わせて始動し、リリースポイントをしっかり見て、ボールの軌道を見極めることで確率が上がります。
ですから、素振りの時も常にピッチャーを視覚化して行うようにしましょう。
そして、ティースタンドがあるようでしたら、ティースタンドに乗せたボールをスローモーションの形を意識して打ってみます。
最初は、少し大きいおもちゃのゴムボールを打つというのも良いアイデアだと思います。
実際にボールを打つ時は、全ての動きを同時に意識することが難しいと思います。
ですので、今回は左手の動き、次は右手の動き、そして、軸足や踏み込み足の動き方など、一球ごとに意識を変えてみるといいでしょう。
このようにして、動作のひとつごとに意識を集中することで、運動神経の通り道がつくられていきます。
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野球教室もいいとは思いますが・・・
お子様の野球スキルを高めたいと思い、野球教室を探している人もいると思います。
でも、当たり前ですが、スクールの見極めが必要だと思います。
肝心なことは、再現性です。
そのスクールで、どんなことを学べるのか?
その理論を、お子様が再現できるのか?
そこは、通ってみないとわからないところかも知れませんが、あらかじめ調べておいたほうがいいでしょう。
スクールの指導者は、自分の経験をもとに野球スキルの指導をしていると思います。
たとえば、「極端なアッパースイングがベストなスイング」だと考えている指導者のスクールに入ったとします。
しかし、小学校低学年の子どもでは、それを再現するだけの筋力はないでしょう。
そして、その子の体の使い方を見極めて、適切な体の使い方を指導できる力量があるスクールなのか?
さらに言えば、適切な体の使い方ができるような指導を、エビデンスに基づいて行っているのか?
「インパクトを強く」とか「母指球を使って強く振れ」と言葉でいうのは簡単です。
でも、それができないのが、小学校低学年の子どもです。
ですから、エビデンスに基づいて、子どもが理解できるように指導できるかどうか?
そこが重要だと思いますが、あなたはどう思いますか?
そして、経験値だけでなく、医学的、科学的なエビデンスに基づいた指導を受けられるとしたら、野球初心者の可能性が広がると思いませんか?
いかがでしょうか?
今回は、野球初心者の小学校低学年の子どもが、どのような方法なら効率的に上達できるのかについて考えてみました。
スローモーションでバットスイングをしたり、シャドーピッチングをするのは、プロ野球選手も行っている方法です。
ぜひ、お試しください。
今回は以上です。
次回もまた、あなたのお子様の野球の上達を、効率的にできるアイデアをお伝えできればと思います。
それでは、またお会いしましょう。
【石橋秀幸プロフィール】
広島県出身 日本体育大学卒。
慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科スポーツマネジメント専修卒。 1987年から2002年まで15年間、広島東洋カープの一軍トレーニングコーチ。
1997年ボストンレッドソックスへコーチ留学。
現在は、神奈川大学人間科学部非常勤講師、慶應義塾大学スポーツ医学研究センター研究員。
また、2022年11月からホロス・ベースボールクリニック代表として、球児の成長のサポート事業をスタート。
これまでも、プライベートコーチとして、小学生から大人まで、アスリートはもちろん、プロの演奏家へもトレーニングとコンディショニング指導を行う。
著書多数。
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