移住にまつわる「仕事どうするか問題」。自分のケースを振り返ってみる
私は5か月前、東京から広島に引っ越したばかりの移住者です。移住を機に完全フリーランスでライターの仕事をしています。
東京ではずっと会社員でした。ボーナスと社会保険と福利厚生が何よりすばらしいと考えるサラリーマン至上主義者で独立志向なんてまったく無く、このままずっと組織に属していくんだろうな〜と思っていたのに、です。笑
移住したいと思ったときに何より不安だったのは仕事のことでした。
見知らぬ土地でちゃんと生活が営めるのか。すぐに引き返したくなったらどうするのか。最近はテレワークが随分進んでいるからそういう企業の人は移住も楽勝なのかもしれないけれど、そうじゃない人にとって「仕事どうするか問題」は移住あるあるの悩みなんじゃないかな。
でも。
今振り返ってみると、移住前はその地域のことが見えなさすぎて必要以上に不安を感じていたなぁと思います。
今回は、ずっと会社員だったのに移住を機にフリーランスになった経緯などもふまえて私のケースを振り返ってみようと思います。
―――――回想はじめ―――――
会社員のかたわら副業でライターを始めたのは2020年のこと。
まだ東京にいたときで、「いつか東京以外の場所で暮らしてみたいね〜老後かね〜」なんて夫婦間でのんきに話していた。
ライターを選んだのは編集の仕事をしていてライターさんと関わることが多かったから。編集者が執筆しないといけない記事や大幅にリライトが必要な記事なんかもあったから「自分でもっと書けるようになりたい」「ライター側の景色が見たい」と思って始めてみた。
副業を始めたのは「ひとつの企業に依存しているのが怖くなった」という理由もある。そのとき在籍していた会社は、ふっと吹けばなくなってしまいそうくらい小さくて、コロナのこともあって将来不安は大きくなっていた。周りでは友人が派遣切りに遭い、妹や夫は特別手当やボーナスがカットされていった。
企業は複数の取引先をもつし成長とともにさまざまな事業を展開する。もちろん収入源の確保や事業拡大、ステークホルダー増のためではあるけれど、リスクヘッジの意味合いも大きい。ひと所からの収入が途絶えたときに立ち行かなくなってしまうような不安定な状況を変えたくて、私は副業を始めることにした。
――――――――――
会社員をしながら始めたライター業。最初はクラウドソーシングサービスを使ってちまちまと受注した。
作業時間は主に土日+平日は出勤前、昼休み、退勤後など。平日デイタイムは本業があるから作業はできなかったものの、クライアントからの連絡にすぐに対応できるようAppleWatchを購入。これは副業収入が目標額を越えた月の、自分へのご褒美でもあった。
ライターの仕事ではいろんな案件に携われて楽しかったし、自由な時間をマネタイズできることに喜びを感じて没頭した。このメディアに関わりたいと手をあげたり、やりたいことがわかりやすく仕事にできるのが楽しくて。そのうち「もっと副業の時間がほしい……」と思うようにもなっていった。
このときの副業収入は月に6〜8万円ほど。これ、本業にしたらなんとか生きていけるのでは???なんて思い始めてしまったのもこの頃だったかもしれない。会社員やっている時間を最大限使えば、ライターの時間は4倍にも5倍にも増やせるじゃん!って。
(フリーになった後に知る。そんな単純なことではなかったと……苦笑)
――――――――――
尾道に移住することを決めて、会社員をやるかフリーランスとして独立してみるか迷った。そのときはまだ「企業に属していないと不安だ!」という思いが強かったからいちおう転職活動もした。
でも、転職活動をしていたときはまだちゃんと家が決まっておらずもちろん引っ越し日も未定だったので、企業からしたら「なんか移住しようとしているけれど本当に移住してくるのか不明な人」に映ったと思う……。
2020年11月、ネットで見つけた2社に応募。土地鑑がないから企業選びも一苦労。どちらの企業もZoom面接で対応してもらえたものの、副業してもいいかと尋ねると渋い顔。結果、1社は「急募なので移住時期が未定だとちょっと」とご縁につながらず、もう1社は訳あってこちらから辞退した。
遠距離での転職活動は、気軽に面接に行けないし土地鑑がないし家も決まっていないから家〜会社間のアクセスもよくわからないしで結構大変だった。
引っ越し前に転職活動してみた結果、
とりあえずフリーランスでやってみよう。足場を固めて、地域に慣れて、仕事探しはそれからでも遅くない。
私はそういうふうに切り替えることにして、東京を離れた。
―――――回想おわり―――――
・
・
・
2021年2月に移住してきて5か月経った今。
現在も私はフリーランスで働いていて、幸い会社員時代の基本給かそれ以上程度は稼げるようになりました。プラスアルファがほしい月はどしどし請け負い、余裕がほしい月は受注量を調整して自分の時間を作っています。
基本的には家で仕事するスタイルだけど、コワーキングスペースやカフェで仕事する日もあります。たまに取材があるし、Zoomを使ったMTGや取材もたびたび。フリーランス生活は毎日意外と楽しいです。
とはいえ、ずっとフリーランスでいようと思っているわけではありません。
やりたいことができたらそちらにシフトしたいし、会社員になることだって視野に入れています。より地域とつながるためにライターをやりながら週に数回アルバイトするのもいいな〜なんて思ったりも。
どうであれ、移住して生活を変えたことで生き方の選択肢がぐっと広がったと思っています。自由度が格段に上がったというか。それは別に東京が悪いとか広島が良いというような問題ではなく、私の場合は環境を変えたことが大きかったのかもしれません。
移住して地域のことを少しずつ知ったことで、
「こんなこともできるかも」
「あんなこともしてみたいかも」
って、どんどん世界が広がったのは収穫でした。
やっぱり移住先での生活に不安がいっぱいなのは当たり前だと思います。
でも、移住してコミュニティに入ったり知り合いが増えてくることで初めて見えてくる景色があることをお伝えしたいです。地方では特にネットに載っている情報だけが全てではなく、もしかしたら人づてに仕事の情報を得られることもあるかもしれない。つまり、もし移住に不安を感じて足踏みをしているならそれは地域のことが見えないことが問題なのかもしれない。
仕事に関してはなかなか難しい問題なので断言はできませんが、「移住したい、でも仕事どうしよう」と思っている人は短期間でもいいので一度その地域での暮らしを体験してみるといいかもしれません。それも難しければ、好きなお店をひとつ作って通うだけでもいい。
私がそうだったように、知ることで拓ける世界もあるかもです。
一緒に飲みましょう。