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中四国のウェブ解析士に、Withコロナの中小企業の状況を聞いてみました

高知を中心に活動しているネクストメディアの坂上です。
今回は、僕も保有している資格であり、最近はコミュニティ活動が活発化しているウェブ解析士のことについて書きたいと思います。

(イベント直後に勢いで書いたので、分かりづらい箇所があればごめんなさい)

2021/5/29 にウェブ解析士のフォローアップテスト対策講座が開催されました。この講座は、ウェブ解析士の資格者が資格維持のために最新情報をキャッチアップする場です。

今回は、中四国支部のオリジナル企画として、「withコロナ、地方のウェブ解析の現場から」をテーマに、パネルディスカッションイベントも同時開催されました。

ありがたいことに、モデレータ役を承ったので、皆さんと話した内容を備忘も兼ねて note に残しておきたいと思います。

テーマ 1:中四国の With コロナを捉える

今回、お話を伺った中四国のウェブ解析士 3 名。

・株式会社オリーズデザインの岡崎理枝子さん(ウェブ解析士マスター / 岡山)
・株式会社エス・ピー・エスの細谷さゆりさん(上級ウェブ解析士 / 香川)
・株式会社テリムクリ / AOGIRI.net の山田恵理子さん(ウェブ解析士マスター / 香川)

改めて、中四国のウェブ解析士って女性が活躍している印象だなと。
感性とロジックの両方が必要なデジタルマーケティングには、もしかしたら女性が向いているのかも…。(男性も頑張ろう)

最初のテーマは「各地域のコロナの影響」について、生活者として、事業者支援の立場として、それぞれ伺ってみました。

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中四国のコロナ感 / 影響を受けた飲食・宿泊、冠婚葬祭

商工会議所や中小企業基盤整備機構で、中小企業経営者さんへのアドバイスを行っている岡崎さんは、大きく変わったのは「出張がなくなったこと」。県外出張だけでなく、岡山市内への訪問もオンラインミーティングが推奨されるようになったそうです。また生活スタイルとしては、夜、飲食店に行く機会が明らかに減り、特に箱が大きい飲食店さんが影響を受けていると伺いました。

東京と香川の 2 拠点でサービスを提供している細谷さんは、東京では明らかにオンライン化が進み、またインターネット広告事業は売上にマイナスの影響があったとのこと。逆に香川では、東京と比較すると「打ち合わせに来てください」とリアルな対面での打ち合わせに価値を感じる経営者の方が多いとのこと。

ウェブ制作会社の社員とフリーランスを掛け持つ山田さんは、もともとリモートワーク中心の会社であるため、ワークスタイルは大きく変わらないものの、岡崎さん同様、対面での打ち合わせが大きく減ったと教えてくれました。

また最近ご結婚された山田さんは、2 年前に結婚式を予定していたものの、状況を鑑みて延期を選択
いっぽうで新型コロナウイルスが "得体の知れないもの" と認識されていた時期と比較すると、周囲のカップルも 1 年程度は延期をして様子を見るものの、規模を縮小したりごく近い家族のみで式を挙げるなど、状況が少し変わってきていると伺いました。

高知県でも、飲食・宿泊・観光などの業種でマイナスの影響がありました。
ただ、飲食店では業態によって、影響度合いは大きく異なる印象を持っています。

✓ 昼営業の売上比率が高く、夜もアルコール飲料の売上に依存していないカフェ業態やファミリーレストラン系は影響が低い
✓ 家庭料理など、お客様が外食→内食に切り替えることができてしまうフードは、スーパーのお惣菜とバッティングし減少
✓ 寿司や多国籍料理など、家庭での再現性の低いフードを提供している業態は影響が低い

自分の行動を振り返っても、自宅でつくれない料理を提供するお店には、状況を見ながら行こうとするけど、そうでないものは自粛の選択をしていると感じます。

といった印象を持っています。

テーマ2: ウェブ解析士の支援事例 / コロナに負けずに対策を打てる企業の特徴

2 つ目のテーマは、中四国の中小企業の現状と課題に、ウェブ解析士はどう向き合っているのか?を伺ってみました。

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コロナ状況下で、補助金などを活用して EC サイト制作や、直販に乗り出す企業さんも多い印象ですが、上手に活用できるかどうかは、コロナに関わらず、日頃から中長期的な視点で事業構想を考えていたり、経営層と現場の連携やコミュニケーションがしっかりとできているかどうか、が大事なポイントだと思いました。

岡崎さんからは、IT 補助金などを活用したテレワークやデジタル化の支援が増えたことにより、IT ベンダーさんはコロナ下で売上が伸びている会社も多いとのこと。

また山田さんからは、EC サイトのカートシステムの載せ替えを含むリニューアルを以前から検討していた企業が、活用できる補助金が出てきたタイミングでリニューアルを実施したと教えてもらいました。

僕の周りでも、いきなりゼロから EC サイトを始めるのではなく、以前から構想を練っていたり、準備ができていた会社は、スピーディに行動が起こせている印象があります。

細谷さんからは、アパレルメーカーから刺繍を請け負っている企業さんが、刺繍や服飾裁縫などの技術を生かして、マスク製造を行い、BtoB の下請け業からマスクの製造直販をスピーディに実行することで、業績の V 字回復を実現した事例を伺いました。

日頃から、経営者の方と社員さんのコミュニケーションが良好で、ピンチの際にも一丸となって取り組めたことが勝因ではないかとの話に、みんなで頷きました。

細谷さんの話を受けて、岡崎さんからも、デニム生地の下請け業をしていた岡山のデニムメーカーさんが、デニムのマスクを作って BtoC の販売事業をスピーディに展開した事例があると伺いました。

BtoB の下請け業をしていた企業がいきなり、一般生活者向けの EC サイトを立ち上げても、顧客に認知されないのが普通です。
しかし、このデニムメーカーさんは、展示会だけでなく百貨店へのポップアップストア出店などで、ファンとなってくれたユーザーの顧客名簿を持っており、ファンへアプローチすることで売上を作ることができたそうです。

Withコロナでも、Afterコロナでも、目の前の事業やマーケットニーズに真摯に向き合って、体質や体制をしっかりと作っている会社が生き残る
そんなことを改めて思いました。

デジタルマーケティングの知識や、ITツール活用について、経営陣が必要性を感じておらず、情報を持っておらず、実行する体制が社内にない場合は、危機下で「機会」があっても掴めない。

ウェブ解析士に限らず、企業支援をする立場にある僕たちのような職能には、目の前の売上だけでなく、中長期的な展望を共に描き、必要なものは何かをクライアントと常日頃からディスカッションできている必要があるのではないでしょうか。

テーマ 3: 地方の中小企業を支援するウェブ解析士に何ができるか

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コロナ禍で、東京をはじめ都市圏の企業のリモートワークが進み、営業方法も Web サイトのフォームやメールを通じたオンラインの手法の割合が増加しています。

地方の中小企業であっても、ほぼ毎日のように大量の営業メールが送りつけられ、「迷惑」と感じる面もあるのですが、「送られてくる営業メールの内容が、自分が求めている情報が入っていたり、如何にオンラインで興味を持ってもらうかの工夫がされていて参考になる」と細谷さん。

各社が試行錯誤しながら、オンラインを通じた営業方法を確立しようと努力している状況から、自分たちも学べることが多いように感じます。

いっぽうで、営業メールからの積極的なセールスによって、「どれが良いのかわからない」「よく分からないが必要と言われて導入してしまった」といった話も残念ながら聞く機会があります。

デジタルマーケティングの手法や IT ツールに明るくない会社が、ウェブ解析士の力を借りて導入の判断を適切に行うためには、ウェブ解析士がクライアント企業の経営者さんに信頼されている必要があります。

特に意識して、こちらから提案はしていなけれど、相談してくださる」という岡崎さん。ある意味、この状態が理想的だなと思いました。

「営業をかけるわけではないけれども、定期的に接点をもつ努力をしている」という山田さんは、「Web制作会社なので、ホームページを作りたいという問い合わせが来ることがほとんど。でも、実際はホームページ(デザインやシステムの改善)ではなく、集客やコンセプトに課題があるケースも多い」と話してくれました。

実は、イベントの前に運営メンバーやパネラーの皆さんとディスカッションの内容を検討する中で、「DX」や「SDGs」などの流行のキーワードに踊らされるのではなく、本気で事業と向き合った結果として、「DX」や「SDGs」に至るのが本質。という話が出てきました。

キーワードを知って学ぶことも必要ですが、前提として事業に向き合うこと、顧客と対話すること、社会と顧客に価値を提供することに真正面から取り組むことの重要性を改めて感じた 1 年間じゃなかったかと思いました。

僕自身も、自分や自社を「Web制作者」とラベルを貼ることに違和感を感じる部分もあるのですが、まだ「Web制作」を名乗る機会は多いです。

山田さんが話されたように「入口 / きっかけ」が「今見えている気になっている課題」であってもいいけれど、本当に必要なのは何なのか?表層の課題ではない、メタ認知できていないニーズや機会を一緒に発見する。それができるウェブ解析士にならなくてはいけないし、それができる人が増えると地方の元気につながる気がします。

さいごに: 「伴走支援」を模索中のウェブ解析士 - 結局最後は、自社で会得する必要がある 

最近では、ウェブ解析やデジタル活用の文脈ではなく、「事業承継」に伴う「事業の見直し」をきっかけとして、SNS などの活用支援を行うことが増えていると岡崎さん。

SNS は便利ですが、大手企業のように部門の SNS運営 を大公開者に丸投げ、とはならないのが地方中小企業。

「結局は、社内でツールの使い方や効果的な運用方法を会得してもらう必要がある」

"伴走支援" というキーワードを使って、話されていた岡崎さんの言葉が印象的でした。

きちんと業務として運用ができる専任の Web 担当者さんがいるとうまくいくことが多いが、SNSの活用を始め、"体制づくり" の支援については、試行錯誤中」と山田さん、細谷さんからも同様の声があがり、僕も現在取り組んでいるテーマでもあったので、また現場でトライ&エラーをしながら、考えを深めて皆さんとディスカッションしたいなと思いました。

4 月から本格スタートしたWeb支援会社のネクストメディアでも、Web制作やWebマーケティングなどの制作や運用を、如何にクライアント企業の組織内に体制と仕組みとして実装できるようにするか?に挑戦をしていて、そのためには支援スタイルを固定化せずに【代行】⇔【並走】⇔【助言】をフレキシブルに行き来するサービス提供が必要だと考えています。

改めて、解析士の皆さんだけでなく、同じような課題を感じていたり挑戦をしている方と意見交換する場が持てたらと思います。

パネラーの岡崎さん、細谷さん、山田さん。第二部を担当してくださっただけでなく、パネルディスカッションにも協力いただいた桃谷さん、松岡さん。企画から当日の運営まで中心になって組み上げてくださった大久保真希さん、そしてそして、ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました!

中四国は、事情や状況が似ている点も多く、非常に互いに参考になる事例が多いように思います。これからも、オンライン / オフライン問わず、交流しながら、その地域地域で元気な企業が増えるといいなと思いました。

ありがとうございました!



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