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ベビースライムはボディーガード|創世の竪琴・その25
「チュララ!」
しばらく姿を現さなかったララが渚の肩の袋から飛び出た。
その叫び方で、一行は何か危険が迫ってきていることを察した。
『グルルルル・・・・ガオーッ!』
茂みの中から狼の集団が襲ってきた。
「まかせろっ!」
言うが早いかギームは大剣を抜くと狼の集団に向かっていく。
「ウイナーゼとの盟約に基づき、我、全てを切り裂かん・・・『緑龍裂風!』」
イルの手から放たれた透明な緑の球は龍の形の烈風となり、ギームを避け、狼に向かっていく。
『ギャン、ギャワン、キュン・・・』
「女神ディーゼの名のもと、我は願う、出でよ、ムーンソード!」
渚は三日月を思わせる細く婉曲した銀の長剣ムーンソードで2人の攻撃を避け、襲いかかってくる狼を倒していく。
狼は、ムーンソードの刃に触るか触らないかの瞬時で、倒れていく。
「はあ、はあ、はあ・・・」
数分後、周囲は何十匹という狼の死骸で埋まっていた。
「よく頑張ったな、渚。」
「イル・・・・もう手がくたくた・・。」
「ムーンソードか・・・・なるほど。」
ギームも渚に感心したようだ。
「俺もそれでたたっきられないように気をつけるとするよ。」
「そうよ、そうした方がいいわよ、ギーム。」
「チュチュラ!」
「ははははっ、ララがその通りだって言ってる。」
「あっはっはっはっはっ!」
なんとか吊り橋での件も水に流され、一行は少し場所を移ると野営することにした。
夜、黒の森を歩くのは、危険極まりないからだ。
『リーンリーン、リロリロリン・・』
焚き火を囲み3人は食事をしながら話をしていた。
黒の森やこの辺りの国のこと、神殿での戦いのこと、などを。
「きれいな虫の声ね。こうしてると魔導士が悪事を企んでるなんて事信じられないわね。」
「そうだな。けど、事実、そうなんだ。」
「ええ、そうね、イル。」
「そろそろ寝たらどうだ、渚ちゃん。明日はまた夜明けと共に森の奥へ進むんだからな。」
「え・・・ええ。」
「俺たちが交代で見張ってるから大丈夫だって。なっ、イル。」
「ああ、渚はさっきので疲れているだろう。
明日も何があるか分からないからな。
よく寝ておいた方がいいぞ。」
イルがそう言ってもなかなか寝ようとしない渚にギームが言った。
「あっ、俺が襲うとでも思ってるんじゃ・・・・?」
渚はぎくっとした。
「そ・・・そんな事・・・・」
「思ってないってか?」
少し意地悪そうな目をして言うギームに渚は何も言えなかった。
「・・・・・・・・。」
「思ってるんだな。」
「当たり前だろ?ついさっきの事なんだからな。
大丈夫だって、俺がいるから。」
イルが一人納得したような顔で渚を見る。
「それも・・・心配だぜ。」
ギームがぼそっと言う。
「ギーム・・・お前なあ!」
渚の方を向いていたイルが立ち上がりギームを睨む。
「チュラ、チュララ!」
とその時、ララが渚の手の上に躍り出た。
「そうだったわね、ララが守ってくれるのよね。」
「チュララ!」
「よろしくね、ララ。
じゃ、お休みなさい、イル、ギーム。」
「あ、ああ、お休み・・・・。」
小さなスライムのララにしてやられて面白くないイルとギームは、むすっとしてお互い目を背けた。
渚は毛布に体をくるむと横になったが、火の燃え盛る音や虫の音、これからのことなどが頭から離れず、なかなか寝つけれなかった。
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