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着地型観光におけるシーンの演出

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 上の写真は、筆者が研究対象とした北海道のとある町のレビューを書いた際にお借りしたホテルや観光協会のホームページ掲載されている画像である。画像は左から活ホタテ、活ホッキ、鮭の飯寿司、サケとコマイのルイベで、どの写真も美味しそうな画像である。しかし、この画像だけでは「美味しそう」、「食べたい」という感想が先行し、感動が最小限に留まるとともにその土地を訪れるという旅行意欲に反映される可能性は薄い。
 ここで有効な手段は、シーンの演出だ。素材の良さは、誰もが知るところで現状でも十分にアピールできている。では、その美味しい食材を「いつ(When)、どこで(Where)、だれが(Who)、なにを(What)、なぜ(Why)、どのように(How)」という6つの要素を効果的に演出した「シーン」を画像・映像にして訴求することが重要である。また、観光施設を紹介する場合も施設の外観を乗せるのではなく内部や設備の「利用シーン」を中心として紹介することで効果が高まる。

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■観光プロモーションの5W1H手法
「いつ(When)」= シーズナリティ・それぞれの旬・季節感
「どこで(Where)」= 提供している施設(食堂・居酒屋・ホテル・レストランなど)
「だれが(Who)」= 観光客や料理人・店の人
「なにを(What)」= 観光素材や食材、稀少価値の高い海産物など
「なぜ(Why)」= 食材の優位性・独自性・希少性の理由、歴史
「どのように(How)」= 調理方法や行動シーン

 この観光プロモーションの5W1H手法をもとに、地域観光資源となりうる地場産品をアピールする場合、旬の海産物を調理する店主がいて、料理をつまむ箸が付けられ、けむりや湯気が映り、そこにはお酒がそえられ、風景として居酒屋や炉端の店内が映り、まな板や炭火、そして笑顔のお客さんが映り込む。こうした臨場感が現実感を掻き立て、その人に会いたい。そこで味わいたいという欲求を満たすために人は旅に出る。これが「観光」で言うところの「光」の演出である。地域にある飲食店・施設や風景・道などの生活空間に地域観光資源があることに気付くこと、飲食店・商店・宿泊施設の店主や従業員・地域住民を主役とする「ヒューマンツーリズム」を含めることと、地域の郷土料理をわかりやすく美味しく打ち出すことが重要である。
 観光というのは、光を観ることなのである。

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 北海道の料理は鮮度が高く、良くも悪くも素材の良さに頼る傾向が強いが、地域における調理技術の習得などで、写真を見るだけでヨダレが出るようなメニューの開発、それを食べられる飲食店や宿泊施設を作り上げていくことも重要である。そして、それらのホテルや飲食店での情報(シーン)を効果的に提供することでユーザーニーズが高まる。
 地域に愛されるソウルフードは何か、以前食べられていたが店舗の閉鎖などで風化してしまった名物料理はないか検証し、観光資源化を検討する必要がある。

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 例えば、ルイベ は地元で食されているアイヌ文化の流れをくむ料理であるが、歴史的背景や保存技術やその効果などを知ると、もっと面白い。北海道東部の漁港で冬場に水揚げされる「コマイ(氷下魚)」という魚があるが、その呼び名は、小さければ「ごたっぺ」、大きければ「オオマイ」そのほかにも「カンカイ(寒海)」とも呼ばれ、このような小話を炭火で焼く店主から聞きながら熱燗で一献というシーンをパブリシティなどで訴求すると、じゃあ合わせる酒は何が良いかな?などという具合に連想することがどんどん広がる。このシーンの演出に気付いていない市町村が多い。








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