見出し画像

空港戦略の重要性

はじめに

1944年にアメリカ・シカゴで締結された「国際民間航空条約(シカゴ条約)」に基づき、航空会社の乗り入れや便数・運賃などの2国間航空協定による規制を撤廃した「オープンスカイ政策」により、日本とアジアのハブ空港競争は激化、LCCの参入により「ヒト・モノ」の輸送新時代を迎えた環境下での空港戦略の重要性について論ずることとする。
 日本の公的な空港は、空港整備法に基づく分類で国土交通大臣が管理する第一種空港・第二種空港(管理は地方公共団体が行う場合がある)、一般的に「地方管理空港」と呼ばれ地方公共団体が設置管理する第三種空港があり、共用空港やその他の空港を除いてもその数は80空港を超える飽和状態である。この原因は、バブル経済下での経済成長と旅客数の動きをベースに空港建設が計画され、完成まで多くの時間を要するため完成後には経済が鈍化、旅客数が減少しているという悪循環に陥っていることにある。とりわけ地方空港における搭乗率の減少は顕著、搭乗率を上げるために地方自治体が地元住民や旅行会社に助成金を支給するなど、路線の維持・空港経営の赤字が深刻な問題となっている。

日本の空港経営の問題点

 空港整備に関わる財源は元来、①航空会社を中心とする受益者負担の原則による航空機燃料税、着陸料、空港使用料などの料金を空港整備特別会計としてプールし財源とする、②空港ターミナルビルの運営でえる利益(地方空港では第三セクターが運営する場合が多い)、③財団法人などが管理する駐車料の収入などがある。つまり、関空などの一部空港を除き、着陸料など滑走路部分の歳入は一旦、国・地方が管理し各空港へ分配する、空港ターミナル運営で得る歳入は空港会社が管理する上下分離策がとられており、各地の空港運営会社の自主性は薄いのが現状であった。
 ゆえに、上下一体経営をする空港を除く多くの日本の空港は、国・地方自治体が滑走路部分のみで空港使用料を回収しようとし、空港会社は施設ビルの管理費などの収益で回収しようとするため、他国の空港と比較して非常に高額であり非効率な現状も持ち合わせていた。
 北海道では、北海道エアポートを母体として新千歳、旭川、稚内、釧路、函館、帯広、女満別と7空港の一括運営を2020年1月15日に開始し民営化された。筆者はアジア周辺地域、極東ロシアやヨーロッパと日本国内・アメリカ大陸を結ぶハブ空港としての広がりに期待を寄せている。

日本を含むアジア各地のハブ空港との競争

 日本の周辺には、チャンギ、スカルノ・ハッタ、クアラルンプール、香港、スワンナープム、仁川といった国際メガハブ空港が存在する。これらのハブ空港との競争には、日本のハブ空港を中心とした地方空港の利用促進や活性化を目指す戦略が重要である。
 日本経済新聞社の西條氏は以前、羽田と成田の首都圏二空港の長年のすみ分けについて「日本の空の産業は、ケータイ電話同様にガラパゴス状態であった。」と指摘する。これは、飽和状態であった羽田の需要をまかないきれず、成田に2つ目の空港をつくった事情は理解するが、「羽田は国内便、成田は国際便」という乗り換えが非常に面倒な状況を長年続けてきたことが問題であったことを指摘していた。
 しかし、この状況が2014年3月の羽田発着枠増加により国際路線が大幅に拡充され、ANA、JALを中心とした路線を持つ地方空港は同日乗継で世界と繋がった。また、ワンワールドやスターアライアンス加盟の航空会社とのコードシェア便利用による外国人観光客の増加で地方空港は活性化している。他方、成田空港では、スカイマークやジェットスター・ジャパン、ピーチ・アビエーションなどのLCCが成田空港発着の国内路線を拡大、「羽田の国際化、成田の国内化」が着々と進行し、関西空港や中部国際空港を含めた日本の空港と仁川空港などアジアのハブ空港との競争に光明が見えはじめていた矢先のコロナショックである。 
 前述の西條氏は、今後フルサービスを求めるユーザーが羽田を選択し、LCCを中心とする航空会社を成田に集中させる流れが確立される「脱ガラパゴス化」を予測していたが、まさにその通りの展開が進んでいる。
 2007年くらいから空港整備特別会計について廃止にむけた議論が活発化し、空港の統合・民営上下一体化が支持されはじめた。戦略的には、空整特会の廃止による地方空港の活性化、羽田・成田に次ぐ新たなハブ空港の出現を目指していたわけだが、特会により存続している地方空港がある現状もあっただけに廃止には異論もあった。議論の結果国内空港の民営化および上下一体経営が進み、セントレアなどの優秀な空港が路線誘致や維持や空港のテーマパーク化に成功した。北海道では千歳空港を軸に北海道7空港を統合・民営上下一体化が開始され大きな予算での地域空港の活性化が期待される。

 空港行政において供給過多や赤字の状態であった空港を廃止や集約で片付けるのは簡単だが、離島や陸の孤島にある空港を利用者数だけをみて一様に結論付けず慎重に議論することが重要は誰しもが理解していることである。
 地方空港を含め、日本の空港が国際的な競争力を持つためには、地域間での上下一体経営を含め、各地方空港への権限移譲範囲を拡大し、独自アイデアや独自経営の幅を柔軟に広げることが肝要であり、これによりモノ・貨物専門のハブ空港を含めた第二・第三のハブ・アンド・スポーク機能が確立されるはずである。
 日本において世界の「ヒト・モノ」がそれぞれのニーズ毎にハブ空港を選択でき、空港の設備や貨物の保管機能など各ニーズに特化した空港機能を充実させ集中させる仕組みが確立されたとき、日本の空港はバブ空港競争に勝利するであろう。         

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?