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介護福祉事業所の人事労務戦略室 ~次世代リーダーを育てる 連載第38回 「福利厚生⑥=130万円の壁」

こんにちは。ラボ事務局の杉田です。
今週もラボ代表及川による「介護新聞」連載企画(第38回)をお届けしてまいります。
第38回のテーマは「福利厚生⑥=130万円の壁」です。

 前回の記事から法定内福利厚生について触れてきましたが、今回はその中でも2023年9月に内閣が発表した「年収の壁問題」の変更点に焦点を当て、今週来週と2回に分けて解説してまいります。

 前半である今回は「130万円の壁」について、現時点でわかっていることや理解しておくべきポイントなど、変更に至った背景にも触れつつ、できるだけわかりやすく説明をしております。
 この度の変更内容を正しく理解して、適切な労務管理ができるよう本記事を参考にしていただければ幸いです!

介護福祉事業所の人事労務戦略室 ~次世代リーダーを育てる
連載第38回「福利厚生⑥=130万円の壁」

 前回の記事では、法定福利厚生のうち、扶養の範囲で働くスタッフへの、労働時間や月額給与について留意する管理点をお伝えしました。しかし、2023年9月に内閣から発表のあった扶養配偶者の「年収の壁」への取り組みについて、10月から一部の取り扱いが変更になりましたので、現段階での内容をまとめてみます。
 年収の壁問題は2つの取り組みとして「106万円の壁」「130万円の壁」が実施されます。これは社会保険料が免除になる第3号被保険者の取り扱いです。

 事業所の社会保険被保険者数の規模で対応が変わります。厚生年金の被保険者数が100人を超える事業所で働く短時間労働者は、週の所定労働時間20時間以上及び年収106万円以上の場合、社会保険の加入となります。

 厚生年金の被保険者数が100人以下の場合、年収130万円以上稼ぎがある場合は社会保険の加入はできず、国民年金及び国民健康保険の対象となります。したがって、この106万円、130万円のラインで保険料負担の有無があり、各々の事業所で働く従業員の中には、労働時間や給与の就業調整をされている方もいらっしゃいます。

 この取り組みは、慢性的な人手不足への対応が発端です。目的は社会全体で労働力を増やすとともに、扶養の範囲内で働く従業員自身も希望通り働くことのできる環境づくりを支援していくことにあります。政府はその実現として「年収の壁・支援強化パッケージ」を発表しました。

 「130万円の壁」については、特例的な措置として当面の間「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」を行うこととしていますが、今後、さらに制度の見直しが行われていく予定です。
 事業主による被扶養者の認定ですが、人手不足による労働時間延長等に伴う一時的な収入の変動によるときは、その旨を事業主の証明を添付することにより迅速で円滑な判断ができるように変更されました。
 現状は、あくまでも一時的な事情のため、同一の従業員について原則「連続2回」を上限とする予定です。(連続2年間とも解釈できます)

 現在、扶養の範囲として年収130万円を基準としていますが、この超えた場合の130万円以上の基準については特に示されていませんが以下を留意してください。
 ▼ 被扶養者が被保険者(扶養とする保険加入者)と同一世帯に属している場合は、その配偶者の年間収入を超えないこと
 ▼ 被扶養者が被保険者と同一世帯に属していない場合に、被扶養者の年間収入が被保険者からの援助による収入額を上回らないこと

 130万円の扶養の範囲で働いている従業員が、配偶者等の被保険者が務める企業から収入証明を求められた場合は、発行してください。サンプル様式は、厚生労働省のウェブサイトにて掲載されています。

 期間に対応する収入証明で、一時的な収入変動が認められる月は2023年10月からとし、その前の期間に遡及しないとしています。ただし年収130万円の捉え方は保険者が判断しますので不明な点は、新しく設置される「年収の壁突破・総合相談窓口コールセンター」で確認してください。
 税金の扶養控除の適用要件については、一時的に130万円を超える所得が発生したとしても通常の取り扱いとしています。

 実際介護の現場は、慢性的な人手不足が目立ちます。これらの要件を活用して、人材不足への対応として「年収130万円の壁」がある従業員については働き方の確認をしてみてはいかがでしょうか?

 混同してはいけないのが「106万円の壁」です。厚生年金の被保険者数が100人を超える事業所はこの特例には適応になりませんのでご注意ください。ちなみに、来年の10月から厚生年金被保険者数は100人から50人に下がります。

 現在の厚生年金被保険者数を確認したい事業所は日本年金機構ホームページにある「厚生年金保険・健康保険適用事業所検索システム」を活用してください。事業場単位ではなく厚生年金適用事業所単位になりますのでご注意ください。

 今回は「130万円の壁」について、お伝えいたしました。次回は、「106万円の壁」について、最新の情報をお伝えいたしますのでよろしくお願いいたします。

介護新聞11/3付「介護福祉事業所の人事労務戦略室―次世代リーダーを育てる!!」
http://wwu.phoenix-c.or.jp/~medim/kaigo/2023/202311kaigo/kaigo20231103.html

今週もご訪問いただきありがとうございました!
また次回、第39回の記事でお会いしましょう!

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