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介護福祉事業所の人事労務戦略室 ~次世代リーダーを育てる 連載第25回 「副業導入のメリットとデメリット~介護事業所における考察」

こんにちは。ラボ事務局の杉田です。
今週もラボ代表及川による「介護新聞」連載企画(第25回)をお届けいたします。
第25回のテーマは「副業導入のメリットとデメリット~介護事業所における考察」です。

今回からはテーマを新たに「副業」についてお伝えしていきたいと思います。
日々難化する労働力の確保や働き方に対する価値観の変化に対応するべく、昨今では多様な働き方が注目され、大企業でも「副業」が認められるといった事例をよく目にするようになりました。

実際に副業を容認するとなると、メリットが多い反面、管理面などで業務負荷が増えるといったデメリットもあります。

本記事では労務管理のプロである社会保険労務士の観点から「副業」を取り入れる上での注意点などにも言及していきます。やや内容が難しいところもあるかもしれませんが、ここを抑えて正しく副業を導入し管理することができれば求人等でも大きなアドバンテージになりますので、ぜひご参考にしていただければと思います!

介護福祉事業所の人事労務戦略室 ~次世代リーダーを育てる
連載第25回「副業導入のメリットとデメリット~介護事業所における考察」

 労働力不足が深刻化する中、副業が注目されています。特に人手不足が常に問題となっている介護事業所では、副業の許可でより多くの人材を確保できます。副業者の受け入れだけではなく、事業所職員への副業許可によって組織全体のスキルアップにもつながる可能性もあります。職員が副業を通じて専門性を追求する機会となり、満足度モチベーションも向上し、そのプラス効果が組織全体に波及するからです。

 しかし、副業導入にはデメリットも存在します。弊所のクライアントサポートでも副業に関するトラブルと相談が増えてきました。副業によって職員の業務負荷が増加し、過労やストレスの原因となり、本業業務に支障をきたすこともあります。したがって、副業の時間や内容について適切なルールを設けることが求められます。

 情報管理の難しさも挙げられます。職員が副業先事業所に情報漏洩(えい)するリスクもあるからです。競争相手となる事業所で副業を行う場合、競争法違反の問題も生じるので副業に関する明確なガイドラインの設定と、その遵守の徹底が求められます。介護業界の場合、同業での副業を選択する傾向が強いため情報管理は必須です。

 労働時間の管理や割増賃金の支払いについても考慮しなければなりません。副業の労働時間が法定労働時間を超える場合には、割増賃金の支払いが必要となります。
 厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」によると、副業の労働時間が本業と合算され、その合算した時間が1日8時間、週40時間を超える場合、割増賃金が発生します。支払い義務者は、法定労働時間を超えて労働させた事業主です。つまり、本業の事業所だけでなく副業先事業所も割増賃金の支払い義務があります
 副業の人材を受け入れた場合、労働時間によっては割増賃金の支払い義務を負う可能性もあるのです。副業と本業を合算した総労働時間が法定労働時間を超えないようにする必要があります

 副業者の年次有給休暇の管理は、本業と副業両方の視点から考える必要があります。労働基準法では週の所定労働時間が30時間未満の短時間労働者について、一定の所定労働日数を有する場合は、週所定労働日数または年間所定労働日数に応じて年休を比例的に付与することを定めています。

 副業時の所定労働時間の通算については、労働基準法により「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と規定されています。しかし、通算されるのは実際に勤務した「労働時間」であり、「所定労働時間=それぞれの職場で決められている勤務時間」が通算されるものではありません。したがって、年休の算定基礎となる所定労働時間については、本業と副業それぞれで計算されることになります。

 年次有給休暇(年休)の付与日数が10日以上の職員については、付与日から1年以内に5日分を消化しなければなりません。この義務は各使用者が個別に負うものであり、副業先においても年休の付与日数が10日以上ある場合は副業先も義務を負い、本業、副業それぞれで5日分の年休を取得させる必要があります

 職員が年休を取得した日に副業先で勤務することは認められています。 有給休暇をどのように利用するかは職員の自由であり、そもそも副業自体を認めている以上、本業は職員の年休取得日に副業先で勤務することをやめるよう求めることもできないでしょう。

 職員が副業に多くの時間を費やし、疲労のあまり本業で居眠りをするなど業務に支障が生じているような場合は、適切に休息を取るよう注意指導を行い、それでも改善が見られない場合は、安全配慮義務の観点から副業の許可を取り消す、あるいは勤務態度不良を理由として、懲戒処分等のより厳しい措置をとるといった対応を検討する必要があると思われます。

介護新聞7/21付「介護福祉事業所の人事労務戦略室―次世代リーダーを育てる!!」
http://wwu.phoenix-c.or.jp/~medim/kaigo/2023/202307kaigo/kaigo20230721.html

今週もご訪問いただきありがとうございました!
また次回、第26回の記事でお会いしましょう!

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