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北海道岩見沢農業高等学校

【防災、次の一歩】農業高校ならではの発信方法「防災食」を実現へ

   北海道岩見沢農業高等学校 生徒会

「防災食? すごい農業高校っぽい! 面白いね!」
これは「防災サミット」で私たちの取り組みに対していただいた嬉しいお言葉です。
私たちは今「農業高校ならではの発信方法」として「防災食」の製品化の実現に向けて取り組みをしています。実はこの取り組み、昨年度の「防災サミット」から生まれたものなんです。
 
「防災? 岩見沢にはあまり来ないだろうから実感ないよね」
これが昨年度の「防災サミット」に参加する前の私たちです。「防災」の必要性を全くと言っていい程に感じていませんでした。それが「防災サミット」に参加し、考えが一変します。他校の取り組みを知り、私たちは自分たちがいかに何もしていないか思い知らされ、とても恥ずかしい思いをしたのです。
「このままではいけない」
私たちは生徒会として、学校全体を巻き込んで「防災」への取り組みをし、「防災」の必要性を生徒に意識付けをする必要があると考えました。
そこで考えたのが農業高校ならではの「食」を通じて「防災」に興味をもってもらう取り組みです。本校の食品科学科農産製品製造専攻班に依頼し、「防災食」の開発をスタートさせました。
現在、取り組んでいるのは「大豆の代替肉を使用したミートソース」。岩見沢市で年々栽培規模が広がっているトマトと、食の多様性に寄り添えるよう大豆の代替肉を使用しています。また、ローリングストック法を知ってもらうために家庭で手軽に食べることができる「レトルト食品」にすることをこだわりとしました。
この製品の開発にあたり、事前調査として岩見沢市防災対策室を訪問し「岩見沢市の防災について」教えていただきました。この学びは、9月1日に行われた「防災の日」で全校生徒に伝えることができ、この1年で私たちは「防災」を学校の新たな取り組みとすることができました。
また、市への訪問がご縁となり「消費生活展」へ参加させていただきました。訪れた市民の皆様に私たちの活動を知っていただくことができ、さらに「防災の意識調査」で新たな取り組みへの課題を知ることができました。
 
そして、私たちはまた、今年度の「防災サミット」で新たな視点や意見を得て、「防災」に取り組む上での視野を広げることができました。
まず1つ目に、「防災」には細やかな配慮や視点が必要なのだと気付かされたことです。例えば、その地域がどこに位置するかによって、「防災」の形は違ってきます。私たちが暮らす岩見沢市は内陸部にあり、津波などによる被害を恐れることはありません。しかし、沿岸部の地域で暮らす人々は、津波対策も行っていく必要があります。
また、子ども、大人、高齢者、障がい者など人それぞれによって異なる「防災」の形もあります。実際に水害に見舞われた際、私たちが腰まで浸かる水で、車いすユーザーの人々は首あたりまで浸かってしまい身動きが取れなくなってしまうため、より一層素早い避難が求められるなど、個人の事情に合わせた対処も必要になります。前述した例は、北海道岩見沢高等養護学校の皆さんからお聞きしたものであり、このような気付きを得ることができました。
2つ目に、高校生の私たちにもできることはたくさんあるという実感を得たことです。岩手県立大槌高等学校の皆さんがお話してくださった「東日本大震災」での体験談から強く感じました。被災当時、大槌高校は避難所に指定されており、避難所の運営の多くに生徒が協力していたそうです。生徒自ら食事の提供や、衣服などの物資の運搬や配給、子供たちの遊び相手など、さまざまな行動を起こしました。当時の状況は「校舎が一つの町のようになっていた」と言われていました。そんな中を大槌高校の皆さん、つまり高校生が主力になって生活していたというお話を聞き、積極的に関われば高校生でも多くの人を支えることができることが分かりました。
このお話は災害が起きてからのものですが、その前に出来ることもあります。例えば、校内のAEDの保管場所や避難経路の確認、被災時に必要になるものの用意などです。校外では、ハザードマップや避難場所の確認、実際に被災した時のシミュレーションなどがあります。このように、些細な「できること」はたくさんあるのだと、改めて考えさせられました。
 
私たちは今年度の「防災サミット」での交流を通して、いろいろな視点から「防災」を考えることの重要性を再認識できました。また、参加者の皆さんの「防災」に対する熱い思いを感じ、とても良い刺激になりました。高校生の私たちができる「防災」はたくさんあり、それぞれが学校の特色や経験を生かしながら、互いに協力し、情報を共有していくことも新たな「防災」を生むのだとも感じました。この結果を受けて、やはり「防災サミット」は私たちに変化をもたらす大切な場であると改めて感じています。
 
災害は日々の生活の中に常に潜んでいますが、災害への意識はきっかけがなければ薄まるものです。そんなときに、改めて防災について考える機会を作ることはとても大切なことだと思います。「防災サミット」で「防災」や「減災」への意識を共有した私たちが経験を生かし、周りの人を助けられるような考えを広めていきたいです。
だからこそ、私たちは農業高校ならではの発信方法である「防災食」の開発を実現し、「防災食」を「もしもの時に必要」なものだけではなく、「もしもに備えること」を知ってもらう活動の一助として活用することで、全校生徒だけではなく地域の方々にも「防災」への意識変化をもたらしていけたらと思っています。
「来ないだろう」ではなく「起こるかもしれない」という意識をもって備える「生きる力」をたくさんの方々に広めるために。