嫁姑問題に立ち会う保健師 黒井

嫁姑問題はいつの時代も聞くもの。
今回は長男さん一家と暮らす80歳の女性、幸子さんの嫁姑問題の話。

幸子さんが一緒に暮らし始めた経緯

もともと県外で長男さん一家と2世帯で暮らしていた幸子さん。 しかし色々あり、長男さん一家だけが引っ越し、夫婦二人暮らしとなる。
その後、10年程前にご主人がなくなったのをきっかけに 幸子さんは住み慣れた土地を離れ、県外の長男さん一家のもとに。


嫁姑のいざこざ


マイペースな幸子さん。一方てきぱき几帳面なお嫁さん。
生活のひとつひとつがそれはもう、相性が悪い。

①食事の揉め事
食事は自分が食べたいときに食べたい幸子さん。
食事の時間を一家で合わせたいお嫁さん。
幸子さんだけ時間が違うと別に用意しなければならならず、
家事の手間になるというお嫁さん。
一方幸子さんも、みんなと食事の時間がずれるなら自分で用意しよう、 という気持ちは微塵もない。
幸子さんとしては家事は嫁の仕事、なのだ。
私が来たタイミングでなぜ食事を用意してくれないのか、不満げな幸子さんだった。

②掃除の揉め事
几帳面なお嫁さんは、隅から隅までピカピカにしたい派。
一方幸子さんは、汚れていても気にならない派。
お嫁さんとしては、幸子さんには家の中でも少しでも体を動かす習慣をつけて、 家でも役割を持ってもらって、元気に過ごしてほしいと思っている。
幸子さんは、80歳にもなって掃除など家のことをやる人など誰もいないと言い張る。
そんな中でも、一応玄関掃除は幸子さんの仕事になっていた。
だが、四角い部屋を丸く掃く幸子さん。しかもお嫁さんに言われて仕方なくやっている。
隅の方の汚れは見ないふりでササっと掃除を済ませる。
(幸子さん、目が良いので汚れが見えてない訳ではない)
そんな様子を見てさらにイライラするお嫁さんだった。

③運動の揉め事
幸子さんは手芸が大好き。基本的には自室でずっと過ごしていたい派。
お嫁さんとしては、手芸の時間、体操の時間とメリハリをつけて過ごしてほしい派。
体操や運動をする気がない幸子さんにイライラするお嫁さん。
幸子さんとしては、散歩をしているので体も動かしていると言う。
この”散歩”も、お嫁さんが口うるさく言わないとやらない。
やったとしても家の前の10mほどの距離を2往復くらい。
その距離を休み休みゆっくり歩く。
もっと自主的に運動してほしいお嫁さんと運動したくない幸子さんであった。

④介護サービスの揉め事
介護サービスについても意見が合わない二人。
幸子さんはデイサービスが大好き。
でも、お嫁さんはあまり好きではない。
( 幸子さんが不在になる、という点では好きだけど)
デイサービスでは穏やかで優しい姿の幸子さんだが、
自宅ではお嫁さんに感謝の気持ちの一つもない。
デイサービスでの気遣いや優しさを、
少しでも自宅でやってくれたら…と嘆くお嫁さん。
(ごはん美味しかったよというようなちょっとした一言がほしいお嫁さん。)
また、お嫁さんとしては、デイサービスは他の人から良くないことを吹き込まれる場と思っている。
幸子さんがデイサービスから帰ってくると、
「 〇〇さんのお嫁さんはこんな優しいのに」
「 △△さんから幸子さんは元気だねって言われたから今のままの生活で大丈夫( 運動したくない)」というような話をお嫁さんにするらしい…。

最後に


幸子さんの言い分も、お嫁さんの言い分もわかる。
二人の板挟みになりながら、
「お二人の気持ちどちらもわかります。
いやぁ、むずかしいですね。」
と毎回答えを出さずひたすら話を聴く黒井であった。
いや、でも、その関係性で長年一緒に過ごしてきたならむしろ、実はそんなに仲が悪くない可能性もあるのか…?
長年暮らしてきたからこそ、嫌なこともあるけれどそれとはべつにちゃんと家族としても愛情もあるんだろうな。

だが、幸子さんとお嫁さんの戦いは終わることなく今日も続く…


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