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愛あるお説教に感謝

 私が新入社員の時、仕事の準備のために早出出勤を命じられた。

 毎朝一人で準備をしていると、清掃の人達と顔見知りになった。

 ある日「あんた、朝からうっとおしい顔してるなぁ」、関西弁の声の大きな女性から叱られた。

 続いて「あんた見ていると、こっちまでうっとおしなるわ!自分から大きな声で笑顔で挨拶せんかいな!」と説教された。

 確かに、毎日の早出にうんざりしていた。

 翌日から、笑顔と自分からの大きな声での挨拶を心掛けた。

 一週間後「それで、ええんや。やったらできるやん!」とあの女性に言われた。

 一か月後「仕事、楽しなってきたんか?」と聞かれた。

 確かに、毎朝の準備作業が日常業務に役立っていることが分かり、その重要性に気付いた頃だった。

 びっくりして「なんで分かるんですか?」と聞いた。

 「そりゃ分かるわ、前と全然違う」。

 それから「新人さんは、みんなが心配してるんやで。だから、笑顔で声張って良い姿勢で仕事せなあかん」。

 そして「一番大事なんは『みなさん、おおきに』という感謝の気持ちやで」と少し声を潜めて教えてくれた。

 「教えて頂き、ありがとうございます」とお礼を言うと、「あんた言いやすいねん!」と言って背中をバシバシ笑顔で叩かれた。

 ものすごく、うれしかった。

                 <了>