【時事ネタ】保育施設事故件数についての疑問
前回の記事で、保育園と幼稚園に通う子どもの数は減っている(▲1.53%)にも関わらず、事故件数が増えている(+16.48%)という事実を取り上げました。
では、なぜ、どんな事故が増えているのか?調べてみました。
前回見た内閣府の子ども・子育て本部のページには、記事の元になった発表資料だけではなく、事故のデータベースが掲載されていました。
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/data/index.html#database
ここから詳細の情報が分かるかとも思ったのですが、集計のタイミングが違うのか、発表資料とは全く数字が異なり、資料の分析には使えませんでした。
そこで改めて発表資料を見ると、疑問に感じることが何点かありました。
①全体の事故件数増加を押し上げているのは、「認定こども園・幼稚園・保育所等」の「その他」の事故(+28.67%)
②死亡事故や骨折等の重大案件は横ばいか減少
③保育園の報告件数は、幼稚園の24.3倍
この中で一番驚いたのは、③です。
資料にも記載がありますが、施設数は幼稚園8,172箇所、保育園が22,732箇所で、保育園の数は幼稚園の2.8倍に過ぎません。
園児の数は、保育園が2,003,934名に対し幼稚園は1,009,008名で、こちらは約2倍です。
なぜ、園児数2倍なのに、事故報告件数は24.3倍になってしまうのか?
仮説A 通う年齢が異なるため(保育園の方が低年齢だから、事故が多い)
仮説B 報告の基準、集計の対象が異なる
まず、Aについてですが、これはすぐに違うことが分かりました。
同じ資料に年齢別の発生件数があり、保育園における事故の件数の中で、幼稚園と同様の年少以上(3歳以上)の占める割合は約85%で、低年齢に特に事故が多いという事実はありませんでした。
続いて仮説Bですが、報告の基準は下記の通りで、これはすべての施設で共通でした。
○報告対象となる重大事故の範囲
➢死亡事故
➢治療に要する期間が30日以上の負傷・疾病を伴う重篤な事故等(意識不明の事故を含む。)
(出典:内閣府 重大事故発生時の報告の仕組み(概要))
また、報告のルートは、幼稚園と保育園で異なりました。
幼稚園は第一報を都道府県に、保育園は市区町村に入れるという仕組みでした。
市区町村単位である方が当然管理は細かくなると考えられ、保育園では定期的に行政の監査がありますがこれも市区町村が実施するため、過去の事故をチェックされ報告を促される等「迷ったら報告した方がいい」という動機は保育園の方が働きやすいと言えそうです。
重大案件は増えていないにも関わらず「その他」の事故が増えている、というのも、施設の種類や所管官庁、第一報の報告先によって事故の報告範囲や周知徹底方法がまちまちであるためではないか、と感じました。
それにしても幼稚園の報告件数の少なさは驚きでした。
機会があれば幼稚園と保育園の安全ガイドラインやデイリープログラム等も比較してみたいと思います。