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映画日記その304 「仕掛人・藤枝梅安 2」

江戸のはり医者で仕掛人の藤枝梅安(豊川悦司)は、相棒の彦次郎(片岡愛之助)と京都にむかう。彦次郎は道ちゅう、妻と子を死においやった浪人・井坂惣市(椎名桔平)を見かける。京都に到着した梅安はもとじめに彦次郎の敵の殺しをたのまれるが、そのとき梅安は自身と因縁のある浪人・井上半十郎(佐藤浩市)とすれちがう。

シネマトゥデイより

【ネタバレ注意】

本作では梅安と彦さんが仕掛人となった理由が明かされる。そしてふたりの引きずった哀しい過去を掘りかえしながらの展開となる。作中でふたりはおたがい壮絶な過去を知ることになるのだが、とりわけ彦さんの過去は凄惨だ。あれはエグいで…あんなんされたら発狂するわ…。

ただふたりの展開のちがいは、彦さんはあだ討ちをするほう、梅庵はあだ討ちの対象として狙われるほうになる。本作はこの2件のあだ討ちが軸になる。ただその2件が一本のストーリーとして繋がっているかというと、う〜ん、別々とは言わないが、まあまあ、かすっている程度なのかな。

一本の作品に2件のあだ討ちの背景を描いているためか、梅庵と彦さんが酒を酌みかわし、食事をたしなみながらゆっくり語り合うシーンが前作より少なかったように思う。意外とこういうシーンがあることによって作品や登場人物に深みが増すのだが、そこが少々残念に思う。

とはいえ、陰影の使い方が非常に効果的で美しい。そして景色もいい。また何よりも登場人物がていねいに描かれていて魅力的だ。梅庵を演じる豊川悦司さん、彦さんを演じる片岡愛之助さんはもちろんすばらしいが、今回初登場の椎名桔平さん、佐藤浩市さんがとても良かった。

椎名桔平さんは人格のあい反する二役をうまく演じていた。また佐藤浩市さんは哀しく重い過去を背負う男の悲壮感を、じゅうぶんに演じていた。そしてそんな野武士的な作品のなかで、菅野美穂さんの存在もまた心に残るものがある。生真面目でどこにでもいるような普通の女性を演じたら菅野美穂さんの右に出るものはいないのでは。もちろんこれはほめ言葉だ。

ともあれ、人の恨みによるあだ討ちを金でうけおう仕掛人の梅庵。その梅庵もまた人に恨まれ、あだ討ちの対象として命を狙われる。そしていつもなにかに追われるように苦しみながら生きているのだ。本作はこのような人の因果をうまく描いたすばらしい映画だ。エンドロール後のシーンをみると次もあるような雰囲気。次回作があるのなら、うん!ぜひ観たいッ!


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