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境界標を愛でる

道を歩いていると敷地と敷地の間に「境界標」(きょうかいひょう)があるのを目にするでしょう。見えているのに見えないつもりになっているかもしれないけど、一度気になりだすと習慣的に探すようになってしまいます。

例えば、こんなもの。

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境界標は土地と土地の「境界線」の頂点に置かれるものとのことで、この写真で言えばL型側溝が微妙な鈍角を形成していて、ここに境界線の頂点があることがわかります。

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矢印の先にはよく小石や砂が詰まっている。取ってあげたい気もするが、そこは手出し無用な威厳が感じられる。

こういう健気なタイプもよく目にするのではないでしょうか。ブロック塀の右端までこの土地はブロック塀の持ち主のものということを主張するため、ブロックの下端が器用に削り取っています。

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これなんかも粘り強いファイトを感じる。

ちょっと調べてみると、この境界標がしっかりしていないと土地家屋調査士事務所に相談が行って、土地の形を確定するための測量が行われるらしいです。
そこで「このブロック塀はだれのものか?」みたいな議論になることがしょっちゅうあるらしいのですが、調査士事務所は弁護士ではないので正直「知らんがな」という立場のようです。

様々な境界標(その材質や形状)

境界標にはいろんなタイプがあり、古いものは御影石のものがあります。

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真ん中の赤いペンキが境界線の頂点。最後の力を振り絞っている感じが伝わってくる。

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こういうコンクリート製のものもよく見かけますね。ペンキはすっかりとれちゃってますが、その高さと堀の深さで頑固一徹な雰囲気を醸しています。
よく見てみるとほかにもいろんなバリエーションがあります。

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これなんか、よくよく注意してみないと見落としてしまいそうな隠れキャラ。

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平たく置くのはあきらめて壁に取り付けた変化球バージョン。アンダースローのシュート(どういう曲がり方か分かるようでわからない)みたいな感じ。

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「グラウンドレベルだけが俺たちの居場所とは限らないぜ」と言わんばかりの主張をしてくるブロック塀の上にあるミッドフィルダー。ちょうど腰の高さぐらい。

このようにさまざまなあり方で、彼ら「境界標」の果たしている役割とはいったい何なのか?気になったのでインターネットのみで調べた情報をまとめてみました。価値があるかどうかはともかく。

境界標の役割

・となりの敷地との境界線の頂点にある。
・動かしてはダメ。(勝手に動かすと刑法上「境界損壊罪」で5年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金)
・いろんなタイプ(素材・形)がある。

たとえば、こんな形で存在しているとすると、

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こういうことなんでしょう。
これなんか、どうなんでしょう?

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L型側溝の内側(道路側ではないほう)に境界標があることを最後の塀を立てるときに気が付いて急遽後ろに下げたかのような痕跡。

境界標の絶対的な権力の強さを感じずにはおれません。

でも中には、そんな権威を歯牙にもかけない埋め込み型もあります。

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一体、なんの境界線を示しているのやら。

あるいは、区としての主張が。。。

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完全に点字ブロックに埋まっている。

いずれにせよ「境界紛争」という水掛け論を避けるために、隣接する土地との境目を計測に基づいて合意の上に設置するものということです。
隣接する土地の持ち主は立ち会って設置する習わしがあるとか。ちなみに費用としても結構な金額がかかるけど、きちんとやっておかないと後の紛争や坪単価が高い土地では失うものが大きい可能性もあります。

境界標の兄弟

血縁関係があるかどうかはこちらの勝手な想像ですが「境界標」と似たような役割を持つ兄弟分がいます。

「河界」
河川(国が管理している)と陸地(道路だったり私有地だったり)の境目を示すもの。

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目黒川のほとりにて。マンションの敷地の道路側なのでぜんぜん陸地だけど、実際にはここまで河として認定されているそうだ。

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文字組に東京モノとしてのデザイン性を感じる

「道界」
これは道路と私有地の境界を示すものです。

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実際にはこの道界標を挟んでどちらも商業施設の歩道のようだけど、だからこそ「ウヤムヤにはしないぞ」という愚直な信念に貫かれている。

「境界標」売ってました。

こういうモノ(プロしか使わなそうな)って、モノタロウに行けば大抵ありますよね。
で、やっぱりありました。それぞれの形に固有名詞があって「コノエマスターライン」とか、なんかグッときます。

https://www.monotaro.com/s/q-%8B%AB%8AE%95W/

境界標だけでなく、あの丸い赤いプラスチック(ポイントベースというらしい)と真ん中の大きい釘(メジャーネイルというらしい)なんかも売ってます。

メジャーネイルの場合、道路によく目を凝らしてみると国としての調査にも使われていたりします。

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「都市再生街区基本調査」:都市部の地籍調査を推進するための基礎的データを整備するために、平成16~18年度に国が実施した基本調査
国交省 地籍調査Webサイト:http://www.chiseki.go.jp/plan/cityblock/index.html

ちなみにまさかと思いつつ検索してみたら、Amazonでも売ってました。なんでもあるな、密林。

送料がかかるとはいえ、数百円で手に入る本物感ただよう逸品。

手に入るからといって、勝手に適当な公道に打ち込んではだめです。せめて、自宅の中のテレワーク用領域(そんなものが確保できればですが)を示すために使うぐらいにしましょう。

そして、一応念のため調べてみたらなんと「河界」も通販で買える時代。

「仕事の鬼」が販売しているので、趣味の方はお控えなすってください。

日頃仕事で接しているシステムの世界なんかでは「責任分界点」みたいな言葉を用いつつ模式図と文章で「境目」を明確にしようとしてるけど、時として解釈次第でグズグズになったりします。

こういう物理的な「境界標」のしっかりしてる具合は憧れます。

新常態の世界になって、これから土地の値段が変わっていくんじゃないかと勝手に予想しています。一部のお金持ちを除けば、人生のコストの一番大きな部分を占める不動産の価値が変わっていくと、いろんな部分に影響が出てくるのでしょう。

そして、さらに人口は減少に転じて久しいので要するに経済は縮小に向かうわけです。こういう局面では足元をしっかりとみながら進むことが大事ですね。で、気になっちゃったわけです、境界標が。


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