小さな復活

■2017年10月23日 月曜日・日勤

とてつもなく大きな台風が通り過ぎ、久しぶりに乾いたアスファルトを踏むことができた。

黄色いイチョウの葉が楽しそうに舞い散らかり(小さな子どもたちみたいだった)、郵便局の前でママチャリがポストに突っ込むような形でひっくり返っており、ぶにゃぶにゃになったダンボールが道路の真ん中で力尽きていたり、なぜだか横断歩道の真ん中に片っぽだけの、コッペパンみたいな形の革靴が転がっていたり。台風はいろんなものを壊し、かき混ぜ、奪っていった。 

10月7日に20kmほど走って右膝を壊してから丸2週間と1日。走ることをすっかり休んでいた。毎日、膝に湿布を貼り、走れない代わりに筋トレをしたりプールで泳いだりして過ごした。

その間、どういうわけかほとんど毎日、雨だった。

本当に、梅雨以上に梅雨らしいような、まったくもって青空なんて見ることのない2週間だった。故障のせいで走れない期間が、故障がなかったとしても走れなかったというのはある意味、ありがたいことだった。それでも、雨の中、ランニングをしている市民ランナーを見かけると、自分も走りたいなあ、とうずうずした。走らなきゃなあ、と焦った。

日勤の後。

ここ2、3日でようやく膝の痛みが落ち着いたので、そろそろ走ってみようか、と久々にナイキのシューズに足を差し込んだ。Tシャツの上にウインドブレーカーを着た(もう、そんな季節なのだ)。右膝にcw-xのサポーターを着け、ユニクロの裏起毛パンツを履いた。ワイヤレスのイヤホンを耳に差し、まずは軽いウォーキングからスタートした。

普通に歩くぶんには痛みはない。少し力強く足を進めても問題なし。恐る恐るジョギングを始めてみる。

おお、痛くない・・・! 

じわじわとしみるように広がる感動。道端の犬のうんこも、おじさんの吐き出したタバコの臭いも気にならない。・・・いける。これはいけるぞ!

僕は自分の小さな復活に酔った。

世界の片すみのいち市民ランナーの故障だとか復帰だなんて、そんなのどうだっていいことなんだけど、僕にとっては本当に嬉しい瞬間だった。そして、この復活を、この膝と、ついでに体全体を、大事に大事にしていこうと思った。

軽く町内の道を走る。

走れなかった間にyoutubeや雑誌で学んだフォアフット走法(足のつま先の方から着地する走り方。膝を痛めにくいらしい)を試してみる。すると、思ったよりスピードが出る。1kmのタイムを計測してみると、5分10秒だった。これは僕にしてはかなり早いペースだ。しかも休養明けなのに。

呼吸はどうだろう。ブランクで心肺機能もそれなりに落ちるのだろうか。自覚的にはさほどの負荷は感じなかった。暑くなってきたのでウインドブレーカーを脱いで腰に巻く(とても軽いプーマのもので、去年走り始めたころに幕張のアウトレットで買った)。

走ったり歩いたり、いろいろと試しながら、かつ無理をしないように気をつけつつ、町内を走った。この程度なら、膝は問題なさそうだ。明日は日中に川沿いの道を走ってみよう。

どこからかステーキの匂いが漂ってくる。ペッパーをきかせた分厚い肉の香り(目視はしていないけど、きっと分厚いやつだ)。おそらく本格的なグリルで焼き方を熟知した人が焼いている、そんな香りがした。走る前に夕食は済ませていたけど、腹に肉を入れたくなった。明日、きっとステーキを食べよう。

5キロ弱を30分くらいかけて走った。フォアフットやミッドフットを試しながら走っていたら、ふくらはぎが爆発しそうなくらいに張ってきた。これまでの踵着地と違って、フォアフットはふくらはぎに負荷がかかるらしい。

家についてアイシングしながら入念にマッサージをして、それから風呂に浸かった。アフターケアについてもこれまでは無頓着だった。これからは走る前後の体のケアについても気を配りたい。

そういう風に考えられるようになったのだとしたら(そしてそれが持続するのであれば)、膝を痛めて走れなかった2週間と1日にもしっかりとした意味があるのかもしれない。

■体重:69.9kg ようやく70kgを切り始めた。

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