泡のような恋
高校2年の冬。
私はNに恋をしていた。
特別イケメンだったわけでもないし、勉強やスポーツがずば抜けて出来るわけでもない。
それでも、「恋は盲目」って言う通り、私にとってはNの全部がピカイチだった。
Nに彼女はいなくて、彼はいつも私にからんでくれていた。
放課後の「自主学習」という名ばかりの遊び時間、居残りメンバーで戯れる時、いつもNは、私のそばにいてくれた。
私は心のどこかでNの気持ちに期待していた。
もしかして、彼も私のこと・・・って。
だって、「あんた達付き合ってるでしょ~」って周りから冷やかされても、それを全然否定しないし
空手部だったNと練習終わりに待ち合わせしてた時、時間になってもなかなか来なくて拗ねてたら、「遅くなってすまん、ほらこれ食え」って言って私の大好きなマーブルチョコを袋いっぱいに持ってきてくれたし
遠征から帰ってきたとたん、なんかきゅうにそっけなくなるから
「お土産ないの~?」って私から話しかけたら、ぶっきらぼうに「あー俺のメットイン開けて勝手に取って」って言われて、バイク小屋行って開けてみたら、私の大好きなスピッツのCDとキティちゃんのキーホルダーが入ってたし・・・
こりゃもう絶対脈ありだなって、いつかくる「その時」を期待していた。
そんなある日の放課後。
冬だから暗くなるのも早くなり「自主学習」で集まるいつメンも、早めに帰るようになった。
バイク小屋の階段のところで、また明日ね~って次々に別れて、
いつの間にか、Nと2人きりになった。
「今日は寒いな~。あ、ちょっとトイレ行ってくるわ」
Nがすぐ下のトイレに行っている間、私はドキドキしていた。
Nと2人きりだよ。チャンスだよ。
もう思い切って告白しちゃう?
でもこの、両思いなのに言い出せない感じとか、友達以上恋人未満の幸せを手放すなんてもったいないな~・・・なんて思っているうちに、Nが走って戻ってきた。
バイク小屋の外灯の下で、お互いの吐息が白いのが見えるぐらい寒い中、
Nが私に向かって言った。
「ね、目つぶって。」
「え・・・なんで?」
「いいから目つぶって、手出して」
キャーついにきたーーー!
この展開、絶対あれでしょ(照)
こここっ、こころの準備ができてないんですけど(照)
寒いから、手をギュッと握って「好きだよ」って告ってくれてからのキスみたいなパターン??
やややっ やばいってー もう熱出る~
その時の私の脳内は、100%恋愛マンガで埋め尽くされていた。
寒さと緊張で震える手をゆっくり差し出す。
私の胸の高鳴りが最高潮に達した時
「はい どうぞ」
私の手のひらに何かが触れた。
いや、触れたというか乗った。
「ん・・・? うわ冷たっ!! つめたい何これ!?」
目を開けると同時に、Nが爆笑している。
「ごめんごめん冗談。さっき手洗った時にちょっとからかいたくなっただけ(笑)」
暗がりで必死に目をこらしたら
なぜか私の手のひらには「泡立った石けん」が乗っていた。
もう一度言っていい?
何度目をこらしても、恋愛マンガの展開を期待した私の手のひらには
「泡立った石けん」がどーんと乗っていたのだ。
「手、あらってくる」
私は舞い上がった恥ずかしさと切なさで真っ赤に火照った顔のままトイレに行き、泡立った手をキレイに洗い流した。
Nのバカ。
石けんの泡と一緒に、私の恋心も流れてしまえばいいのにと思った。
ふてくされた顔でNのところに戻ったら
「お前ほんと、可愛いな。そういうところがいいんだよ」って言いながら
Nが私の頭をポンポンとした。
もぉーーーお願いだからこれ以上何も期待させないでぇーーー!!
私の書く記事は多分、伝わる人が限られています。いじめ、機能不全家族、HSP、病気などの記事多めなので。それでも深くせまく伝えたくて書いています。サポートとても嬉しいです。感謝します。コメントも嬉しいです🍀