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名前負けなんて言わせない


「自由のユウに、美しいに、子どもの子です」
説明の通り、私の名前は漢字で 「由美子」

私は小学生の頃から、名前の漢字を聞かれた時にそう答えていた。堂々と。うん、自分でも、すごく分かりやすい説明だと思う。

しかし、小学校4年生の時に、社会の授業で、名前の由来を聞きましょうという宿題が出た時に両親に質問したことによって
私の中での"由美子さん"は見事に消えてしまったのだ。

「ねぇ、由美子って名前の由来は何?」

父からの言葉
「漢字の通り。自由に伸び伸びと 美しく育つ子どもになってほしい、だよ。」
「そっか、ありがとう、わかった」

そう言いながら、私はこの説明に納得がいかなかった。

私のnoteを普段読んでくださる方になら分かってもらえると思うが、うちの家庭は 自衛隊ばりに厳しくて

1に勉強 2に手伝い 3.4が無くて 5に勉強
友達の家に遊びに行くなんて年に数回許されるか許されないかだった。

どこが 自由に伸び伸びとやねん!

ハイ、由美子の"由" 消えた〜。

次に、美しいという漢字についてである。

質問した時10歳だった私だが、その時すでに、自分が"美しい"とはほど遠い顔立ちだということは理解していた(笑)

だって、周りの人達が私の容姿を褒めるとしたら

由美ちゃん美人だね じゃなく
可愛らしいね 
→うん、目鼻立ちクッキリ!じゃないから美人じゃなくて可愛いって言うならわかるけど、可愛い可愛らしいって全然意味違うからね~(笑)

さらにわかりやすく表現してくれる人の場合

愛嬌あって可愛いよね → いやいやもう、容姿じゃなく雰囲気を褒めるしかないってことよね(笑)

鏡を二つ使って 自分の横顔を見ながら
丸っこい鼻筋を見て、ある意味あきらめる。

ハイ、由美子の"美"も 消えた〜。

最後に残された 由美子の"子"

これに関してはもう、周りの人が100パーセント
由美子ではなく 由美としか呼ばないので
周りからいつのまにか、由美という名前だと思われていたぐらいで

家族と話す時いつも、"子"は別にいらなかったんじゃない?って言われてたぐらいだから………

ハイ、これで "由美子さん" サヨナラ。。。


こんな事を ほんの1分ぐらいの間に頭の中で考えながら、自分の部屋に戻ろうとした私を、母が引き止めるように話しはじめた。

「あんたを産んだ頃の時代はね、"香"がつく名前が流行ってたっていうか、おしゃれな名前で通ってたのよ。」

ほうほう。たしかに、私の1歳上の姉の名前は

"麗香"と書いてレイカだった。

ねぇお母さん、こういう切り出した方をするということは、なぜ私に 敢えて "由美子"とつけたのかを、素晴らしい理由の元に説明してくれるんだよね?

由美子の名前に希望を持って聞いていいよね?
そんな期待を抱きながら続きに耳を傾ける。

「レイカが生まれた時、近所で他の子供も香が付く名前で ユズカ、リョウカ、レイカって、みんなから いい名前って言われたのよ」

ふむふむ、ってことは、、、敢えて、みんなと同じじゃないオリジナリティある名前にしたくての由美子なのか?

だとしたら、由美子って名前も案外ありじゃん♪♪
なんて ちょっと喜んだ私がバカだった。。。

母の続きの言葉で、私は 調子という名のジェットコースターに乗りこんだ。

「でね、年子で生まれたあんたの名前、ほんとは 飛鳥って書いてアスカにしようと思ってたのよ」

「えーーー!?あのチャゲ&飛鳥と同じ飛鳥?めっちゃいいじゃん!!」

だって、チャゲアスの"SAYYES"が、リアルタイムで流行ってた時代だったから

一瞬で その名前つけて欲しかった〜!!と思った、というより
まるで、自分が飛鳥という名前で生まれたような気分になって
私ってカッコいい〜って舞い上がってしまった。

私が乗った 調子という名のジェットコースターが飛鳥という名前まで連れて一気に頂点に…………


「でもね、知り合いにその事を話したらこんな風に言われたのよ。
"レイカの名前でも凄いのに、下の子までアスカなんてつけたら、名前負けするんじゃない?"って。
確かにそうかもしれないな〜と思って、最終的にあんたには平凡な名前付けようと思って、由美子にしたのよ」


ぎぃゃあああああああああ

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


見事に急降下。
ジェットコースターが大嫌いだから普段乗らないくせに
調子に乗った私が悪いのだ。

いや待て待て待て待て

待って〜!!!!

お母さん、あなたはすごいよ。

由美子さん本人を目の前に
名前負けしないように平凡な名前つけたですって???

そもそも、名前負けって何やねん。


今、自由に伸び伸びと美しく育ってない私は

あなたが言う、平凡な その名前にさえ負けてるんですけど………。


そして次の日、学校にこの宿題を持っていった私は
「私は本当は飛鳥と書いてアスカって名前になる予定だったんだって」
、なぜか 周りにとってどうでもいい情報を必死に発信していた。

その理由は、今の私には分かる。

自分は"飛鳥"という きらびやかな名前に相当する素晴らしい人間なんだよって、誰かにアピールしたかったんだと思う。

飛ぶ鳥のように 世界を羽ばたいて、脚光を浴びたかったのだ。

まぁどちらにせよ、あの家庭環境では
飛鳥という名前で育っていても
飛ぶ鳥ではなく籠の鳥だったんだけれども(笑)

そんなこんなで、由美子という名前の私は
本当の名前に負け、幻の名前にも負け
ジェットコースターがますます嫌いになった私は

大人になって、自分の名前の漢字を聞かれた時、こう答えるようになった。

「一般的な漢字です。ユミコって聞いて誰もが思い浮かべる簡単な漢字です。」

もうこれ以上、自分の名前に負けたくなくて
自分の身の丈に合った説明をしようと思ったからそんな説明になったんだと思う。

なんだかんだ悔しい思いをしながらも、私は"由美子"という名前と共に40年近く歩んできた。

厳しい親元を離れ、今では自由も手に入れて
美しさは……内面磨いて心でカバーして(笑)

ちょっとだけ、自分の名前を好きになりつつある。

今さらだけど、もし飛鳥とつけられていたら
チャゲ&飛鳥の彼がタ○ホされた時に、周りからいじられまくっていたのだろうなと。

母が、平凡な名前と言ったけれど、あれから私は、インターネットで
たくさんの由美子さんを検索した。
同姓同名の由美子さんもたくさん見つけた。

お医者さんやら、アーティストやら、とにかくたくさんの由美子さんがイキイキしていた。
私は、そんな"由美子さん"達を誇りに思った。

私自身、3人の子どもに名前をつけるとき、名付け本を片手にいっぱいいっぱい悩んだ。

自分が将来、子どもに名前の由来を聞かれた時に
それこそ胸を張って、堂々と名前に込めた願いを聞かせたかったからだ。

名前負けなんて言わせない。

というより、名前負けなんて言葉は、必要ない気がする。

名前は 表面的な呼び名なだけであって
中身の人間の本質を表すものでは無いから。

だから私は、由美子という名前に勝つぐらいの気持ちで、ジェットコースター嫌いをいつか克服しようと思う。。。

世界中の由美子さん達は、ジェットコースター好きなのかな?

読んでいただきありがとうございました。


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