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【映画感想】アンノウン・ソルジャー 敗戦国が作ったイーストウッド映画??

クリント・イーストウッドという人は常々体制というかシステムというか国家というか、そういう巨大な権威に大して『こいつらは信用ならねぇ。絶対に信用しちゃ駄目だ』みたいな立場をとっていた人で、それが如実に出ているのが『父親たちの星条旗』と『硫黄島からの手紙』なんじゃないのかとは思うんだけれども

正直な話、このアンノウン・ソルジャーという映画は、映画としては「父親たちの星条旗を見ておけば事足りる」という感想しか出てこないくらいメッセージ的には同じだったんじゃないかと思う。

ただこの映画がユニークなのは、フィンランドは戦争に負けているという部分だ。

ご存知の通り我々日本も第二次大戦に負けてしまい、その後遺症で今の今までというか、恐らく未来永劫に渡って苦しむ事になるんじゃないのかという恐怖を抱えている部分がある。

我々の子供も、そのまた子供も、そのまた子供も『戦犯国』というとんでもない言葉で括られ、無用な罪悪感を埋め込まれていくのだろう。

そういう視点から見ると、イーストウッド映画に対して『勝ったくせに被害者ぶってんじゃねぇよ。贅沢言いやがって、気楽なもんだな』みたいな事を思わなくは無い。

現場の事を何も考えていない上官の命令で次々に死んでいく兵士たち。そして彼等は結局『負けた』のだ。彼等の犠牲は無駄に終わった。

フィンランドの国内では日本のように『何故こんな戦争を始めたんだ』みたいな話になっているのだろうか?

劇中の主人公の一人であるロッカは言う『ロシアに占領され、失った国土(家)のため、家族のために戦っている。てめぇらのために戦っていると思うな』

そんなロッカは仲間や家族にはとびきりに優しく、誰よりも勇敢であり、そして上官の命令には徹底的に反発する。まさに『イーストウッド映画に出てきそうな人物』だ。

同じ第二次大戦の敗戦国側からこういう作品が作られた、という事に、個人的には何処か得も言われぬ感慨を感じた映画だった。

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