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情景289.「自惚れと自省。それでも」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「自惚れと自省。それでも」です。

創作をする以上、こういう気持ちの揺らぎってあるんだと思う。
少なくとも、私はある。

司馬遼太郎御大のエッセイの中で、「作家は割符を書く」というくだりがあります。

小説を将棋の駒とすれば、書き手が作れるのは半分まで。
もう半分は読み手の方々が持っていて、それが一致することはごくまれで、書き手がどれだけ工夫を凝らして書こうと、出来は半分。
だから作家は常に不安でいるのだと。
「これ、あんたのだろう」と差し出された割符が巨細一致する奇跡にどれだけのひとが出会えるだろうか。そういうエッセイでした。

このエッセイが忘れられなくて、それを胸に常に留めておきたいと思って書いたのが今回の情景です。

少し話が逸れますが、
原稿を書いたとき、書き上げたとき。
皆さんどんな気分になりますか。

自分の場合、何かしら書き上げたときにながーく細い息が自然と出ます。
……スゥーーーー、みたいな。
そんな感じに息を吐きます。

ひとつのお話を書き上げた後に来る、静かな開放感みたいなものです。
クリアな気分になれて、視界が広がるような感じに浸れます。
わざとらしくソファに座って、あごを上げて鼻で深呼吸とかしちゃう。

この、後から来る静かな快感がですね、クセになるんですよ。
私はこの感覚を味わいたくて書いているのかもしれません。

そのときの穏やかで居られるひとときがとても好きなのです。

皆さんはいかがですか。

あと、これも私だけではないと思うんですが、原稿に集中しだすと、凝り固まった疲れがじゅわっと解れていくときがあります。
自然とほぐれて、こちらもクリアな感覚が掴めていくというか。

原稿が捗りだすとそれが起こります。
むしろ、それが起こるから捗りだすのかな?

ともあれ、この感じもなんとも気持ちがいいのです。

書き上げたときの次くらいに気持ちいい。
最初の5分くらいしか持続しませんが。

なお、行き詰った時の原稿ほど疲れが溜まるものはありません。

ともあれ、今日も一日、おつかれさまです。
もし朝にお見かけいただけたのなら、おはようございます。
よい一日を。

書き上げたひとの揺らぎを垣間見れる情景。
お楽しみください。

※※『あなたが見た情景』は、目の前の景色を眺めるように情景を思い描ける、ちょっとしたお話のあつまりです。※※

どこから読んでも大丈夫。
ぜひ、目次から好きな情景をえらんで読んでみてください。


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