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介護施設に犬がいる日常をつくる #2

こんにちは、サービス企画課の城野(じょーの)です。
久々に記事を更新します!!

あっという間に新年度ですね🌸
以前に書いた「介護施設に犬がいる日常をつくる #1」という記事。そこで紹介したドッグトレーナー(犬の訓練士🐕)3名が入職してから、ちょうど1年が経ちました。
ぴっちぴちで右も左もわからなかった彼女たちも、最近では少し大人な表情になってきたような気がしています・・・(親バカ)

今回から数回にわたって、各施設のドッグトレーナーと犬たちについて、一問一答のインタビュー形式で前回よりも詳しくご紹介していきたいと思います。
トップバッターは、ケアホーム千鳥の米川千晴さん。

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まさかの、「介護施設でアニマルセラピーをする」というのが、昔から憧れの職業だったという米川さん。夢を叶えた彼女のインタビューをお楽しみください✨


🐕🐕🐕🐕


―それではまず、自己紹介をどうぞ。

 はい!ケアホーム千鳥のドッグトレーナー、米川千晴です。
 東京・東村山市出身です。志村けんの地元なので、木があったり、だいじょうぶだ饅頭があったり、東村山音頭があったり。英才教育みたいなもので、志村けんがテレビに出てると見ちゃうっていうのあります(笑)
好きな食べ物は、チーズと苺。あと、明太子も好きです!

 あと好きなものは・・・ドラマです。俳優の田中圭さんが好き。中学生の頃から、ブレイクする前からハマっていました。顔が好きです(笑)
 それから、坂元裕二さんの脚本が好きで。『カルテット』とか、『mother』は見ながらずっと泣いてましたね。話のテンポや独特な間合いの感じが好きです。

ケアホーム千鳥は、大田区にある特別養護老人ホーム・ショートステイの機能を持った介護施設です。利用者さんの自立した生活を支援し、身体機能の回復、生きがいづくりのお手伝いをします。利用者さん、ご家族、地域など人と人とのつながりを大切に、笑顔に満ちた誠実で温かな施設づくりを目指しています。

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―「介護施設のドッグトレーナー」という職業を選んだ理由は?

 もともと小さい頃から、ペットショップの店員さんや飼育員さんとか、動物関係の仕事に就きたいと思っていました。それから中学生になって、職場体験で母の職場に行く機会があって。それが介護施設だったんですね。母が働いている姿を見て、人のお手伝いをしたりとか、人の役に立つ仕事をするのがいいなと思いました。
 動物関係の仕事だと、人とつながりが少ないじゃないですか。ない訳じゃないけど、基本は犬のため、動物のために仕事をするスタンス。そんな時に、テレビでアニマルセラピーをやっているところを見て、私がやりたいことが合体してるじゃん!と思い、興味を持ち始めました。
 高校から進路を決める時に、よく調べてみると、「アニマルセラピーをやる」ということが職業になっていないんだということを知りました。でも、どうしても活動をやってみたくて見つけたのが、動物のことも学びつつ介護や福祉、動物介在活動についても複合的に学ぶことができる中央動物専門学校でした。

 専門学校に進学して就職活動を始めたときは、最初はドッグトレーナーとして犬の幼稚園に就職することを考えていて面接なども受けていました。しかし良いタイミングで、ここの求人を進路担当だった先生が紹介してくれました。先生にはもともと「こういう所に就職したい」と自分の希望を話していたので、「米川さんにピッタリなんじゃないか」と。
他の面接は途中で断りました(笑)

 もともと仕事にしたかったけど、無理だろうな・・・と思っていたのが、奇跡的にタイミングがあって見つかったんです。自分にとっては理想の仕事です。普段表情が乏しい人でも犬がいるだけで笑顔になる、とかってやっぱりすごい力だと思うんですよ。人間じゃ引き出せないことをやってのける。そういうことが実現できてうれしいです。

(城野のつぶやき)昔からの憧れの職業に就けるなんて!すごい奇跡!誰でもできることじゃないですよね。私たちまで嬉しくなります😊

―では、今回活動を始めるにあたって、犬の選定はトレーナーさんと施設にお任せしました。なぜ、キャバリアを選んだのでしょうか?

 利用者さんが抱っこしやすい、車椅子から手を伸ばせば撫でられるぐらいの大きさの犬がいいなと。あと、あまり大人しい犬よりも、天真爛漫で動きがある犬のほうが利用者さんが見ていたり、一緒に遊ぶにも楽しいかなと思っていました。あと、キャバリア(正式には、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル)は、表情も豊かだったり、人とコミュニケーションとるのが好きな特性を持っているのでピッタリだなと。

―そして千鳥にやってきた「はる」。名前の由来は?

 春生まれだからです、シンプル(笑)千鳥の職員さんたちによる投票で決まりました。二位がちくわ、三位がレオでした。・・・ちくわでもないし、レオって顔じゃないですよね(笑)

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―彼の性格はどんな感じ?

 明るく、何事も全力に生きている感じがします。食べるときは食べる、寝るときは寝る!みたいな。自分一人で遊んでいるよりも、おもちゃを持ってあげて引っ張り合いしたりとかが好きで、利用者さんとも一緒に遊んでもらったりしています。
 あと、食べものを見ると顔が変わります。ふかしたお芋が好きです。ちょうど先日行ったはるの1歳の誕生日レクリエーションで、利用者さんにふかしたお芋を丸めてあげてもらったら、覚醒してしまったらしく・・・芋にしか目がいかないんですよ(笑)

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―米川さんの話に戻りますが。ちょうど入職して1年経ちましたね👏活動はどうですか?

 利用者さんと会う時に、はるがいるだけで歓迎してくださったり、「はるは私の生きがいよ」と言ってくださる方もいます。そう言われると、ちょっと嬉しいですね。
 最初はもちろん緊張しました。自分もはるも、どうしていいか何もわからない。何が正解かもわからなかったので。でも、この1年で利用者さんと会話したりコミュニケーションをとることは成長したと感じます。利用者さんとの関わりは楽しいです。はるが間に入ってくれることで、場が和むし、会話のきっかけにもなる。私と利用者さんが一対一だったらできないことも、はるがいることでできる。利用者さんが普段打ち明けられないようなことも、打ち明けてくれることがあるんです。ずっとユニットに居座ってしゃべってしまうぐらいのときもあります。
 廊下の端と端でも、はるの姿が見えると「はるくん、来たのねー!」と手を振って喜んで声をかけてくれる利用者さんもいますよ。

―印象に残っている利用者さんや出来事はありますか?

 ある時、体調が悪くなって点滴をしなくちゃいけない女性の利用者さんがいたんですけど。看護師さんが説得しても頑なに拒否していて。自分では元気だと思っているから、なんで点滴されるのか分かっておらず。しかも、ご自身で歩ける方だったので逃げてしまうような状況でした。
 もともとはるのことが好きな方だったので、はるを呼んでもいい?と声がかかりました。はるを連れていくと途端に顔がほころびました。少し落ち着いたところで、「今度、はるくんとお散歩にいきましょうよ。一緒にいきたいんだったら、元気にならないと。点滴しないとだめですよ」とお話ししました。そして、そのままはるを抱っこしてもらったままで、点滴をうけていただきました。
 言葉では説得できなかったのに、はるが入ることで点滴をうけてもらうことができました。

(城野のつぶやき)これぞ本当のセラピーの形ですね。犬のもつチカラを思い知らされます😭😂

 あと、コワモテの利用者さんが一人いるんですけどね。
はるを前にすると、にこやかな笑顔で「お手」とか「待て」とか言ってくれるんです。この方の普段の姿を見ている介護職員さんたちからすると、「えっ」って感じで驚かれています(笑)普段は部屋から出てこなかったり、レクリエーションにも全然参加してくれない。でも、はるがいるとニコニコしながら、座り込んで触ってくれるんです。はるのためなら、レクも参加してくれるんですよ!さきほど話した誕生日レクでも、お芋をつぶして細かく裏ごししてくれました(笑)

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 男性は特に顕著に表情に出るかもしれないです。
 例えば、寝たきりの男性の方がいるんですけど。私がお部屋へ行くとはるが一緒に来ることもわかっているので、ニヤッと笑ってくれるんですよ。「はるも来たよ」というと「ムフフフ」って笑ってくれる。ベッドの脇ではるを抱えて、いつも嬉しそうにしてくれます。はるの成長も一緒に見守ってくれていて、それも楽しいみたいです。

 すぐ忘れちゃう方もいるんですけど、何回もはるに会っているとだんだん覚えてくれたりします。犬好きの方だと誕生日も覚えてくれていたり(笑)認知症が進行していて、わりとすぐに忘れてしまう方でも「はるくんは3月生まれよね」って言ってくれたりするんです。はるのことは好きだから覚えてる、みたいな。アイドルですよね。

―逆に、難しかったことはありますか?

 専門学校では、家庭犬のしつけを主に学んできたので、介護施設で犬を飼うにはどうしたらいいか、ということを考えるのが難しかったです。どういうことを気をつけなきゃいけないのかとか、利用者さんに対して、職員さんに対しても、気を配る必要があって。家庭犬だったら一つの家で住むのが当然だけど、介護施設だとユニット=複数の家があるようなイメージだし。
 しつけも、かわいがるだけじゃだめで、気を付けることが多くあります。職員さんにもそれを伝えるのが難しかったです。例えば、家庭犬だったら「甘噛みするのがかわいい」と思われたりしますが、セラピーを行うにあたっては絶対に噛んではだめ。利用者さんが手を出したときに噛んでいいんだ!と思わせてはいけないので。セラピー犬だから、こういうことをすると、こういう事故につながってしまう、と周知するのも難しかったですね。かわいいから・・・わかるんですけどね(笑)
 最初は、介護施設という場所の特性や職員さんの雰囲気なども、まだあまり理解できていない状況の中でもあったので、何がだめなのか洗い出す作業は結構難しかったですね。

―1年経った今、ケアホーム千鳥にとって、はるはどんな存在になっていると思いますか?

 先ほど言ったとおり、利用者さんにとって生きがいになったりとか、あとは今外に出る機会がなかなかないので、ちょっとした刺激にもなっているのかなと思ったりします。はるが遊んでもらっている側なのに、利用者さん自身すごく楽しそうにしてくれて・・・いいなと思います。
 職員さんにとっても、仕事場に犬がいるってちょっと癒しになってるのかなって。仕事帰りに触ったり声をかけてくれるんですけど、それこそ私が職員さんと話すきっかけになったりもしていて。はるがいなかったら、なかなか普段話す機会のない職種の方もいるんですけど。医務の方とか。でも、はるが好きな方だと話すことができて仲良くなれました。

―これから米川さんがやってみたいこと、チャレンジしたいことはありますか?

 今コロナでなかなか難しいけど、グループ内の他の病院や施設にも行ってみたいなと思います。私自身も会話のスキルが上達したので、初めての患者さんや利用者さんでも話せるようになっていると思います。病院や施設で生活をしていると、犬に会う機会ってなくなってしまうと思うので、色んな方にそういう機会を提供したいです。


 あとは、この施設内で言えば、利用者さんのリハビリに犬を取り入れられたらいいかなと思っています。利用者さんがはると遊ぶことで、結果的にリハビリしているような状態になっている・・・というような。
 はるをきっかけにしたレクの種類も増やしていきたいです。利用者さんは何をしているわけでもなく、犬を見ているだけで楽しいと思ってくれるんですよね。なので、夏だったらはるをプールに入れながら、利用者さんにも足を入れてもらって一緒に涼む、とか。シャワーかけてもらったりして(笑)

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以上、米川さん、インタビューへの協力ありがとうございました!


ケアホーム千鳥には、写真や動画撮影が大好きなリハ助手Tさんがいらっしゃり、今回の写真もTさんが撮影してくれたものばかり(ありがとうございました!)なのですが、ここに映る利用者さんの笑顔が、犬の持つすごいチカラを物語っているような気がします。

そして、これが最後の写真。
この方も、普段は険しい顔をされていることが多く、こんな笑顔を見せてくれるなんて・・・!と介護職員さんもびっくりなのだそう。
米川さん、はる、これからも頑張ってね‼

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