家を買いたい話
【マンションを購入したいという気持ちを整理しているだけの雑文】
今、なにが欲しいですか?
と訊かれたら、なんと答えるだろうか。
私なら即答する。
「家が欲しい」
もちろん、住む家なら今もある。
家を買いたい、という話である。
就職して実家を出て一人暮らしを始めて、随分長くなった。実は実家を出て以来、ずっと同じ賃貸に住み続けている。
いま住んでいる地区が気に入っているから、という理由もあるのだが、最大の理由は「全国転勤の可能性があったから」であった。仮に自分の都合で引っ越しをしたとして、その直後に地方転勤など命じられようものなら目も当てられない。
これまでの社会人人生で転勤がまったく無いわけではなかったのだが、幸か不幸か、頑張れば通える範囲での勤務ばかりだった。そこそこの遠距離通勤をしていた時期もあるのだが、特に苦も無く通っていた。引っ越せば良いのに、と呆れまじりのアドバイスを頂いたことは一度や二度ではなかったものの、当時の私にとっては、この地区から離れることのほうがデメリットであった。
そして一度遠距離通勤を経験してしまうと、もう引っ越す理由が無くなってしまう。あそこまで通えたのだから、この程度なら当然通えるだろう――と。
住み続けているうち、家のほうにガタがきた。水道の水漏れを修理したり、備え付けのエアコンを交換してもらったり、それでものほほんと住み続けてきた。もともと古い物件なので致し方ない。もっと良い家に住みたい、という気持ちはあったが、地方転勤になったらどうしよう、という恐れが拭えなかった。
が、状況が一変した。
転職したのである。
その結果、全国転勤がなくなった。
毎年頭から離れなかった不安がなくなった、と思った。年度末には必ず掠めていた不安。来年の自分はどこに勤めていて、どこに住んでいるのだろう――。
どこに住んでも良いんだ、と思った。
ならば、住む場所を決めても良いではないか。
以来、ネットで定期的に物件情報を眺めるようになった。
私は独身である。そして、結婚は希望していない。自分一人で住める、便利で快適な家が欲しい。広さは求めないが、立地の利便性は譲れない。
賃貸でも悪くはないのだが、家のグレードを上げると家賃が上がるのがネックだった。加えて、老後は住まいを借りづらくなるとも聞く。
まずは一度、真剣に購入を考えてみようと思った。熟考した結果、賃貸のほうに分があると思えば、そのとき改めて検討したら良い。
まずは予算を決めねば動けまい。
が、自分で考えたところで金額の妥当性に自信が持てなかったので、思い切ってファイナンシャルプランナーさんに相談してみることにした。資産状況を開示して伺ったところ、だいたいの金額を提示していただけたのでありがたかった。ついでに資産運用のアドバイスも頂けて一石二鳥である。
仮の予算をもとにして、情報を物色する。
住みたいエリアがあったのだが、ファミリー向けの物件が多く、どうやら諦めたほうが良さそうだった。予算の問題ではなく、そもそも単身者向けの分譲物件が無いのである。
エリアを変えれば、それなりに選択肢がありそうだ。
不動産屋さんにも相談してみることにした。
かくかくしかじかと現状を話して、自分の考えていた方針に無理が無いことを確認した。
予算と方針が概ね固まった。
あとは時間である。
まずは最低半年待ちましょう――というのが、不動産屋さんからのアドバイスだった。それは完全に同意であった。
転職したばかりであるため、さすがに収入が安定していない。だからしばらくは、真面目に働くことが第一だ。
けれど考えようによっては、これはメリットである。要するに、購入を急いではいないのだ。目先の物件情報に踊らされることはないし、自分の理想とする条件についてゆっくり考えることもできる。
こつこつと働いて、慎ましやかに過ごそう。
漫然と続けてきた貯金も、目標があれば頑張れる。
先日思いきってそこそこ高い服を買ってしまったのだが、まあそれは、日々の潤いのうちである。
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