村上春樹(著)『ノルウェイの森』を35年ぶりに読んでみた
村上春樹の著書は、最近作の『騎士団長殺し』まで、ほぼ発売日に購入して読んでいたが、読む時間を消費しただけで、読み直したのは、この『ノルウェイの森』が初めてだった。引っ越しを繰り返しているうちに、この綺麗な装丁本を失ってしまい、kindle版を購入して読むことにした。
第一章で、主人公が、飛行機に乗っていて、ハンブルク空港に着陸するシーンは、かすかに、覚えていたが、その他のストーリーは、全て忘れていて、新たに読むに等しかった。
主な登場人物
ワタナベトオル:主人公
直子 :ヒロイン
キズキ :主人公の高校時代の友人であり、直子の恋人
高校時代に自殺した。
永沢 :主人公の大学の寮時の友人。秀才であり、外
交官試験をいとも簡単に合格した。
ハツミ :永沢の恋人。永沢が外交官となり、ドイツに
赴任したので、別れる羽目となる。その後、
他の人と結婚するが、永沢の赴任してから5
年後に自殺する。このことから永沢がどんな
性格かは、想定できるはずです。
緑 :主人公と同じ大学の女性であり、恋人となる。
レイコ :直子は精神診療所で療養している時の、同室
で過ごしている友人。直子より17歳年上。
突撃隊 :主人公の寮の同室の人。
村上春樹をほぼ読んだとはいえ、初期三部作といわれる、『風の歌を聴け』、『1973年のピンボール』、『羊をめぐる冒険』を読んだという記憶すらなかったので、読むことにしたが、心躍ることはなかった。ところが、『ノルウェーの森』は、まるで韓国ドラマを観るように、イキイキとしたものを感じた。
あらすじ
・キズキの自殺後に、直子は、精神のバランスを崩したので、それを支えるために、ワタナベ君は、直子と親しくなった。
・直子はワタナベ君と共に大学に入学するが、その後精神状態がひどくなってきたため、ワタナベ君に黙って、精神療養所に入所した。そこにレイコがいた。
・ワタナベ君は、何度も、直子の実家に手紙を出したことで、
ようやく療養所の場所を知ることになり、2回ほど、訪問した。
・ワタナベ君は療養所に訪問中は、突撃隊、永沢、ハツミ、緑達との出来事を、面白しろ可笑しく、直子に話した。特に、突撃隊のことは、笑いころげていたので、ワタナベ君は安堵した。
・二回目の訪問後、直子に手紙を書いても、長い期間、返事がなく、ようやくレイコから手紙が届いたが、それは、直子が自殺したという知らせの手紙だった。
【感想】
・ヒロインの直子含め、直子の姉、キズキ、ハツミと何人も自殺するが、その描き方が唐突すぎる感がある。精神的な悩みを抱えていたということで、すべて説明できということで、細かいプロットは省いたように感じた。
・他の感想文を覗くと、「『緑』ばかりが生き生きとしていて、その他は死んでいる小説でした。まあ、キュンキュンしましたよ。それなりに」と書いていたが、私はむしろ、17歳年上のレイコに対する思い入れが強いように感じた。
・ワタナベ君とレイコの最後のラブシーンについて、同様の感想文には、「ハルキは、憧れていた肉親の若い叔母様との妄想でも書いたのか?」と語っていたが、そういうことだろうと思う。
・永沢は、秀才ではあるが、親は医者なので、いわゆる、ええとこのボンボンのため、遊び人であり、ワタナベ君を、その遊びに誘うと、彼は、躊躇もせず、その誘いにのるという軽さだ。
・そのことを、ワタナベ君はハツミに攻められた。直子、緑という恋人がいるにも関わらず、見知らぬ人とセックスするなんて、性的な倫理観はどうなっているの?ということだ。
・ハツミは、ワタナベ君を攻めると同時に、永沢も攻めたいが、彼には、「柳に風」とばかりに、かわされてしまうので、せめて、その鬱憤を、ワタナベ君に向けたのだろう。
・それでも、ワタナベ君も、最後には、直子を選ぶか、緑を選ぶかで、かなり深刻に悩むことになる。その悩みをレイコに打ち明けるという救いを求める。ワタナベ君にとっては、レイコは巫女のように感じるのだろう。
・レイコも、ワタナベ君が療養所に訪問中に、直子を置いて、二人だけで、室外で話していたが、レイコは、何故この療養所にくることになったのかと説明したことで、二入の中は親密になっていた。ここで、私は、二人は、セックスするようになるだろうと予想をした。
・直子の死後、レイコも療養所を離れることを決心して、旭川の友人のところに向かう途中、ワタナベ君に電話して、ワタナベ君宅に泊まることになった。こうした展開になれば、これは、私の予想通りとなるのかなと思ったが、その通りとなった。春樹はエライ、私(皆?)の予想を裏切らなかった。春樹はエロ小説家を遥かに超えた力量をもっている。
・緑とのセックスシーンはあるが、寸止め状態であり、このことで、直子に対して、操を守ったとする、描き方にはオイオイとツッコミをいれた。
・学生紛争のことについては、過激派が教室に乗り込んできた程度に軽く触れていたので、この頃の春樹は、学生紛争を含めて社会を、描くことを避けていたことは如実に分かる。
・『ワンダーランド』でオウム真理教のことを描いたあたりから、デタッチメントからコミットメントへと徐々に変わっていくが、まだ不完全だと宇野常寛氏は述べていた。宇野常寛氏が、noteで村上春樹論を定期的に、投稿しているために、村上春樹の著書を読む気持ちとなった。
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