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シミッチの作り出す「違い」:天皇杯ラウンド16 川崎フロンターレ対清水エスパルス戦(8.21)

 昨日は天皇杯ラウンド16、清水エスパルス対川崎フロンターレを観戦にIAIスタジアムへ。昨今の情勢下、どうしようか迷ったのですが、シェアパーキングで予約した駐車場まで車で往復、高速でもSA・PAには寄らない。食事・飲料は持参、現地ではコンビニにも寄らない、スタグルも買わない、と言う形で行ってきました。

 IAIスタジアムは初めて。バックスタンド15列目前後の席でしたが、非常に見やすいスタジアムで感動しました。

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 前半は小雨がぱらつきましたが、バックスタンドの屋根の下だったのでぬれずに済みました。メインスタンドには屋根がないのにバックスタンドに屋根があるというのは珍しいと思いますが・・・。


ロティーナの4-4-2は美しい

 スタメンは以下の通り。この日はシミッチがベンチで谷口がスタメンのアンカー。ただし谷口は負傷のため前半23分で代わってしまい、以後はアンカー橘田、右インサイドハーフ脇坂、左インサイドハーフ小塚となる。
 エスパルスはロティーナ監督の基本形の美しい4-4-2。

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 かみ合わせるとこんな感じ。

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 実際にはサイドハーフはあまり開かない。そして最終ラインを非常に高く保つ。ラインコントロールについてキーパーからの指示がよく聞こえた試合だった。

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フィールド写真で見るとこんな感じ。

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サイドからのブロック崩し

 ブロックが非常に堅いので、フロンターレとしてはサイドからの攻撃が中心になった。

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 併せて、小林悠が裏抜けをちらつかせて最終ラインと駆け引き。タイミングを見て少し落ちてゼロトップポジションでボールを受けてポストプレー。

 ポストプレーはフィジカルの強さだけでなく、そこに至るまでの駆け引きやパスの出し手との呼吸が重要なのがよくわかるプレーぶりだった。

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 ただし前半は今ひとつ決定的に崩すには至らない。0-0で折り返し。押し込んではいても、エスパルスのブロックは崩れずにリトリートして守っているので、シュートは打ててもコースが絞られている状態。守備組織が機能している状態でのシュートと言うこともあり、エスパルスのキーパー、永井の好守に再三阻まれることとなった。

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小塚のポジションの取り方が気になる・・・・

 いくつか理由があるが、1つは左ウイングの宮城天が裏に抜ける動きが少なかったこと。これは後半に代わった長谷川竜也の裏抜けが有効だったことと対称的だった。

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 もうひとつは小塚和季のポジショニング。自分は田中碧の穴を埋めるのは小塚だと思っているのだが、低いポジションを取りがちというプレー上のクセが気になる。

 アンカーが本職のシミッチではなく、先発が谷口、さらに橘田に代わったこともあってか、小塚は橘田に近いポジションまで降りてフォローしようとすることが多かった。

 ところが、小塚が降りてしまうと、せっかく左サイドで旗手・宮城が前進しても、内側に小塚がいない。旗手がサイドハーフを引きつけて宮城にパスを出し、ハーフスペースに一瞬スペースができたときなんかに小塚がいない!!と言うことがあり、崩すチャンスを逃したことがあった。このあたり、もっと我慢して高いポジショニングを維持することが必要なのではないか、と思ったところ。

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質の高い脇坂の動きから先制

 そんな中でも脇坂泰斗を中心に後半12分に先制ゴール。脇坂がシュートをちらつかせながらディフェンダーを集めつつボールをさばき、山根の縦パスを小林がここでもディフェンダーを集めながらフリック、裏に走りこんだ脇坂がボールを受けようとしたところにエスパルスの立田悠悟がファールでPK、と言う形だった。脇坂の動きの質の高さが際立つ一連のプレーだった。以下が連続写真。

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以下の二枚は小林悠のPK。

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存在感のあった指宿洋史

 エスパルスの攻撃で目を引いたのは指宿洋史のポストプレー。2トップの一角だが、攻撃時はやや下がり目のポジションでボールのターゲットとなる。そこでボールを収めて上手く時間を作っていた。

 守備時の献身もあり、存在感のあるプレーぶりだった。

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 単にポストプレーでボールを収めるだけでなく、指宿が中央でマークを集めて、ボールは頭を越えて逆サイドに展開、と言う形もあった。ゴール前なのでビルドアップ時のサイドチェンジとは意味が違うが、後半の同点ゴールは指宿の頭を越えたボールを押し込んだものだ。

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シミッチの作り出す「違い」

 後半24分、フロンターレは3枚替えで長谷川、ダミアン、シミッチを一気に投入する。ここでフロンターレの攻撃の質が変わった。

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 まず長谷川が再三裏抜けを試み、実際にパスも受けて最終ラインを押し下げていく。そしてシミッチはさすがで、プレッシャーを受けながらも安定的にボールをさばける。

 なので両インサイドハーフのポジションも高くなり、単に押し込むだけでなく、ディフェンスを崩せる回数が増えてきた。それが実を結んだのが後半29分の勝ち越しゴールで、まず長谷川が左サイドで押し込んでシミッチにパス。シミッチは右サイドに振って山根へ。そしてもう一度シミッチに戻して左サイドに大きな展開。旗手が縦にえぐって長めのクロスを放り込み、ダミアンが決めたものだ。以下が連続写真。

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見ていて面白い試合だった

 素晴らしいスタジアムだったと言うこともあり、見ていて面白い試合だった。トーナメントならでは、終盤はエスパルスもリスクをかけて攻撃に出てきてスリリングなシーンもあった。フロンターレから言えば、リーグ戦のレイソル戦で攻めていたのに取り切れず、ちょっと悪いイメージも浮かびかねないところでの90分での勝利と言うこと。ただ、シミッチの重要性が改めて明らかになった試合でもあった。

 エスパルスは、ロティーナ色がはっきりと出ているのがわかる。去年よりもやりたいことがはっきりと見える。お世辞抜きにこれからの成長、成熟に関心が向くチームだった。