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ミスの代償:ラグビー大学選手権準々決勝 早稲田大学対明治大学(12月26日)

 今日は秩父宮でラグビー大学選手権準々決勝、早稲田大学対明治大学を観戦。

 3週間前、対抗戦でも当たったばっかりでの再戦となる。早稲田と明治は1月2日の準決勝での再戦というパターンもあるが、今年は帝京が優勝し、早明が2位、3位となったこともあり、抽選のアヤで、年越しを待たずに再戦となった。 

 12月5日の早明戦では早稲田が17-7で勝利。大学選手権と定期戦の連勝というのは歴史的に見ても簡単ではないところでの再戦となった。


アタックコンセプトがはっきりしていた両チーム



 最終スコアは20-15(前半8-15)で明治が勝利。やはり定期戦と1勝1敗と言う形になった。

 明治はバックスで大きくボールを動かし、反対側のエッジまで運んでクラッシュ。折り返しの位置のポッドに素早くフォワードがついてゲインを図るいつもの攻撃パターン。



 ただ、早稲田もそれがわかっているのでフォワードが素早くディフェンスについて、前半最初のトライ以外は大きなゲインはほとんど許さなかった。

 しかし、前半最初のトライはエッジでのゲインと、折り返してのフォワードのゲインが2つ続いたことで早稲田のディフェンスが間に合わなくなったことによるトライで、明治のアタックが見事に機能した結果だ。ただし早稲田のディフェンスはその後修正。明治としては、地上戦でのゲインが取れなくなり、スクラムの優位を使ってペナルティから前進、フォワード戦で勝負という形を取るしかなかった。「しかなかった」とはいうもののそれは明治の得意な形でもある。

 一方早稲田は、いつものダブルラインを使った攻撃。ただ今日は、リスクを取ってバックドアではなく、スペースのないフロントドアにギリギリのパスを通して攻めていく攻撃が目を引いた。そこで伊藤大祐のランを織り交ぜてゲインしていくと言う形。また、プロップの小林をエッジに立たせて、明治の石田とのミスマッチを突いていく攻撃も多用した。後半2本目の早稲田の逆転トライは、小林の突破を2回続けて奪ったもの。

 このように、両軍とも攻め方が明確だった。その中で20-15の接戦の結果、明治の勝利。勝敗のポイントを3つ挙げてみたい。

ポイント1:スクラム優位を生かした明治

 定期戦の早明戦では、明治がスクラムで圧倒した。にもかかわらず早稲田が勝利した珍しい試合ではあったが、スクラムをどの程度立て直せるかが早稲田にとっての鍵だった。

 前半は早稲田も健闘。

 明治側のアーリーエンゲージなどもあったが、後半になると明治が優位に。逆転のトライはスクラムでの圧倒が起点となっていたから、この日の明治はスクラム優位を十分に生かすことができていた。

 ただ、レフェリーのコントロールが今ひとつだったか。組み直しが非常に多く、特に後半はアクチュアルプレータイムが相当短くなっていた。

(故意でなくスクラムがホイールしたら相手ボールになると言うルールを記憶していたが、そのルールはいつの間にかなくなっていたのだろうか。ホイールしたらボールサイドを変えずにアゲインになっていた)

ポイント2:重要な場面での早稲田のミス

 定期戦の早明戦は、ノットストレートやマイボールスクラムでのボールロスト、ラッチングの反則など、明治がミスで得点機をみすみす逃したのが目についた。
 今日は対照的に、早稲田がミスでトライチャンスを逃した。後半中盤での、伊藤大祐のランでのブレイクからのトライチャンスでの宮尾のノックオン、逆転されたあとの吉村紘のペナルティからのタッチキックのミス、そこからボールを奪って攻撃し、やはりブレイクしたところからのノックオン。

 ビッグゲームでのこうしたミスは致命的だ。全般的に、ディフェンスもアタックもかなり機能していて、優位に試合を運べていただけに早稲田としては惜しまれる。まあ、12月5日の早明戦は明治がミスを連発していただけに、帳尻が合ったと言えばそういうことではあるのだが。
 また、定期戦での早明戦では、明治に攻め込まれてもペナルティを犯さずに守れていたが、今日はいくつかのペナルティを犯し、特に後半の終盤はアドバンテージの下で明治は優位に攻撃を進めることができた。このあたり、ディシプリンについての意識と実践を継続できないところが学生ラグビーというところか。

ポイント3:風向き

 今日は風が強かった。スタンドもかなり寒かった。風向きは神宮球場側から伊藤忠側へ。
 そして今日の試合の勝敗に大きな意味を持ったのが風向きなのではないかと思う。この日のトライは合計で5(明治3、早稲田2)。そのうち4本が風上のチームのものだった。風下のチームが取ったのは試合開始早々の明治のトライだけ。今日の席は伊藤忠側だったのでトライが何本も見られたのは良かったけれど。

 風上の場合キックを使うのが基本。前半風上だった早稲田はテリトリーキックを積極的に使い、明治にタッチキックを蹴らせ、しかも風下なのであまり有効に陣地を挽回させない形でのラインアウトに持ち込んだ。

 一方の明治は、風上に立った後半でも、テリトリーキックはほとんど使わない。しかし、スクラムの優位を生かしてペナルティを取り、タッチキックで前進という攻め方が有効に機能した。後半の明治の攻勢はほとんどがペナルティが起点だ。

 早稲田は、前述した宮尾のノックオンがなければ、後半に点差を広げて優位に試合を運び、おそらく勝利できたであろうから、風向きがすべてだったわけではない。しかし、トライの8割が風上のチームだったことも考えると、やはり風が勝負のアヤとなったと言うことはできる。


 スタンドで、レビューの書きにくい試合と感じながら観戦していた。けれど、こうして文章にして自分の印象を整理してみると、ミスが勝敗を分けた試合と言う形で考えがまとまった。12月5日は決定的なミスの多かった明治が敗れ、12月26日はやはり決定的なミスの多かった早稲田が敗れた。その意味では勝利の女神は早明両者に、正当な報酬を与えたと言っていいのだろう。ノーミスのギリギリのせめぎ合いを見てみたいものだが・・・・。