26点差は付いたが・・・・:ラグビー大学選手権準決勝 明治対天理<1>
1月2日のラグビー大学選手権準決勝第2試合、明治大学対天理大学。自分自身を含め、関東のラグビーファンは関西のラグビーにあまり詳しくないこともあり、明治が優勢だろう、と漠然と思っていたし、一般的な戦前の評価だったと思う。しかし結果は41-15という大差での天理の勝利だった。
ボールを素早く動かす天理に対して、明治は後手を踏んだ。看板のスクラムでも劣勢に立たされた。先制を許し、一度は追いついたもののそれから立て続けにトライを奪われ、最後の攻勢も実らず気づけば26点差。明治から見ればそんな試合だった。
スクラムでの天理の優勢
やはりこの試合で印象的だったのは明治がスクラムで圧倒されたことだ。
最初のスクラムこそペナルティを取れたが、その後はペナルティを取られたり押し込まれたり。JSPORTSの録画中継を注意深く聞いていると、2回目以降のスクラムで、明治のプロップが頻繁にレフェリーから注意されているのがわかる。
例えばこの写真のように押し方を細かくチェックされていることもあった。
早明戦の時のスクラムでは、明治のプロップはレフェリーの反対側にいるときに斜めに押してスクラムを潰そうとしていた。
早明戦では早稲田のコラプシングを取られていたが、今日はこの点をレフェリーが細かくチェックしたということだろう。
また、中継音声で「ここで潰れないで耐えなきゃだめ」という意味のレフェリーの指示が入っている。そういったことから、いろいろなことを気にしなければならなくなり、明治のプロップは普段の組み方ができなくなっていた可能性が高い。実際、天理がスクラムで押すようになったのはこの指示の後だ。
明治のスクラムが修正されるのはプロップが交代した後のことだから、このレフェリーの指示の段階で、先発のプロップは思い切って押せなくなっていたのではないか。ただ、レフェリーが見ていようが見ていまいがスクラムはまっすぐ押すのがルール。この点については「レフェリングのクセ」と言うより、普段からの意識付けの問題だと考える。
頻発したラインオフサイド
もう一つ、明治の規律に関連して発生した問題が、頻発したラインオフサイドだ。天理がゲインしてラックを形成し、オフサイドラインができたときに、きちんと戻らずにディフェンスに入る明治のプレイヤーが散見され、オフサイドを取られた。
JSPORTSで解説していた村上さんが「レイジー・プレイヤー(怠け者のプレイヤー)」と言っていたが、実はこれ、昔からの明治の悪癖で(1990年代の赤塚組の時なんかは本当にひどかった)、素早いテンポでラックが繰り返し作られるときに頻発する。レフェリーが見逃すことも多いのだが、この試合ではこの点もきちんとレフェリングしたということだ。
実は同数だった得点機会(敵陣22mラインへの進入回数)
ここからはいつものようにお互いの攻撃機会(敵陣22mラインに入った回数)を見てみよう。時間表記は22mラインを突破した時間。
(天理)
0分:トライ
27分:トライ
33分:トライ
43分:トライ
47分:トライ
57分:危険なプレーによるペナルティでボールロスト
72分:トライ
(明治)
8分:ノット・リリース・ザ・ボールでボールロスト
10分:ノックオンからターンオーバー
23分:トライ
52分:トライ
55分:トライ
75分:スローフォワードでボールロスト(天理ボールスクラム)
78分:ノックオンからターンオーバー
こうしてみると、天理も明治も22mラインを突破した回数は同じであることに気づく。26点差が付くほど得点機会に差があったわけではないということだ。
一方、明治のハンドリングエラー3回が目に付く。これをきちんと得点にできていれば、あと15点から21点取れていたわけで、ゲーム展開そのものが変わってくる。
頻発したラインオフサイドに関する規律同様、これもやや集中力が欠けていたのではないかとさえも思えるミスといわざるを得ない。もしかしたら、明治の選手たちは次の早稲田戦に関心が向かいすぎていたのだろうか。だとすれば、第二試合であるが故の「勝負の綾」と言うことなのかもしれない。
蹴らない天理
次に、これもいつものようにキックの結果を評価してみる。
(天理)
再確保:0
前進:3
後退:0
フェアキャッチ:0
(明治)
再確保:0
前進:4
後退:1
フェアキャッチ:0
両チームとも、キックが少ない。特に天理はわずか3回で、今シーズンカウントしたチームの中で最も少ない。このあたりは関東と関西のラグビーの違いだろうか。
また、明治も後半はキックを使っていない。追う展開になったのでキックを使わなくなったということだろうか。このあたりは、早稲田との決勝戦では異なる展開になることが予想される。
次回は天理の攻撃について細かく見てみる。