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「最後の10m」を崩す力の差:関東大学ラグビー早慶戦(11月23日)

 関東のラグビーファンにとって、11月23日と12月第1日曜は特別な日。特に早稲田の卒業生であれば、この2日間は午後に予定は入れない。子供の頃から早稲田の卒業生の父親に手を引かれてラグビーを秩父宮や国立で見てきて、自分自身も卒業生である私もそうだ。

 というわけで今年の早慶戦も観戦。チケット発売が早稲田対筑波の日で、試合見ながらチケット買わなければならなかったのだが・・・・。

 珍しくプレビュー書いたけれど、一応速報マッチレビュー(日付が変わってしまったけれど)。

慶応のディフェンスと早稲田の対抗策

 慶応は、状況を見ながらではあるがやはりシャロー気味のディフェンスを仕掛けてきた。特に、スタンドオフからのファーストレシーバー(一般的には12番の立ち位置)に対して思い切った低いタックルを敢行し、ボールの展開を阻止した。何回か仰向けに倒されそうになり、観客がどよめいた。

 しかしそれに対し、早稲田は近傍のサポートプレイヤーが素早く体を寄せ、ボールを確保する。
 これは後半の写真だが、足元にダブルタックルを受けてひっくり返されそうになった4番に対するサポートプレイヤーの動きがよくわかる。

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 こうすれば早稲田はターンオーバーは阻止できるが、その代わりに持ち前のテンポのいい攻撃はできなくなる。慶応としてはそれだけでゲームプランの一定の成功といえるだろう。

吉村紘の素晴らしいプレー

 この慶応のディフェンスに対し、早稲田スタンドオフ吉村紘は上手くランを織り交ぜて対応した。

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 特に上の3枚の写真の突破だが、ファーストレシーバーに対して浅く突っ込んでくるのを逆用し、自分のランで突っ込んできた裏のスペースを突いた。

 予想以上に突破できてしまったためにサポートが間に合わずにノット・リリース・ザ・ボールでボールを失ってしまったが、慶応のタックルの出足を牽制するには十分だった。実際、タックルの低さと迫力は相変わらずだが、慶応のプレッシャーはそのあと少し甘くなった。

 今日の吉村も出来は素晴らしかった。

 勝負所での狭い間合いでの接近パス、上記のランだけでなく最初のトライを取ったランもあったし、難しいところからのコンバージョン2本が大きかった。

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 慶応のキック攻撃を察知してスペースを埋めてボールを処理したプレーも見事だった。

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これもキックに素早く戻ってキャリーバックしたもの。

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慶応の巧妙なテリトリーキック

 慶応は、明治戦同様にテリトリーキックを効果的に使ってきた。ちゃんとカウントしてみるつもりだが、キックによってプレーエリアを前進させることにほとんど成功している。

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 一方、フェアキャッチも1回されているなど、早稲田のキックは時として長すぎた(慶応も一回フェアキャッチされているが、それは低い弾道の難しいキックだったので処理した早稲田を褒めるべきだろう)。

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 プレビューでも書いたアンストラクチャーからの吉村のキックも、この試合においてはほとんど見られず、早稲田としてはキックを効果的に使うことはできなかった。


最後の10mを取り切る力

 結局、試合の結果を分けたのは、最後の10mを攻めきれる力の違いだったと思う。慶応は、筑波戦でも、明治戦でも、攻め込んでいるのに攻めきれなかったケースが多く見られた。フォワードの突進を繰り返すだけで、モール以外の得点オプションがない。

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相手が先に反則してくれればいいが、そうでなければいずれ攻撃が頓挫する。

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 慶明戦の時も、まさに決定的な瞬間で明治が反則したので得点を取れたが、モール以外では相手ディフェンスを崩すことはできなかった。この試合もトライはモールによる1本だけだ。


 一方、早稲田は、縦に攻めつつ横のスペースを使うことで、必ずしも余っていないときでもトライを取りきることができる。前半21分の吉村紘の逆転トライも3対3からトライに持ち込んだもの。

 前半の2本目の河瀬のパスからのトライも外のスペースで勝負したものだし、後半の河瀬自身のトライも3対3で勝負して取りきったものだ。

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 テリトリーキックを効果的に使えて前進はできても、キックだけでトライは取れない。これからの慶応の課題は、トライを取りきる攻撃パターンを整備することだろう。それは来年かな。

その他

○ 早稲田は何回かダブルラインを仕掛けた。下の写真などは実に見事で、2番がおとりとなって10番吉村にスペースを作っている。

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 だが、2回ほどハンドリングエラーも起こってしまった。ただ、その2回とも慶応はボール奪取できなかった。

 このことは、慶応ディフェンスのノミネートが混乱させられ、転がったボールを抑えられる位置にディフェンダーがいなかったことを意味している。そして、そのときの攻撃は結局トライにつながっているので、やはり「タックルが届かないところでボールと人を動かされた場合」のディフェンスというのが慶応の課題なのだと思う。

○ やはりペナルティゴールの3点を軽く見てはいけないと思う。早稲田は最後のペナルティの時なぜスクラムを選択したのか。PGを狙っていれば25-11で2トライ差になった。完全に安全に試合を終わらせることができたのに。ボーナスポイント制があるならば、あの時点で3トライだからトライを狙う意味はあると思うが、今シーズンはボーナスポイントなしに決まっているわけだから。


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