フロンターレを上回ったボール奪取の「質」:川崎フロンターレ対湘南ベルマーレ(9月26日)<2>
レビューが全く追いついてない。写真の整理も追いついてない。今日は9月26日の川崎フロンターレ対湘南ベルマーレ戦の「いまさらマッチレビュー」。
1回目は両方のフォーメーションについて書いた。この時のフロンターレのフォーメーションについては諸説あるのだが、ベースは4-1-2-3で、中盤3枚のポジショニングを流動的にした、というのが私の見解。
今日はボール奪取マップからこの試合を振り返る。特にベルマーレのディフェンスが良く機能した試合だったので、ボール奪取マップは見ておきたかった。
ここでいうボール奪取は、文字通り相手からのボールを奪うこと。ただし、そのままタッチに蹴り出したり、アバウトなクリアは対象とはしない。キーパーがペナルティエリア内でボールを処理した場合も含まない。青字はボール奪取がシュートにつながったもの。その下にカッコ付で表示されている数字はシュートまでのパスの数。赤字は得点に至ったボール奪取。
フロンターレのボール奪取はほぼいつも通り
まずはフロンターレから。
合計ボール奪取60。うち敵陣27(45%)、シュートにつながったもの9(15%)。前半戦の平均値が68.2なので、平均よりやや少ない。とはいえ、ほぼ平均くらいの数字と言える。
敵陣ボール奪取率はやや高め。ボール奪取からのシュートも平均よりやや高い程度。
ただこの試合、前半はフロンターレが劣勢だった。そこで前半と後半に分けてみてみよう。
面白いのは、前半のボール奪取31(うち敵陣14)、後半のボール奪取29(うち敵陣13)で、ほぼ数字が同じこと。奪取位置を見ても、「前半の方が自陣に近い」というようなことはない。
ただ、後半のマップを見ると、右サイドのハーフライン付近でのボール奪取が多い。
これはベルマーレのピラミッドディフェンス(仮称)の一辺に相当する場所。ベルマーレがサイドでプレスをかけてボールを奪われたときに、ボールを再奪取した結果だろう。
その意味では、後半の修正がやはり機能していたということは言える。
旗手の成長が見られるボール奪取
次に、個人別の数字を見てみよう。
旗手:8(シュートにつながったもの4)
山根:8(シュートにつながったもの1(ゴール))
車屋:7
脇坂:6(シュートにつながったもの1(ゴール))
山村:6
橘田:5
知念:4
登里:4
遠野:3(シュートにつながったもの1)
宮城:2
家長:2(シュートにつながったもの1)
谷口:2
ジェジエウ:2
小林:1(シュートにつながったもの1)
一番多い旗手でも8で、特に多いわけではない。しかし旗手のボール奪取のうち半分の4つでシュートまでつながったのは目を引く。これは移籍前の田中碧を彷彿とさせる数字だ。
シュートにつながったボール奪取がフロンターレより多かったベルマーレ
次にベルマーレを見てみよう。
合計ボール奪取数69、うち敵陣25(36.2%)。シュートにつながったもの11(16%)。これは素晴らしい数字だ。合計ボール奪取数と、奪取後のシュートの数でフロンターレを上回っている。
前半戦の対戦チームの数字が以下の通りだから、敵陣ボール奪取率ではコンサドーレ、横浜FCについて3位、ボール奪取からのシュートは圧倒的に1位だ。ボール奪取からのシュートに至ってはフロンターレの平均も超えている。
これは、ベルマーレのピラミッドディフェンス(仮称)が見事に機能したことを表している。
5-3-2のピラミッド型の隊形を取るのがここでいう「ピラミッドディフェンス」(仮称)。
サイドに誘い込んでボールを奪い、奪ったら三角形の形状のままカウンターに転じる。
「ピラミッドディフェンス」(仮称)の長所と短所
この試合、ベルマーレのピラミッドディフェンス(しつこいけど仮称)の長所と弱点と両方が見られた試合だと思う。長所としては、サイドへの誘導とサイドでのボール奪取。
さらにこの隊形は、ボール奪取後、すぐに効果的なカウンターに移行できる。その結果先制ゴールも奪い取っている。
サッカー的に「フォーメーション」と言うより、ラグビー的に「アタックシェイプ」と呼びたくなるような、よく考えられた隊形だ。
一方、弱点も見えた。まずはサイドチェンジ。
最終ラインに5人、二列目に3人だから、構造的に二列目の人数が少ない。その形を逆に利用してサイドに誘導するわけだが、フロンターレは前半の終盤以降、プレスをかけさせてからサイドチェンジを行うという攻めを何度か見せた。
そうなると、二列目が3人では逆サイドをケアしにくい。最終ラインが上がってスペースを埋めようにも、結局ディフェンスの密度が低いから、サイドチェンジ後に縦に抜かれるリスクを犯さなければならない。
もうひとつの攻略法は、誘導されたサイドでボールをキープすること。
サイドに誘導しても、ボールを捕りきれずにキープされると、最終ラインの裏にパスを上げられる可能性に備えて、最終ラインを下げざるを得ない。
そうなると全体が押し下げられて、ピラミッドディフェンス(仮称)の大きな強みであるカウンターの迫力が低下する。
後半になっての形勢逆転は、こういったものが組み合わされた結果だと言える。
ただこの問題、ピラミッドディフェンス(仮称)に構造的につきまとう問題でもある。
もちろん最初のプレスで奪い切れればいいのだが、そうでなかったときにリトリートする見切りが必要と言うことだろうか。ただこのサッカー、発展の余地はまだまだあると思う。
期待してこれからも見てみたい。そのためにも残留して欲しいと強く思う。