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ばあちゃんと映画とハシゴとミシン。

月並みですが、僕は映画が大好きです。

冒険譚や敗者の再生の物語に心が躍ります。

今では映像を作る会社に入り、

仕事として映画に携わる機会も増えてきました。

僕の人生に影響が出るような強烈な「好きだ」という気持ち。

そんな僕の映画に関する原体験をちょっと思い出してみます。


僕の映画好きは、ばあちゃんによって醸成されました。

子供のころ、実家の裏にばあちゃんの家がありました。

ばあちゃんは大正生まれのカクシャクたる人物でした。

ちょっと気難しいですが、シニカルで面白い人だったなと思います。

ばあちゃんの部屋は映画のビデオテープでいっぱいでした。

日本の映画黄金期をど真ん中で楽しんでいたばあちゃん。

父が高校生のころ、「参観日に出席する」と仕事を休み、

学校の近くの映画館で一日中映画を見ていたらしいです(笑)


そんなばあちゃんの部屋に、僕の特等席がありました。

それはハシゴの上です。

家を建て替えた際に、屋根裏に上るためのハシゴを頂戴したそうで、

部屋の隅に鎮座していました。

そしてその横にはミシンがありました。

ばあちゃんは足袋工場の職員だったのですが、

退職祝いに足踏み式のミシンを贈られていました。

ミシンの横のハシゴの上。

それが僕の映画を見る特等席でした。

ミシンの台の上に飲み物とおやつを置いて、

準備完了。

「今日はどれ見る?」

という問いかけが開始のブザーでした。

こうしてばあちゃんとたくさんの映画を見ました。


ばあちゃんもなくなり、先月7回忌がありました。

僕はコロナのせいで帰省することができませんでしたが、

ばあちゃんのことを思い出さずにはいられませんでした。

今でもハシゴを見ると腰掛けたくなりますが、

ハシゴに腰掛けると映画が見たくなります。

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