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J2リーグ 第8節 レノファ山口FC vs ザスパクサツ群馬 感想

2021年シーズンのレノファ山口の8試合目、ザスパクサツ群馬との試合は1-0で勝利となりました。今回はその試合の感想です。


配置のマイナーチェンジと右サイド

渡邉監督からもうこんな試合をしてはいけないとのコメントが出たヴェルディ戦からの立ち直りを求められた群馬戦でしたが、メンバーを4人入れ替えて臨みました。メンバーも変えやすい状況ではあったかと思いますが、単純にトレーニングマッチでのプレーが良かったことによる起用でしょう。プレビューのコメントを見る限りそのように感じます。

ボール保持では、右に菊地、真ん中に渡部、左にへナンという3枚で最終ラインを形成していました。そして、幅を取る選手として右に川井、左に浮田が入る役回りとなり、中盤で佐藤謙介と田中陸の2人がボールを引き出す形でした。

中盤に佐藤謙介が最終ラインに下りるいつもの3+1の形ではなく3+2のような形でのビルドアップとなっていました。3+1ではなく3+2というところがポイントで、ビルドアップの出口として真ん中のパスコースを1つ増やせる点と長いボールに対するセカンドボールを拾う役目を1人増やせる点が大きいと思います。

どうやって内を使うかという話を前節の感想の中で書きましたが、1つの答えが本日の形だったかもしれません。そして、この右肩上がりのビルドアップは当然サイドからの攻撃が視野に入っています。まず、右サイドで高い位置を取る川井を生かすパターンです。

右サイドに開いた菊地や真ん中の渡部から、サイドを駆け上がる川井にパスが通るシーンがありました。菊地からのパスで言うと、31分の小松の決定機の場面はプレスにきた群馬の背後を菊地から川井へのパス1つで取り、シュートまで持ってい苦ことができました。

渡部からのパスで言うと、長いサイドチェンジのボールが数多く出ていました。8分や17分、49分と大きくサイドを変えるボールで川井に届けようとする場面がありました。このサイドチェンジは攻撃のスイッチというよりも、敵陣で時間を作る意味の方が強いと感じましたが、前進の方法としては効果的だったと思います。

得点シーンはその発展的な形でした。渡部から大外の川井へ長いボールが出るのですが、それは背後へ走る川井へのパスではなく相手のサイドバックをおびき出し、競り合わせるためのものとなりました。そして、相手のサイドバックの背後にスペースが生まれ、川井が競り合いに勝ち、そのスペースに走り込んだ小松がボールを受けました。

この小松がボールを受けた瞬間、後ろを向いているので、プレーが止まってしまいスピードが上がらないこともあると思うのですが、ここで川井がプレーを止めずに、サイドへ引っ張り出したCBの畑尾の内側を走ったのが値千金でした。このランニングによって、畑尾が下がり、小松がフリーで前を向くスペースができました。

そして、草野のランニングもお見事で、レーンを真っ直ぐ走った結果、相手のサイドバックを引きつけることに成功し、大外の浮田をフリーにさせました。ここで大外に浮田が待っていることも今節の狙いでもあったと思いますが、右からのクロスに対して、大外で点を取れる浮田が待っていることはチームで共有されていたはずです。

この得点は、チーム全体でプレーがつながって奪った見事な得点だったと思います。


可能性を感じさせた左サイドからの前進パターン

ここまでを得点を奪った右サイドの形を見てきましたが、左サイドからもチャンスになりそうな形を作っていました。それが、左サイドへ入ったへナンからの背後へのボールです。受け手は基本的に草野だったと思いますが、この試合最初のチャンスはこのプレーから生まれました。

8分の田中陸のシュートシーンです。ヘナンに対して相手のSH内田が出てきた瞬間にヘナンが背後に走る草野へボールを送ったところを見てみてください。ヘナンがボールを受けた時、前線は大外に浮田、内側の手前に小松、背後へ走る草野という形になっています。小松が下りることによってCBの渡辺広大を引きつけていますから、草野と畑尾の1vs1の形ができています。

この形が他にも、小松にパスが出た22分のシーン(プレーがうまくいかなかった後の草野のヘナンへのアクションを見ると、この形の意図が読み取れるかと思います)や26分にもありました。

これは左サイドに左利きの選手を置いたことで可能となったパターンだと言えます。左利きのヘナンを起用した意図は、ここに1つあるように感じました。

前節から1週間で少し形を変更し、内を見せながらサイドから前進するパターンをいくつか見せてくれました。これはポジティブな点として挙げられます。


不安定な左サイドと群馬の交代策

ただ同時に、この形がこれまで使われてこなかった理由も試合の中で見ることができました。そこが左サイドの守備です。

左SHに入っている浮田は基本的に相手のサイドバックについていき、時には最終ラインに吸収されるような瞬間もあります。ただ、ボールが自分たちの右サイドにある時には、相手のCBにまでプレスを伺うことが求められていたはずです。

もちろん、それがうまくいったシーンもありました。11分の群馬のボール保持の場面ですが、群馬のボールが右から左に展開されます。ここで平尾から中山にパスが渡り、一度逆サイドに展開してやり直そうというシーンがありました。

ただ、浮田が渡辺広大にプレスをかけるような姿勢を見せたことでそれが叶わず、また同サイドから前進しようとして、ミスになりました。山口としては逆サイドに展開させず、同サイドに閉じ込めた素晴らしい守備でした。

このように、良い守備ができていた場面もあったのですが、前半の終わり間際に何度か左サイドを突破されクロスを上げられるシーンがありました。39分のカウンターのシーン(これは浮田自身はどうしようもないですが、右肩上がりだからこそやられたカウンターだと思います)や43分から44分にかけてのシーン、44分20秒ぐらいからのシーンが挙げられます。

へナン自身のマークのつき方が曖昧な点と浮田のどこまでついていくかの判断を共有できていない点とが重なって、何度も背後を取られていました。

おそらく、ここの曖昧さを狙ってか、群馬は後半開始のタイミングで選手と配置を入れ替えてきました。右SHを内田から、より推進力のある田中稔也に変更しました。自分で仕掛けることもできて、背後も取ることができる、交代で前線に入った北川含めて山口の左サイドを狙おうという交代策だったように見えました。


無失点勝利の立役者となった両CBの安定感

後半は、ボール保持ではCHの2人が中盤でボールを捌きながら大きな展開を見せていた50分台のような良い時間帯もありましたが、なかなかシュートシーンまで持っていくことができませんでした。

時間と共に群馬の前への圧力も強くなっていく中で、狙い通りにサイドからクロスを上げられるシーンもありました。ただ、そんな中でも無失点で終えることができたのは、GK関はもちろん両CBの安定感があってこそだったと思います。

前節のような「よーいどん」のシュチュエーションを作られない限り、渡部と菊地のCBコンビは本当に頼もしいです。クロスに対して的確なポジションを取って跳ね返すシーンは何度もありました(前半最後の危ない場面もこの2人が跳ね返してました)。

クロス対応以外でも、菊地であれば67分の超絶カバーは重要なプレーとして挙げたいです。ヘナンの背後を北川に走られて渡部が引っ張り出された危険な場面ですが、大前のマークを外さずに見事なブロックでピンチを防いでくれました。

渡部であれば、71分から72分にかけての敵陣でのボール奪取を挙げたいです。前に出てボールを奪うだけではなく、島屋への正確なラストパスというおまけ付きでした。島屋が決めてくれていれば、試合を決定づけるような大きなプレーとなるところでした。

ここでは印象に残ったプレーを1つずつ挙げるに留めますが、この2人がいたことで1得点しか奪えなかった試合を勝利で終えることができたと言えます。

もちろん、他の選手も勝利のために重要なプレーを見せてくれていましたが、この2人の活躍は挙げておきたいと思いました。本当に頼もしかったです。


さて、ヴェルディ戦の最悪の内容から立ち直り、勝利という結果を残してくれました。ただ、内容的にはもっと向上できるポイントがありますし、決めるべき場面もあといくつかありました。次節は今年初のミッドウィーク開催となる北九州戦です。お互いの立ち位置を考えると落とすことができない試合と言えます。

この流れを切らさないためにも、良い内容で結果が残せるような試合を期待したいと思います。


*文中敬称略

*この試合のハイライトはこちら


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