サッカーはチームスポーツ 〜J2リーグ第13節 レノファ山口FC vs 大宮アルディージャ 振り返り〜
2019年Jリーグ第13節レノファ山口FC vs 大宮アルディージャの試合は,2-2の引き分けとなりました。今回はその試合の振り返りです。
前回の試合の振り返りはこちらです。
サッカーは助け合い・補い合いのスポーツ
この試合は,大宮の試合だったと思います。山口としては,この試合で勝ち点を1つ積み上げることができたのは,非常に大きかったと思います。
さて,この試合でも山口は2失点を喫しました。ここまでの13試合で24失点という数字はリーグで最低の数字となっています。この数字を見ると,山口は守備に問題を抱えているということになるのだと思います。
確かに,守り方に問題がある部分もあると思いますが,失点が多いのは守備に問題があるからというわけでもないと思います。
大宮戦を振り返ってみても,守備の問題ではなく攻撃や切り替えの問題であることの方が多かったように思います。特に気になったシーンが1失点目のシーンです。
この失点は,大宮の小島が中盤でボールをフリーで受けて,パスを出したところから始まっています。
では,なぜ小島がここまでフリーでボールを受けることができたのかを考えてみましょう。
まず,挙げられる要因はボールの失い方が悪かったことです。この場面は,山口がカウンター気味に攻撃をしていました。そして,三幸から高木へのパスが繋がらず,ボールを失ってしまったのですが,この時に高木以外の3選手がボールを受ける動きをしていなかった事が良くなかった点だと思います。
この試合は,後述しますが,高木を先発で起用し,大宮のディフェンスラインの裏を再三狙っていました。この場面でもそうです。高木はディフェンスラインの裏に向かって走っていました。しかし,もう時間は70分ですから大宮の守備陣も高木の動きだけでは,簡単に対応することができるはずです。実際,菊地にいとも簡単に防がれてしまいました。
ですから,この場面では高木以外の3選手がボールを受ける動きをすることが重要だったと思います。例えば,高木が裏に走るのであれば,その手前に下りてボールを受けようとする動きです。
つまり,複数の選手が連動するのではなく,三幸と高木の2人だけの攻撃になってしまったことが問題だったのだと思います。これによって,悪い失い方をしてしまうこととなりました。
そして,もう1つ挙げられる要因が切り替えの遅さです。先ほどのプレーでボールを失った後の前線の選手たちの戻りが早ければ,防ぐことができたかもしれない失点だったと思います。
実際のプレーを見てみると,菊地が三幸のパスをスライディングでカットしたボールをバブンスキーが拾い,石川を経由して小島に渡るわけですが,バブンスキーが拾ってから小島にわたるまでの時間は約9秒ありました。みなさんはこの9秒という時間をどう感じるでしょうか。
私は,決して短い時間ではないと思います。戻るためには,十分な時間だったと思います。もっと言えば,大宮ボールになった瞬間に,ほぼ同じ位置にいた大宮の奥井の方が山口の高井や岸田よりも切り替えが早く,ポジションに早くついているんです。山口の方が大宮よりも切り替えが遅かったことで生まれた失点だったと思います。
岸田は,小島にボールが渡ってからアプローチをかけようとしていますが,それでは時すでに遅しでした。もし,奪われた瞬間に戻るアプローチをしていたら?もっと後ろの押し上げが早かったとしたら?と考えたくなる失点でした。
失点の要因と考えられるこれらの問題は,それぞれを切り取って考えるものではないと思います。特に,切り替えの遅さは,この試合の暑さを考えれば仕方がないと思う面もあります。ならば,切り替えの局面が発生しないように,その前の攻撃でゴールを奪ってしまえばいいわけです。また,もしこのシーンのように攻撃が失敗して,奪われてしまったのならば,全力で切り替えることができればいいわけです。
「どこかでエラーが起きたならば,別のところで補ってカバーする。」
このことが,攻守一体のサッカーというスポーツにおいて非常に重要なことだと思います。
新しく入った選手のプレーがもたらすチームへの良い影響
この試合は,前節の新潟戦から5人のメンバーを入れ替えて臨みました。新しく入ったメンバーは,2連敗というチームの状況を変えることを期待されて,起用されたと思いますが,それぞれの選手はその期待に応えるようなプレーを見せていたと思います。
前線では,高木と岸田が起用されました。この選手たちの起用によって,相手のディフェンスラインの裏への飛び出しとそこを使うプレーが多く見られました。「シンプルにプレーしよう」というハーフタイムの霜田監督の言葉は,この起用からも読み取れるこの試合の狙いだったのだと思います。
特に高木は,守備面でもいいプレーがありました。高木は,パウロや高井と比べると守備の強度が高い選手だと思います。プレスのタイミングや2度追い,3度追いできる運動量が,他の2人と比べた時の長所となる部分でしょう。67分のシーンは,それが出た良いシーンだったと思います。
小島から菊地にパスが出る瞬間に,菊地にプレスをかけ,キーパーにボールを下げたところでそのままキーパーにプレスをかけて,ミスキックを誘発し,スローインを獲得しました。
プレスのタイミングと強度が素晴らしかったと思います。このシーンは霜田監督も拍手をしていますが,私も思わず拍手してしまいました笑(私は関係ない)。
また,高木と交代で入ったパウロも,この試合は裏に走ってボールを受ける動きを何度も見せ,そのうちの1つのプレーでPKを獲得しました。こういったお互いの意識のし合いは,チームに良い影響を与えると思います。
それから,佐藤健太郎も要所でいいプレーを見せていました。最近では,相手のフォーメーションが3-4-2-1の時には,中盤をダブルボランチにして佐藤と三幸のコンビニすることが定番となってきましたが,これは佐藤が守備面で大切な仕事をきっちりこなしているからだと思います。
それは,相手のシャドーの選手(3-4-2-1の2の部分)を捕まえることです。シーズン序盤の愛媛戦などでは,この相手のシャドーの選手をアンカーの三幸1人で捕まえることができずに苦労していました。この問題を解決するために,佐藤を起用してアンカーではなくダブルボランチにしているのだと思います。
この試合でも,36分や46分のシーンで相手の斜めのパスを佐藤が堅実にカットしていました。これが,佐藤の仕事の1つだと思います。きっちり仕事をしてくれる健太郎さんの安定感はこのチームに欠かせないですね。
最後に触れていきたい選手は,池上丈二です。彼が出場することで圧倒的に期待できることが,セットプレーからのゴールです。この試合でもセットプレーから川井の得点をアシストしましたし,その他にも得点を匂わせるようなシーンもありました。
池上のキックの質は唯一無二のものですから,これからたくさんのゴールを生み出してくれると思います。
このように,新しく起用された選手が,良いプレーを見せてくれたことは,この試合のポジティブな面だったと思います。そしてそれは,これまで出場機会の多かった選手にも良い刺激を与えているのではないかと思います。
終わりに・・・「守護神山田の活躍」
この試合だけではありませんが,山田元気のプレーについては触れておきたいと思います。まず,この試合は彼のプレーによって勝ち点1を掴み取ったと言って良い活躍だったと思いますし,そのほかの試合でもビックセーブを何度も見せています。
また,キックの質も総じて高く,攻撃の起点としても機能するシーンがだんだんと増えてきたと思います。
シーズンの第2節の甲府戦でのプレーの後も信じて起用を続けた霜田監督,そして何と言っても,その期待に応える活躍を見せている山田は素晴らしいです。素晴らしいという言葉で言い表すことは,なんだか申し訳ないなと思うぐらいに胸を打つ活躍だと思います。
もっともっとチームが彼の活躍に報いることができるように,勝利を積み重ねていけると良いなと思います。
*文中敬称略
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?