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J2リーグ 第28節 栃木SC vs レノファ山口FC 感想

2021年シーズンのレノファ山口の27試合目、栃木SCとの試合は2-3で敗戦となりました。今回はその試合の感想です。


ピッチ上で表現された山口の準備

連勝を目指した両チームの試合は、栃木の先制ゴールという形で幕を開けました。

ゴール場面を振り返りますと、サイドでのボールの奪い合いを制した栃木がカウンターの形で山口ゴールへ迫り、谷内田のスルーパスに有馬が反応します。しかし、このスルーパスは関の飛び出しで防がれてしまいます。そのこぼれ球を拾った西谷がワンタッチで豊田へ送り、バックヘッドでゴールを揺らしました。こぼれ球をワンタッチで豊田に送るというひらめきを見せた西谷とそのボールにきっちりと反応した豊田がお見事でした。

早い時間帯に先制した栃木が流れを掴むかと思われましたが、試合開始直後から準備してきた形を見せていた山口が動揺することなくプレーを続けました。山口がやりたいことを表現する時間が多い前半だった印象です。

栃木の守備は前回対戦時と大枠は変わっていないように見えました。サイドの選手が前線へプレスをかけに前へ出て、内側の選手は前へ出て行った後のスペースをケアするという形です。この試合でもSHの畑や谷内田が両CBのヘナンや眞鍋のところに圧力をかけ、SBが山口のWBのところまでついてきました。そして豊田が渡部を見つつ、有馬がトップ下のような立ち位置で山口のボランチのエリアをケアします。

山口はボランチの2人で数的優位を作ることとタイミングを共有し栃木の背後スペースへ積極的にランニングを見せることで、栃木のコンパクトな陣形を広げようとしていたように見えました。栃木が豊田と有馬が縦関係気味になることを利用し、ボランチの田中陸・田中渉でトップ下の有馬に対して2vs1を作り最終ラインが簡単に圧力を受けないようにしていました。これができると、栃木は豊田が下がって有馬と横並びになってケアするか、栃木のボランチの1枚が前に出てくるかという択になります。最終ラインで息ができる形としては十分です。

そして、SBがWBへプレスにくるまでの少しの距離を利用して、WBにボールが入った時や栃木のSBが前出てきた時というタイミングを共有し、その背中のスペースへのランニングを前線の3人やボランチの田中陸などが見せ、そこへ躊躇なくボールを送っていました。栃木の仕組みではSBが前へ出た背中のスペースはCBがスライドするよりもボランチが下がって埋める方が優先度が高いように感じました。

前半の山口は、先ほど書いたボランチエリアの攻防で栃木のボランチを前におびきだす駆け引きをしながら、背後へのランニングを行うことで下がってスペースを埋めさせることを要求する攻撃ができていたと感じました。

栃木の先制点のきっかけとなってしまったボールロストのシーンもフリーの石川から島屋を経由し、背後へ走る草野へ送ったというプレーでした。そして同点ゴールも石川から背後へ走る草野へ送られたボールをねじ込んだものでした。

同点ゴールの後も、栃木はファーストラインの守備に苦労しており、畑をより強くヘナンのところへ出したり、逆にプレスラインを下げたりとしているように見えました。試合のペースで見れば山口寄りだった印象を受けた前半でした。


栃木の修正と追加点と山口の対応と

後半に入ると、栃木はプレスラインを下げる方へ舵を切ったように感じました。2トップで山口のボランチへのパスコースを消しながらサイドへ誘導し、SHが隙を見てプレスのスイッチを狙う形です。山口は眞鍋を大外に立たせる右肩上がりのビルドアップを見せて前進を図ります。

試合が動いたのは53分、山口のサイドを変える大きな展開に対し、栃木は下がりながらスライド対応を見せます。WBの石川へのマークはSHの畑が行っています。すると、スライドを頑張っていたご褒美がきたと言っても良いでしょう、石川の縦パスをボランチの西谷がカットしカウンターへ移ります。有馬がセンターサークル付近でボールを受けてからドリブルを開始し、山口のゴール前へ迫ると、左サイドで切り返した有馬に対して谷内田が内側スペースをランニング、それを囮にした上でファーサイドへクロスを上げて、黒崎がフリーで合わせます。ここは吉満のファインセーブで防がれてしまいますが、セカンドボールから二次攻撃につなげた栃木が大きな展開から左サイドへ持って行き、再びファーサイドへのクロス、今度は豊田がきっちり仕留めて勝ち越しゴールを奪いました。

このゴールはボールを奪った後の栃木のカウンターが見事だったことと、セカンドボールからサイドを変えるような大きな展開についていけず、谷内田に十分なプレッシャーを山口がかけられなかったことがポイントでした。

ただ、山口も前半の流れを継続し、反撃を見せます。58分には豊田の単騎的なアクションとそれには反応せず全体としては下がる選択をした栃木の隙を突くように、渡部から島屋への一発のパスでチャンスを作ります。そして、62分のシーンでは前に出てきた畑、黒崎の背後を突くランニングを田中渉と草野が行い、そこへ石川からパスが出て抜け出しかけるという前半と同じイメージの攻撃も繰り出していました。

この辺りの時間帯は栃木も前に出たい気持ちと下がってスペースを埋めようという意識との葛藤が見られていたように思いました。そこを突きたかった山口ですが、上記の62分のシーンの後、栃木が明確に下がってスペースを埋めに入ったことで少し困るようになったと感じました。例えば67分のように、ヘナンへのプレスはかけてこないのだけれども、パスの出しどころを抑えられており、待っているところに縦パスを送って潰されるシーンがありました。また中を消されてサイドへ持っていくものの、その先のスペースを消されていて前進ができないということもありました。

そして、この時間帯にセットプレーから3点目を失ってしまいました。結果を見ると、栃木の修正に対する対策が見えない中で失点も喫してしまったことが痛かったかもしれません。

しかし、山口もこのままでは終わらず、3失点目の直前に投入した高井をフリーマン的に活用することで少しずつ前進できるようになっていきました。彼の下りてくる動きによって、パスの出しどころが一つ増える形です。その後、澤井と大槻を投入し4-4-2のバランスへと完全に移行させたことで、高井がポジションを崩す動きを見せても、ゴール前には草野・大槻・河野の3人が絡んでいける形を作り、ゴール前への迫力も担保していきました。

85分に一つの成果が出ます。最終ラインから高井ボールが入ったところで攻撃のスイッチが入ります。ここは高井と澤井の縦関係が変わっています。高井が少しタイミングをずらして澤井へボールを預けます。澤井は内側へターンし前線への視野を確保します。そのタイミングで草野が栃木のボランチ脇のスペースに下りてきて澤井からのパスを受けます。草野がターンすると河野が空けた右サイドへ広大なスペースができており、最終的には川井がクロスを上げることができました。これは前節の山形戦の2点目と同じような左で作って右に展開しクロスという形でした。

川井のクロスは合いませんでしたが、こぼれ球を拾って再び攻撃へ移ります。今度は渡部から大外の川井、ライン間へ顔を出した草野、CB-SB間のスペースへランニングを見せた河野というお手本のような展開でゴールを奪いました。草野から河野のところで相手の出した足に当たるというラッキーがありましたが、これは正真正銘、自分たちの保持から意図的に崩した奪ったゴールです。その前の左から右への展開も含めて素晴らしい得点でした。

失点後は栃木も5バックにして逃げ切りを図ります。山口も89分に背後スペースを取った大槻のクロスからチャンスを作りましたが、惜しくも届かず栃木の勝利となりました。


次に向けて

負けはしましたが、準備できたことがピッチで表現でき、相手の修正に対しても対応してゴールを奪うことができました。これまで課題だったチャンスを作る部分、そしてゴールを奪う部分に光が見えた試合だったと思います。

結果だけを見ると、残留を争う群馬と栃木との直接対決で立て続けに勝点3を与えてしまうことになりました。これは非常に痛いのですが、ここ2試合の内容を見れば、上位相手にも勝点が取れるという期待感を抱くことができます。

大事なのは続けることです。続けることが残留への一番の近道だと信じて応援したいと思います。



*文中敬称略

*この試合のハイライトはこちら


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