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どこにズレを生み出すか 〜J2リーグ 第27節 柏レイソル vs レノファ山口 プレビュー〜

J2リーグ第27節 柏レイソルvsレノファ山口FCのプレビューです。

前節の試合の振り返りはこちらです。



対戦成績

 今シーズンが初対戦となる両者ですから,過去の対戦も今シーズンの開幕戦の1度しかありません。維新みらいふスタジアムで行われた今シーズンの開幕戦は,前半8分に吉濱のゴールで山口が先制したものの,前半39分にPK,そして後半34分に中を狙ったクロス気味のシュートによってクリスティアーノが得点を挙げ,柏が逆転勝利を収めました。


柏レイソルの現状

 柏レイソルは現在15勝7分4敗勝ち点52で首位に立っております。春先は,思うように勝てない時もありましたが,なんと現在リーグ戦8連勝中,天皇杯も含め公式戦9連勝中となっています。
 夏の移籍では,かなり動きが見られました。山口サポには思い入れが深い小池龍太のロケレン(ベルギー)への移籍が発表されましたし,その他にも小泉慶が鹿島,高木利弥が松本,パクジョンスが鳥栖,村田和哉が福岡,猿田遥己が鹿児島へ移籍しています。
 一方,inの方も活発に動いています。新潟から川口尚紀が,神戸から三原雅俊が,ブラジル人選手もジュニオールサントスマテウスサヴィオの2選手が加入しています。
 展望のところでも書きますが,この夏に加入した選手は全員が試合に出場しています。特に,三原は4試合連続スタメンフル出場と加入早々欠かせない選手となっています。

 柏レイソルで特筆すべきは,今季のリーグ戦26試合で17失点という数字です。これは,リーグ最少の失点数となっています。クリーンシート(無失点試合)の数も14試合とリーグトップです。この試合もGKの中村航輔を中心に鉄壁のディフェンス陣で山口の攻撃力を跳ね返すことになるのでしょうか。

 こんな強い強い柏ですが,柏のホームに乗り込んで勝ち点を奪うことはさらに困難なミッションとなります。柏がJ2を戦うのは今シーズンが3回目ですが,その3シーズンのホームの成績は37勝11分6敗です。1試合平均獲得勝ち点にすると2.25です。28勝14分14敗というアウェイの成績(1試合平均獲得勝ち点1.75)と比較しても,ホームでの強さがこれまでの昇格に大きく貢献していたことが読み取れます。 
 今シーズンもホームでは3月に行われた岡山戦の1敗しかしておりません。そして,目下5連勝中9試合負けなしという強さを見せています。

 ここまで柏が勝ちそうな数字ばかりが並んでいます。そりゃ強い柏なので当然なのですが,1つぐらいは相性の悪い数字があってもいいだろうとなんとかひねり出しました。
 それは,「これまでJ2を戦った2シーズンのホーム戦で,8月だけ両シーズンとも負けを経験している」ということです。これまでのJ2でのホーム戦6敗のうち,2006年は4月に連敗し,8月・11月にそれぞれ1度敗れています。2010年は8月のヴェルディ戦に敗れた1回,2019年は先ほど書いた3月の岡山戦の1敗です。

 つまり,2006年も2010年も8月には1度ずつ負けを経験しているということです。
 2019年のホーム戦は前節の琉球戦,今節の山口戦,8月31日の新潟戦の3試合です。過去2シーズンのジンクス通りであれば,今節の山口戦か月末の新潟戦で柏は白星を献上することになるのですが・・・果たしてこんな言いがかりに近い数字はあてになるのでしょうか笑。


山口の現状

 山口は現在8勝6分12敗の勝ち点32で14位に位置しています。最近5試合でも1勝1分3敗と波に乗り切れない状況が続いています。

 そんな状況で,夏の移籍市場では宮代大聖をフロンターレから石田崚真をジュビロから期限付きで獲得した一方で,左WBの瀬川和樹を栃木へ放出しました。宮代は加入直後から4試合連続スタメン出場で2アシストという結果を残しています。そろそろゴールという結果が欲しいところです。

 山口の選手は,柏のホーム三協F柏スタジアムで多くのプレー経験を持っている選手は数えられるほどしかいません。ただ,山口には「日立台」で最もゴールを決めている男が在籍しています。それが工藤壮人です。
 工藤は2009年から2015年まで柏に在籍していました。この7年間と広島時代の1試合を含めて公式戦通算125試合に出場し,52ゴールを記録しています。これは,三協F柏でゴールを奪った選手の中で歴代1位の数字です。2位の田中順也が39ゴールですからその差は歴然です。
 まだ,柏を相手に三協F柏でゴールを決めたことはありません。この試合でそのゴールを決めて山口に勝利をもたらすことができるのでしょうか。

 山口にとって,相性の悪い数字を1つ紹介しておきます。それは,今シーズンから再びヘッドコーチを務めている井原さんとの相性の悪さです。井原さんが監督を務めていた福岡時代の対戦成績が,山口からみて1分4敗となっています。この1分は天皇杯のものですからリーグ戦では4戦全敗です。柏レイソルのヘッドコーチとしても今シーズンの開幕戦で山口は敗れていますから,通算では1分5敗です。
 井原さんが退任した福岡には今シーズンの1試合目で山口は勝利を収めましたので,福岡との相性の悪さは多少跳ね返しました。ここで柏に勝って井原さんとの相性の悪さも払拭して欲しいところです。


展望

こちらが予想スタメンです。

 柏は4-2-3-1のシステムで臨んでくるでしょう。そして,CBの鎌田と左SHの瀬川が累積警告で出場停止となります。そこをどうするのかというところがこの試合の見所の1つになります。
 CBの鎌田の代わりに出るのは田上ではなく上島の可能性もあります。個人的なポイントは瀬川の代わりを菊池大介にしたところです。オッズ的には,新加入のマテウスサヴィオの方が本命だと思いますが,スーパーサブ的な役割としてベンチに置いておきたいのではないかと考え,スタメン予想から外すことにしました。では誰になるのかという点は非常に難しかったのですが,無難に?菊池にしてみました。

 山口は3-4-2-1のシステムです。基本的には前節勝利を収めたメンバーから変更はないと睨んでいます。この予想から変更があるとすれば,川井のところだと思います。石田が移籍後初スタメンとなる可能性も大いにあるでしょう。


 柏の予習として前節の琉球戦をフルと栃木戦をさらっと見ました。琉球戦の印象ですが,一言で言うと「強い」という当たり前のものになりました。
 では,どう強いのかということを少し掘っていきたいと思います。

 琉球戦はお互い4-2-3-1という同じシステムの試合でした。その中で琉球は持ち前の相手の間に立つポジショニングでズレを生み出し,パスワークでゴールに迫るシーンを多く作っていました。柏は間に立つ選手をなかなか捕まえることができませんでした。さらに攻撃でも柏は同じシステムの相手に対し,ズレを生み出すことができません。時よりCHのヒシャルジソンや三原がディフェンスラインに下りてビルドアップも試みますが,効果的な前進を見せることができませんでした。

 そんな展開で鈴木孝司のゴールで琉球が先取点を奪います。ここまでは,琉球ペースの試合でした。

 それでも柏はこの試合を5-1でものにします。その要因は,チームとしてズレを生み出さなくても,1vs1で相手を上回ることができる個人の質があったからだと思います。例えば,ズレを作れず相手にビルドアップをはめられそうになった時に,中村から右SHのクリスティアーノへロングボールを送ってプレスを回避するシーンがありました。この時クリスティアーノが競り合うのは,琉球左SBの徳元です。
身長差のミスマッチを的確に突こうという狙いが感じられました。
 このように,相手を見て上回れるところで上回れば良いという潔さが柏の強さを際立たせているように感じました。
 柏の質の高さは,ロングスローやFK,カウンターという効率の良い形で得点を奪い切っている点にも表れています。完全に相手を崩し切らなくても1人1人のしつでゴールを奪える強さがあります。

 山口としては,1vs1の勝負に持ち込ませないことが勝利へのポイントだと思います。システムは山口の3バックと柏の4バックというズレがあります。そのシステム的なズレを最大限に活かすことが重要です。相手の4バックに対してWBも高い位置を取って5人で攻める,外を見せながら宮代や佐々木で間を活用する,こういったことができれば柏から得点を奪うチャンスも出てくるはずです。
 柏の瀬川が出場停止であることは,山口の攻撃にとってプラスに働く可能性もあります。瀬川の守備の強度の高さは貢献度がかなり高いはずです。それがなくなった時に,戻ってきてボールを奪い切れる選手が瀬川の代わりに現れるかどうかです。ここが,山口の狙い所になる可能性があります。

 山口が注意したいのは江坂の間で受ける動きです。チームとして効果的な前進を見せられない中でアクセントをつけられるのが江坂のボールを引き出す動きです。守る側がオルンガやクリスティアーノの強さ,速さに目がいった時に,江坂がスッと間で受け展開するプレーを止められない可能性は十二分にあります。シャドーの選手が中を締めて江坂へのパスコースを限定することと江坂のマークの受け渡しをサボらない事が重要になると思います。
 それからクリスティアーノのクイックロングスローにも注意が必要です。集中を切ってしまう瞬間がないようにしなければなりません。


最後に,個人的に注目しているのが菊池流帆とクリスティアーノのマッチアップです。開幕戦に出場していない菊池にとって初めてのマッチアップとなります。最近の試合のパフォーマンスを見ると,クリスティアーノとも互角に渡り合えるのではないかという期待を抱かずにはいられません。仮にクリスティアーノにボコボコにされたとしても,それはそれで菊池の大きな成長につながるはずです。どちらにせよ,今後の菊池にとって大きな1戦,マッチアップになることは間違いありませんので,期待感を持って試合を観戦したいと思います。


*文中敬称略
*データは以下のサイトのものを参考にしています
 Football-LAB (http://www.football-lab.jp/kyot/preview/)
 Soccer D.B.(https://soccer-db.net)
 J.League Data Site (https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)

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