見出し画像

この勝ち点1をどのように捉えるか 〜J2リーグ第6節 FC琉球 vs レノファ山口FC 振り返り〜

2019年J2リーグ第6節FC琉球 vs レノファ山口FCの試合は,2-2の引き分けでした。今回はその試合の振り返りです。

この試合のプレビューはこちら



1.お互いのやりたいことが表現できた好ゲーム

まずは,プレビューで挙げた「ボールの失い方」について見ていきたいと思います。

この「ボールの失い方」および「ボールの奪い方」に両チームのスタンスが現れていたと思います。大雑把に言うと,この試合は「ボールを握る琉球」vs「奪って速く攻める山口」という戦いになりました。それを示すであろう数字をご紹介したいと思います。

これは,どの位置で前向きにボールを奪ったかというものを,私が数え,時間帯ごとに分けまとめた表になります。(1番左側の数字は時間帯を示しています)

「前向きに奪う」の基準は私の主観ですし,試合を見ながら私が1つずつ数えたものなので,この数字にどれだけの信頼性と妥当性があるかは分かりません。ただ,全体の傾向を捉えることには有効だと考えているので,掲載させていただきました。

この表から読み取れることは,山口の方がボールを奪う回数が多かったということです。特に,フィールドを横に三分割したうちの真ん中のゾーンであるミドルサードで奪う回数に大きな差が出ました。

また,この試合のポゼッション率も琉球が60%,山口が40%となっていました。

ここから読み取れることは,山口は,「琉球にある程度ボールを持たせたところから,前向きにプレッシャーをかけ,できるだけ高い位置でボールを奪ってゴールに迫る」ことをこの試合の狙いとしていたのではないかということです。

一方,琉球は,「そんな山口がプレッシャーに来ても,自分たちがボールを持って空いているスペースにボールを運んでいく」ことを目指していたのだと思います。

この数字は,お互いの狙いが現れたそんな数字だったと思います。

ですから,この試合の山口の内容は,良かったと思っています。ミドルゾーンでボールを奪ってシュートまで行く形を何度も見せられていました(例えば,29分30秒あたりからのシーン)し,得点シーンも相手から奪ったボールをゴールに結びつけたものだったことからも,そのことがいえるでしょう。



2.相手の圧力に1歩も引かない琉球の強さ

内容は,良かったものの結果は引き分けとなりました。この結果をどう捉えるかについては,後ほど述べるとして,勝てなかった要因の1つを考えてみると,琉球が素晴らしかったことが挙げられるでしょう。

先ほど述べたように,山口は琉球に対しても,前線からのプレスをかけていました。その際に生じるリスクを分かった上での選択だったと思いますが,そのリスクを琉球は自信を持って突いてきました。

その山口のリスクの1つが,「サイドバック裏のスペース」です。ここは,前節の相手栃木も狙っていましたが,琉球も何度も狙っており,山口としては非常に脅威を与えられるものとなっていました。

例えば,65分20秒ごろからの菊池のスーパーブロックで失点を免れたシーンです。このシーンは,琉球が左サイドから右サイドに展開した時に,琉球の右サイドバックの西岡に対して,山口の左サイドバックの鳥養がアプローチに行った裏のスペースにワンタッチで,ボールを流しました。そして,クロスをフリーで上げ決定的なシュートという形を作りました。

このように,多くの場面で琉球はビルドアップから山口のサイドバックをおびき出し,その裏を狙っていました。それに対して,山口はCBが外に出て行って対応することで防いでいました。しかし,それが遅れると大ピンチとなっていました。

琉球サイドから見れば,山口に,ボールを中盤でカットされることがありながらも,自信を失わずプレーをし続けたことで,「負けなかった」という結果を得られたと言えるでしょう。



3.サッカーをどのように観戦し,どのようなスタンスで応援するのか

今まで見てきた通り,この試合は,お互いがやろうとしたことを存分に発揮した結果,引き分けとなったと思っています。

もちろん,2-1とリードしていながらも終盤に追いつかれて,勝ち点2を失ったという見方もできると思います。ですから,この結果をどう評価するのかは非常に難しいです。

私は,「結果には,当然悔しい気持ちがあるけれど,内容は良かったし,次勝てるように応援しよう」というとてもポジティブな気持ちでいます。

つまり,結果とともにやろうとしていることを大切にしていきたいという気持ちです。

なぜなら,結果というものは,やろうとしていること以外の部分(ディテール)で決まることがよくあるからです。やりたいことが全然できなくても勝てることがあれば,その逆もあると思います。であるならば,結果だけに左右されるのではなく,チームが目指している方向性にも目を向けたいと思うわけです。

今,山口に結果がうまく出ていないのは,ディテールの部分が悪い方向に出ているからだと思います。これは,あくまで私の印象です。


山口のサッカーがやろうとしていること,その原則の一部には,「相手ゴールに矢印を向けてプレーする」ことがあると認識しています。

では,それ以外の部分とは何なのでしょうか。

例えば,ゲームコントロールの部分でしょうか。勝つためには。時間帯によって,「時間を使うこと」に意識を向けてプレーする必要が出てくるかもしれません。(それが,すなわち「相手ゴールに矢印を向けてプレーする」ことと矛盾するわけではないのかもしれませんが。)

他には,琉球戦の2失点目のように,相手のクオリティーが自分たちを上回ってしまうこともあるでしょう。これはどうしようもできません。

この他にも勝敗に関わるポイントは,自分たちの意図の外側に数多く存在すると思います。


琉球戦でいえば,失点シーンで何かできたことはあったのかを考えてみると,1失点目では,三幸が敵陣の左サイドで奪いかけたボールを即奪い返された部分で,自分たちの右サイドに展開されてしまったことが挙げられます。人数はいたのだから,右サイドに展開される前に誰かがファウルで止めていればよかったのかもしれません。

2失点目は防ぎようがないと先ほどは書きましたが,そのプレーにつながったセットプレーを与えてしまったファウルは,果たして必要だったのでしょうか。相手の河合の状況を考えれば,あそこでファウルをしてしまわなくても良かったのかもしれません。あのセットプレーがなければ,おそらく鈴木の2得点目はなかったでしょう。

リードした終盤のゲームコントロールについては,この試合は悪くなかったと思います。少なくとも千葉戦よりは良かったと思います。その中で強いて,改善できたポイントを挙げるとすれば,86分25秒あたりのシーンでしょうか。

相手のボールを奪って,カウンターになったのですが,高井が左サイドからパウロに向かってクロスを送ったものの,キックミスで難なく相手のキーパーにキャッチされてしまったというプレーでした。

このプレーの直後に,自陣でFKを与え,その流れの中で失点だったので,このカウンターの終わり方は勿体無かったと思います。

ただ,これらの指摘は,全て結果論です。自分たちのやりたいこと,原則の中で判断をし,選択をしたプレーの結果なので,これはある意味で仕方がないものだと思います。次に活かすことができればいいんです。

高井のプレーで言えば,選択が正しいことを証明するためには,パウロまで正確にボールを届ける技術が必要ですし,それが難しいのであれば,「一旦遅らせる」という判断が必要だったのでしょう。これは,プレーの後,試合の後でないと振り返ることはできません。

このように,試合の中でのディテールの部分は,その経験を積み重ねていくことでしか,改善していくことはないと思います。

私にできることは,原則の中でのプレーの判断であれば,その判断が正しくなるように応援することだけです。


だから,私は結果論だけにならないように「やりたいこと」にフォーカスしてレノファを応援していきたいと思いました。




ここまで書いてきたことは,あくまで私の考えなので,これを押し付けようなどとは当然のことながら思っていません。こうやって書くことで私自身が改めてそのスタンスを意識したかったので,書かせていただきました。ここまでお付き合いいただいた方は、本当にありがとうございます。

さて,沖縄の地で勝ち点1を確保した山口の次の試合はすぐにやってきます。この勝ち点を次に生かしていくためにも必要なことは,ホームでの勝利です。相手は,徳島と強敵ですが,ホーム初勝利を挙げて波に乗って行きましょう!

*文中敬称略


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?