見出し画像

J2リーグ 第5節 ジュビロ磐田 vs レノファ山口FC 感想

2021年シーズンのレノファ山口の5試合目、ジュビロ磐田との試合は2-1で勝利となりました。今回はその試合の感想です。


チーム全体の狙いで奪った先制点

前半20分までに2得点を奪い、そのまま逃げ切った勝利となりました。今シーズン、先制点を奪うことが1度もできていませんでしたから、やはり先制点は重要だと改めて認識させられる試合でした。

試合の入りから飲水タイムまでの時間は、試合のペースを上げすぎないことができていたのではないかと思います。相手のボールを奪ってカウンターも発動できていましたし、ボール保持でも磐田の圧力を感じながらもやろうとすることは見えていました。

「ボールを奪う」に関しては、前半10分までに3回、相手のボールを引っ掛けるシーンがありました。

1分から2分にかけてのシーン。磐田がカウンター気味で攻めてきたところを、まず戻ってスペースを埋めます。そして、横パスの瞬間に高井が前に出るアクションを起こし、戻ってきた草野が引っ掛けるというプレーでした。

4分20秒ぐらいからのシーンは、ボール保持がうまくいかず相手ボールになったところからです。ここも全員がまず戻ってから1つずつ前に出るアクションを起こし、大森へのパスが少しズレた瞬間を佐藤がタックルしてボールを奪いかけました。

5分から6分にかけてのシーンは、まず中盤にブロックを構えます。遠藤がボールを持っている時はアクションを起こしません。山本康裕から山本義道へパスが出た瞬間に高井がスイッチを入れます。そこに石川と佐藤が連動して相手の動きを制限、山田のトラップがズレたところを戻ってきた草野が奪うというプレーでした。

3回とも、「まず戻ってから前へのアクションを起こす」というプレーで、闇雲にプレスをかけるわけではありませんでした。チームとして整理された中でアクションを起こせていたと思います。

そして、先制点もこの延長線上で生まれたものでした。

スタートは11分20秒でのマイボールのスローインです。ここからボールを繋ぎ、佐藤から相手の左サイドのCHの脇にポジションを取った高木にパスが通ります。非常に良い場面だったのですが、高木のプレーがうまくいかず相手ボールになります。

そして、ここからプレスを開始します。良いボール保持でポジションバランスも良かったのでしょう、ボールを持った松本を後ろ向きにさせることに成功します。そして敵陣に閉じ込めたまま、相手のスローインに対して下がらずに再度プレスを敢行します。困った磐田はそのままボールを下げ、最終的に伊藤がボールを蹴り出します。

そのボールを田中が回収し、楠本へ。楠本がワンタッチで澤井に繋ぎ、澤井が見事なターンで松本を交わします。この瞬間に澤井が完全にフリーとなりました。伊藤や今野は山口のプレスを受けた直後で押し上げることができていませんし、中盤の3人も攻守の切り替えの中でカバーできるポジションにつけていません。

そして、フリーの澤井からのアーリークロスに高井が合わせ、ゴールとなりました。

最終的には見事なクロスと見事な合わせ方でゴールを奪いましたが、そこに至るまでのポイントは前へのアクションをチーム全体で繋げた守備と、奪ったボールをワンタッチで前つけた楠本のさりげないパスだったと思います。後は、今野を引っ張った小松の背後へのランニングでしょう。これがあったので、鈴木の前を取っていた高井がオフサイドにならずに済みました。

このように、先制点はチームとしての狙いが繋がった非常に良いゴールでした。


ラッキーを誘発したビルドアップからの追加点

先制点から2点目を奪うまでの時間も山口の方が良いプレーが多かったです。18分に1度ルキアンの突破を許しましたが、磐田の攻撃はそれぐらいに抑えていました。

ボール保持では、磐田の左サイドからの前進を頻繁に見せていました。ちょっとしたパスのズレで決定的なチャンスまでには至りませんでしたが、磐田の攻撃を防ぐには十分なボール保持でした。

そして、19分16秒からスタートしたプレーで2点目を奪います。

佐藤がリスタートで渡部にボールを繋ぎます。3枚+田中陸といういつもの配置からのスタートです。渡部に相手の山田が大外の石川を気にしながら出てきますが、内側に持ち出して、前方へのパスコースを確保します。細かいプレーですが、この持ち出しが非常に重要です。

その瞬間に高井が内側に入り、渡部からのパスを受けようとします。高井は鈴木がぴったりついてきていることを感じ、渡部からのパスをスルーして大外の石川がボールを運ぶことに成功しました。

3+1、そして内と外の関係で見事に相手の1stラインを突破したプレーでした。

鈴木の戻りによって更なる前進は阻まれますが、冷静に後ろに戻し、田中から佐藤へボールが渡ります。この瞬間1stラインを突破したことにより、佐藤の目の前には広大なスペースがあります。ここでの佐藤のプレーが2点目のポイントとなりました

佐藤はここでボールを自分が運ぶことを選択しました。フリーの時は前方へ運ぶ、基本のようなプレーですが、これが非常に重要です。佐藤は遠藤に向かう形でボールを運んでいきます。そして、高井がポジションを取る時間を作り、左サイドへ展開します。このパスが少しずれ、鈴木にカットされそうになりますが、鈴木もプレーできる体の向きではなかったため、カットしきれず、高井にボールが渡ります。

この瞬間に磐田の選手は全員後ろ向き、小松と草野はゴールに向かってアクションを起こせる状況になりました。これで勝負ありです。後は小松と草野の見事な動き出しが繋がり、高井もしっかりクロスを送ってゴールとなりました。

ビルドアップで相手を困らせる立ち位置を取り、1つずつ的確に前へ進んでいく中で生まれたゴール。ここまでチームとして積み上げてきたものが見事に出た2点目だったと思います。良いゴールでした。


前半飲水タイム明けから試合終了まで

これまで課題だった試合の入りで2点を奪い、飲水タイムを迎えることができました。飲水タイム明けは、良いプレーを各所で見せるのですが、ちょっとしたズレでチャンスにしきれなかったり、何でもないミスから自滅し決定機を作られたり、少しずつ磐田にも可能性が生まれてくる展開となります。

そして、40分18秒過ぎ、ルキアンと山田2人の関係で、瞬間的に楠本が1vs2を作られて、ライン間を使われたプレーから鈴木のシュート。その後のコーナーキックから1点を返されてしまいます。

結果として前半は2-1とリードで折り返します。内容的にはもう少し差がついていてもおかしくなかったかもしれませんが、山口が自分たちのプレーでその貯金を吐き出したという印象で、妥当なスコアだったと思います。

後半はビハインドを背負う磐田が前に出てくることもあり、一進一退の攻防になりました。山口はカウンターが打てそうな場面でシュートまでいけない場面も多く、全体のアクションが少なくなり、長いボールで陣地回復を目指すような場面もありました。この辺りは今季初勝利に向けたメンタル面も影響したかもしれません。

ただ、終盤の耐える時間の中で見せた敵陣でのボールキープ(時間的には80分後半)はお見事でしたし、こうした時間の使い方ができると取るべき勝点をちゃんと取れるだろうと思いました。

そうした時間の進め方もあり、得点は奪えなかったものの2-1のまま試合を終わらせることができました。

試合後のコメントで監督や関が自分たちのサッカーが表現しきれなかったと反省の弁を述べていましたが、後半の戦いを見るとそのコメントも理解できます。

ただ、この後でも述べようと思っているのですが、チームとしての狙いややりたいことが表現「できなかった」わけではなく、「しきれなかった」試合だったと思います。ですから、個人的には試合後コメントほど悪い試合だったという印象はありません。

ひとまず、勝点3を掴めたことですし、この試合をきっかけにしてもらいたいですね。ここからの山口も更に楽しみにしたいです。


現地観戦で感じたこと①

最後に、現地スタンドから見ていて感じたことを3点書いておしまいにします。

①長いボールと全体の押し上げ
②ちょっとしたズレとミス
③セットプレー

①については自陣からのビルドアップを大切にしていることもあり、仕方がない部分もあるかと思います。ただ、相手のプレスを回避するために長いボールを使った時の中盤から後ろの押し上げについては、少し気になりました。後ろから運ぼうとしているためポジションが後ろになっているのですが、長いボールで前にボールが送られた際、もう少し押し上げていないとセカンドボールで競ることすらできないと感じました。

渡邉監督も捨て気味に前方へボールを送った際に、押し上げを促すアクションを起こしており、コンパクトに戦うことは大事にしているのだろうと感じました。(5分17秒付近で楠本が前方へボールを送っていますが、このような場面で押し上げを促すアクションを行っていました)

意図的に長いボールを活用しようという場合は、それを見越して押し上げることができており、セカンドボールを拾ってからのチャンスを作れています。例えば前節の岡山戦がそうです。

自陣からのボール運びに取り組んでいるからこそ、仕方がない場合のリカバリーは大切であると感じました。


現地観戦で感じたこと②

②については、この試合だけではない今の山口の最大の課題だと思います。もちろんこの試合でも気になりましたし、この試合を苦しくした要因がここでしょう。

チャンスになりそうな場面でもう1つパスがずれたり、動き出しが合わなかったりして決定機までいけないシーンが多くあります。

先ほど述べた2点目のシーンで佐藤から高木にパスが出た後もそうです。前半アディショナルタイム、45分50秒からのボール奪取の後のプレーもシュートまでもいけていません。

後半で言うと、54分から55分にかけてのカウンターや72分の佐藤のサイドチェンジ、直後の楠本のヘディングの後のプレーなど挙げたらキリがないのですが、ちょっとしたずれでチャンスにならないプレーがたくさんあります。

そして、この試合で言うと失点に直結しかねないミスもいくつかありました。

これが試合を苦しくしていると思います。そして、試合の中で感じたこのズレの要因が3点あります。

1つ目は単純な技術の問題です。これは今後の成長でどうにでもなります。

2つ目はチューニングが合っていないことです。スタンドから見ていて、またパスの出し手と受け手の感覚がマッチしていないのではないかと感じました。1人1人が渡邉監督の目指すサッカーを理解しつつあり、それを表現しようとしている段階だからなのかもしれませんが、個人個人の感覚がちょっとずつズレている感じです。そんな印象を受けました。

例えば(ここからあえて渡邉語を使ってみます)、大外へ切るパスが出た瞬間、の間にいる前線の選手が連動してパスコースを作ります。レーンをまっすぐ走ったり、剥がす動きを見せたり、その動きに対してその場(箱の中)に留まって斜めのパスを受けようとしたり、各個人がボールを引き出す動きを見せます。ただし、ボールが出ないことが多いのです。

スタンドから見ていて、前線の選手全員が手を挙げて「ボールを受けられるぞ」という合図を出しているのですが、ボールは後ろに下がるというシーンが印象に残りました。画面に映っていたところで言うと、6分から7分にかけてのシーン、渡部から石川にボールが出た瞬間、前線の小松はボールを呼んでいます。しかし、前線を確認することもなくボールは後ろに下がりました。

おそらく、受け手の選手は「出してよ」と思っている一方で、出し手の選手は「それじゃ出せないよ」と思っているのではないでしょうか。この辺りのチューニングが合っていないことが、チームとしてやりたいことをうまく表現できない理由なのではないかと感じました。

3つ目は、各個人が苦手なプレーを行っている場面があることです。チームとしての狙いがある中で、自分が苦手なプレーを行わなければならなかったり、それを自分で選択していたりして結果的にミスが起きているのではないかと感じました。チームとしての狙いや良しとされている中でも、臨機応変に自分が得意とするプレーを選択しても良いと思います。

その辺りは、もう少し時間が必要なのかもしれません。「守破離」の原則で言うとまだの段階だと思いますから仕方がないでしょう。現時点では、その辺りを監督が調整しながら少しずつが出てくると怖さも増すはずです。


現地観戦で感じたこと③

③は試合開始から気になりましたよね。ゾーンで守る山口に対して磐田は明らかにショートコーナーの形を狙っていました。ここは対戦相手からすると、分析のしがいがあるシチュエーションなはずです。今後の対戦相手がどのような形を狙ってくるのか、それに対してどのような対策を見せるのか、注目したいと思います。磐田戦の感じでいくとちょっと怖いと感じました。


ここまで挙げた3点について、現地で見たからこそ感じたものばかりではなかったかもしれません。しかし、現地で見た試合で感じたことですから、それは大事にしたいと思って今回書くことにしました。

まだまだ伸び代の多いチームです。現地で#観戦することがより楽しみとなる試合だったと思います。次はホーム初勝利を期待しましょう。



*文中敬称略

*この試合のハイライトはこちら


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?