J2リーグ 第9節 ギラヴァンツ北九州 vs レノファ山口FC 感想
2021年シーズンのレノファ山口の9試合目、ギラヴァンツ北九州との試合は0-0で引き分けとなりました。今回はその試合の感想です。
ミッドウィークの試合ということもあり、簡単な感想にしたいと思います。よろしくお願いいたします。
北九州のボール保持と3人の壁
北九州との一戦は山口にとっては難しいものとなりました。どのあたりが難しかったのかを私なりに考えてみましたが、それは「試合を動かす決定権が北九州の方にあった」ことです。山口としては、自分たちから主体的に試合を動かしていくポイントが見つけられずに、90分が経過していたのではないでしょうか。そんな試合だったように感じました。
主体的に動かしにくかったと考える要因をボール保持、非保持の局面から1つずつ挙げたいと思います。
まず、非保持ではハイプレスをかけて奪いに行く場合よりも、ミドルゾーンで相手の攻撃を構えていた場合の方がうまくいきそうだった点にあると考えます。この試合の山口は、積極的に奪いに行く姿勢で試合に入りました。前半15分あたりまでは、北九州のボール保持に対して、その姿勢を見せていました。
ただ、北九州も、サイドチェンジを活用しながら前に出てくる山口の背後をうまく取って前進していきました。6分から7分にかけて針谷のミドルシュートのシーンであったり、10分のゴールキックからの前進であったりが挙げられます。
ポイントとなったのはCBに入った河野のキックでしょうか。針谷だけではなく彼から前線にボールが出てくるので、山口としては取りどころが難しくなったのかもしれません。
そういった状況もあり、山口は少しずつ中盤のゾーンで構えながらプレスラインを下げる対応にシフトしていきました。18分30秒あたりからの北九州のボール保持が最初のシーンだと思うのですが、2トップが相手の最終ラインの選手に出て行かず、待ち構えています。そして、針谷から右サイドへサイドを変えるボールが出て、その先でへナンがボールを奪うという形になりました。
32分や41分のシーンも同じような形となっており、51分のサイドチェンジに対する浮田の戻りを見ても、試合の入りよりも後ろで待ち構える意識にシフトしていったのではないかと思います。
これができるのは後ろに渡部・菊地の両CBとGK関の壁があるからです。北九州としては相手が出てきたところをサイドチェンジでひっくり返したり、間を取って縦パスを入れたりしてスピードアップを図りたいはずで、構えられると少し難しいことになったのでしょう。山口から見れば、サイドチェンジをされても、その後でスライドすれば問題なく、少しスライドが遅れても3人の壁で最後に跳ね返してしまえばいいという流れになっていたと感じています。
もちろん危ないシーンはあって関のスーパーセーブで防ぐことができましたが、それも含めて、いつ得点を取られてもおかしくないという展開ではなかったように思います。
ただ、前半15分以降でも強めにプレスをかけてボールを奪いに行くシーンはあり、どこまで意図的だったのかを判断するのは、非常に難しいところです。後半は、下がる意識を強めながらも交代選手の投入でギアを上げていきました。
とはいえ、山口からアクションを起こさない方がうまくいきそうな流れとなり、非保持は我慢の展開となりました。
試合全体の流れと決定機と
では、ボール保持はどうだったのかというと、こちらも我慢の展開となりました。試合後の監督コメントでもありましたが、北九州が想定よりも積極的にプレスに来ず、狙いたいスペースが狙えない状況になっていたようです。そこに面食らっていたこともあったのか、時より行われる北九州のハイプレスに対しても、苦しんでいるように見えました。
いつもの北九州のプレスはもっと強めなのだと思いますが、22分のビルドアップなんかはその例として挙げられるでしょう。
山口としては、北九州行うハイプレスへの回答をなかなか見つけられないような展開となっていきました。それでも、29分にこの試合イチ、下手したら今シーズンここまでで一番の崩しで浮田の決定機を演出するなど、ポイントポイントで良いシーンを作るのですが、それも北九州が構えている中でのシーンでした。
後半は、自陣でボールを奪ってからのカウンターでいくつかゴール前に迫りましたが、自分たちでボールを持ちながら、前半29分のシーンと同等レベルの決定機を作り出すことはできませんでした。
自分たちから打開するということ
ここまで振り返ってきたように、非常に膠着した試合展開となりました。その中で打開の策を持っていたのは北九州側だったと思います。ハイプレスを仕掛ければうまくいきそうなのは北九州の方であったと思いますし、サイドチェンジの後もう1つ工夫ができれば得点に結びつけられそうな展開だったのも北九州でした。
山口としては、ボールを奪いに行くアクションは起こさない方がベターで、ボール保持も北九州にプレスに来られたら、もっと苦しいかったかもしれない試合でした。
非常に膠着していてお互いになかなか打開ができないという点で言うと、将棋でいうところの千日手のような展開だったと言えるでしょう。山口としては、その流れを自ら打開する方法が難しく、千日手を歓迎せざるを得ない、そんな試合だったように感じました。
次節の対戦相手は京都です。この3連戦で最も力のあるチームだと言えるでしょう。その京都相手にどれだけの試合が見せられるのか、真価が問われる一戦になります。
*文中敬称略
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