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J2リーグ 第27節 レノファ山口FC vs モンテディオ山形 感想

2021年シーズンのレノファ山口の26試合目、モンテディオ山形との試合は2-1で勝利となりました。今回はその試合の感想です。


前回対戦からのマイナーチェンジ

クラモフスキー体制リーグ戦負けなしだった山形に最初に土を付けたのは山口でした。この試合の山口のボール保持については2点目の得点シーンぐらいの言及として、個人的に面白かったと感じた山形のボール保持に対する山口の非保持を振り返ってみようと思います。

前節のスタメンから草野・島屋・石川・田中渉の4名を入れ替えた山口は、5-2-1-2の形で守備をスタートさせていたように見えました。2CBに対して草野と島屋が、保持では4-1-4-1気味になる山形のアンカーに対して池上がマークを行う形です。山形もメンバーを3名ほど入れ替えてきましたが、事前のインプット通りに入ることが出来たのではないかと思います。

ただ、試合の立ち上がりはいくつかの決定機を山形が作ります。2分、10分とクロスから山口のゴールを脅かしていきます。ここで言及したいのが、2分のシーンです。ここは自陣に押し込まれて山口の左サイドから攻撃をされていました。その中で最終的に右側からクロスを上げられてヘディングで合わせかけられました。

ポイントは左から右に展開される際にフリーの山田拓巳を経由しているところにあります。敵陣で嵌めに行こうとした場合に加え、自陣で押し込まれた場合にも相手のサイドバックを誰が捕まえるかは難しい問題です。押し込まれているので尚更大変になるのですが、ここで素早く加藤に展開されたことで、川井との1vs1を仕掛けられクロスを上げられてしまいました。

このシーンのように、サイドからの攻撃をどのように防ぐかということが山口のこの試合の一つのテーマだったと思いました。4-1-4-1の相手に対して5-2-1-2で守る山口としては、内側のマークはつきやすい状況となっています。ここで難しいのが外側のマークで、特にWGの中原や加藤が大外に張っていることが多いため、WBの川井や石川が彼らにマークせざるを得ない状況になると、山形のSBを誰が捕まえるかという問題が浮上します。

サイドのマークについては前回対戦でもポイントになった攻防ですが、山口は前回の5-3-2から4-4-2気味でプレスをかける形とは少し異なるシステムでしたので、今回は今回でまたポイントになってきました。

試合の立ち上がりは山田拓巳に対して田中陸が出て行ったり、川井が遅れて出て行ったりしていましたが、最終的には山形の左サイドに対しては川井が前に出て、右サイドに対しては島屋が下がって対応することで落ち着いたように見えました。

山形の攻撃を抑えるために、細かく見ていくと様々な形で対応しようとしているように見えましたが、ポイントは池上にはアンカーの南を意識するために真ん中にいてもらう、IH気味に立つ藤田や中村を田中陸と田中渉で対応、これによって真ん中からのルートを断つことだったのではないでしょうか。サイドからはある程度運ばれても最終的に中で跳ね返せば良いという考えもあって、今回のような守り方になっていたのではないかと想像しました。

なかなか山形のテンポが上がっていかないように見え、ある程度守れる兆しが見えてきた中で、陣地回復のために前残りをさせていた草野がファウルを受けて獲得します。そのFKから先制点を挙げて、前半を折り返すことができました。

山口も攻撃面ではなかなか形を出すことができていませんでしたが、迫力のある攻撃を繰り出してくる山形に対して、最善を尽くした対応が見られていた前半だったのではないでしょうか。


攻撃におけるテンポとルート選択

後半も立ち上がりから山形が攻勢を見せますが、なかなかゴールまでには至りません。山口としてはセットした守備を崩されたというよりは中盤のボールの奪い合いで負けてしまったり、切り替えが遅く自分たちの陣形が整う前に攻められたりという形でした。

得点が欲しい山形は53分に山田康太を投入します。そして53分にいきなり彼が投入された意味が分かるプレーが飛び出しました。ボールを受けた後の素早い前線へのスルーパスです。ここは関の素晴らしい飛び出しで事なきを得ましたが、ボールを受けてからパスまでのテンポの速さが山田康太なのだと感じさせられたシーンでした。59分や66分のシーンなんかもそうですね。

山形に対しては、攻撃の際のテンポの速さと直線的なルート選択が特徴的だという印象を持っています。相手の守備陣形が整う前にゴールに対して直線的にアクションを起こし、パスを入れていくことで、仮にうまくいかなくても素早い切り替えから敵陣でボールを奪い返し、相手を押し込む戦いが実現できます。だからこそ、アクションが止まらないし、そこを見逃さないでパスが出てきます。

これがクラモフスキー監督の山形という印象だったのですが、テンポの速さと直線的なルート選択を体現するためには、山田康太という存在が非常に重要なのではないでしょうか。彼がそれを最も体現できる選手であり、彼がいることでチーム全体にリズムが生まれていくような印象を受けました。

彼が不在の時はスペシャルな水準で体現できる選手が他にいないため、チーム全体としてなかなかリズムが生まれていかないのではないかと感じました。前半のチャンスはサイドからクロスがほとんどでしたし、これがダメだという訳ではないですが、本来の山形ならもう少し直線的にチャンスが作れていたのではないでしょうか。

山田康太が投入されてからテンポが上がったように見えましたし、現状は彼のリズムが山形のリズムであると思いました。

同点シーンは山田康太は直接的に関与していませんでしたが、投入から3分後に生まれました。この場面は瞬間的に池上が南と山田拓巳との1vs2の局面を作られてしまい、山田拓巳に自由に展開されたところで勝負ありでした。

同点に追いつき山形が畳みかけるかと思われましたが、勝ち越しゴールを奪ったのは山口でした。自陣からのボール運びで生まれたゴールであり、待ちに待ったゴールとも言えるのではないでしょうか。

山形の攻撃を関がキャッチして抑えたところからスタートです。山形の陣形が整いきらないうちに渡部から佐藤にボールが渡り、既に山形のファーストラインを越えることに成功しています。佐藤はフリーでボールを持ち運びながらボランチの間を通るパスで草野に当て、再びボールを受けます。一度中に収縮させたので、今度は左サイドへ展開、石川が相手に向かってドリブル、島屋が縦に抜けられるポジションを取っています。石川は相手にボールを奪われそうになりますが、自分の元にボールがこぼれてくるラッキーがあり、右サイドの川井へ展開します。川井はこの時点でペナルティエリア内に進入できており、マイナス方向へのクロスから草野が潰れて池上のゴールとなりました。

石川のところでラッキーがありましたが、スムーズなボール運びから一気のスピードアップで奪ったゴールでした。シーズン当初からやってきたことがうまく表現できたシーンの一つと言えるのではないでしょうか。

試合終盤は山口は5-4-1気味のバランスで守りながら逃げ切りを図ります。少しずつオープンになっていく中で、山形が同点を目指し攻撃を仕掛け、決定機もいくつか作りました。しかし、ゴールには至らずタイムアップとなりました。


力のある山形に対し、完璧な内容とは言えないまでも出来る限りの対抗を見せ掴んだ勝点3。この結果がどれだけ自信を与えてくれるかは分かりませんが、チームを前進させるには十分なものだと思います。

次節は栃木との対戦、順位が近い相手との直接対決となります。群馬戦の反省を生かして内容と結果を期待したいと思います。


*文中敬称略

*この試合のハイライトはこちら




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