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ファイティングポーズを示せるか 〜J2リーグ第5節 徳島ヴォルティスvsレノファ山口FC 備忘録〜

悪夢の3連敗となってしまいました・・・。

2020年J2リーグ第5節徳島ヴォルティスvsレノファ山口FCの試合の振り返りとなります。

今節取り上げたシーン
16分7秒〜34秒 清武から垣田への背後へのパス
17分57秒〜18分49秒 徳島のビルドアップから藤田のコーナーキック奪取
22分40秒〜53秒 垣田のゴールキック奪取
24分52秒〜25分25秒 高と高井の関係で背後を取りかけたシーン



悪くない試合の入りで喫した2失点

0-4での敗戦ということで山口のプレーがどうだったのかにフォーカスしても良いのかもしれませんが、まず徳島にしてやられた部分、特に垣田の存在について述べておきたいと思います。彼を生かすチームとしての設計と彼個人の質の高さにやられてしまったという思いが見返してみて強くなりました。

後述もしますが、決して山口の試合の入りが悪かったとは思えません。徳島のボール保持の際、中盤で構えながらプレスを伺う動きでゴールを守ることはできていたと思います。ただ、その後の垣田が絡んだ3つのプレー(垣田のゴールを含めると4つ)をきっかけに2点のビハインドを一瞬で背負うことになってしまいました。

1つ目は16分、左サイドの清武の1本のパスで垣田が背後に抜け出したプレーです。それまで山口は自分たちの前で徳島にボールを持たせていたのですが、清武の1本のパスと垣田の抜け出しでディフェンスラインの裏を取られ、コーナーキックを取られてしまいました。このシーンで垣田と山口のCBの駆け引きが映っていないのが残念ですが、垣田の抜け出しの巧みさもあれば山口のCBの対応がどうだったのかという要素もあるのではないかと思います。このプレーで背後を取られたこともあってか、少しずつ自陣に押し込まれていくようになっていきました。

2つ目は18分、藤田が佐藤に当ててコーナーキックを奪った場面です。こちらは徳島が最終ラインでのビルドアップからサイドの深い位置に進入しコーナーキックを奪ったプレーなのですが、山口が構えて守る中で徳島が一気に前進できたのは内田から垣田へのパスがきっかけでした。

18分丁度あたりから徳島は左サイドでのスローインから最終ラインにボールを下げ、前進の機会を伺います。左から真ん中から攻めるように見せておきながら18分30秒で石井から右の内田にパスが出ます。この時に高井が少し内田に圧力をかけようと前へ詰めていくのですが、背後のパスコースが消せていませんでした。瞬間的に空いた縦パスのコースを徳島が見逃すはずもなく内田からいいタイミングで顔を出した垣田にボールが入ります。ここで垣田は確実にボールを収め時間を作ります。18分33秒の垣田がボールをキープしている時には既に岩尾が、垣田に対応している菊地の背後のスペースへ飛び出そうと走り始めていて池上の前を取っています。この辺りにチームとしての共通意識を感じることができます。そして、垣田が藤田にボールを落としその岩尾にボールを供給し、最終的には藤田がコーナーキックを獲得しました。

結果的にはこのコーナーの流れからディフェンスラインを押し上げることが1度もできず、1分後に失点を喫してしまいました。

3つ目は得点直後に垣田自身がコーナーキックを奪ったプレーです。これは彼の強さが出たシーンでした。山口のクロスに対するクリアボールの競り合いで安在を弾き飛ばしドリブルを開始、菊地と高の2人に対応されながらも前進していってコーナーを獲得しました。このコーナーから2点目を奪ったわけですから非常に大きなプレーとなりました。

裏への抜け出し、ポストプレーへの関わり方とキープ力、強さを生かしたゴリゴリドリブルとこの短い時間で多彩なプレーを見せ2得点に絡みました。山口としては、彼をこの3つの場面だけではなく試合を通じて止めることができなかったことが有利を取られてしまった要因の1つだと思いますが、彼を含めた徳島のプレーがお見事だったと言わざるを得ない部分も大きいと感じています。


自分たちのターンにするために必要なビルドアップ

ここから山口の話になりますが、この試合で残しておきたいことは今見てきたように2点を取られたことではなくその後の振る舞いの方にあると感じています。正直、2失点は徳島に上回られた要素も強いと思っていますし仕方がなかった部分もあると思います。ただ、まだ20分ちょっとしか経ってない状況で時間が十分にあったにも関わらず、ほとんど抵抗できなかったところが気になりました。

その前に先ほども述べましたが、試合の入りは悪くなかったという話をしたいと思います。徳島のビルドアップに対し、山口のファーストラインのイウリと池上はセンターサークル付近に立ち、構えて中を通させないように立ちます。これで徳島の足を一度止めてから少しずつ圧力をかけていき、かけきれなさそうであれば我慢して戻ることで徳島の最終ラインに出しどころを考えさせることができていました。これは今年の徳島がまだ少し困っているように感じられる部分で、前節の琉球戦でも4-5-1で中盤に構えられて中を締められ、そこから少しずつ圧力をかけてこられるとなかなか効果的に前進できていなかったように思います。それは、後ろの選手の運ぶプレーが少なく前線の選手が相手のブロックの前に下りてきてしまう部分にあると思っています。

徳島にそういった部分もあってか、1分の少し圧力を強めた守備や14分のボール奪取など、良い場面を山口は作れていたと思います。ただ、そこで2点を取られてしまいました。1-0であれば同じようなスタンスで試合を進めていくこともできたかもしれませんが、その時間があまりにも短く一瞬で2点ビハインドになってしまったことでプランが崩れてしまったのだろうと推測します。

それはボールを奪いに行かなければならなくなったからです。2点のビハインドをひっくり返して勝利するためにある程度奪いに行って攻勢を強める必要が出てきてしまいました。そうなると、徳島のピッチを広く使って空いたスペースを的確に突いてゴールに迫るプレーを引き出すことになってしまいます。ここでボールを奪い切れないのは徳島相手では仕方が無い面もあると思います。だからこそ、この状況をひっくり返すために重要なことは、徳島がミスをしたり、シュートが外れたりしてマイボールになった時にいかに効果的なプレーができるかということだったはずです。つまり、ボール保持時のプレーが重要なはずであり、それが山口が反撃の機会を生み出せなかった大きな要因の1つだと感じています。

そしてまたここで戻ってくるのがビルドアップがどうだったのかという話題です。磐田戦で改善が見られたように思われたビルドアップでしたが、徳島戦ではまたうまくいかなかったのではないでしょうか。ここで徳島に嵌められ続け、前進できなかったことが試合を通してずっと徳島のターンだったように感じられた要因だと思います。1つは高が負傷でいなくなってしまったことが影響しているはずです。彼は相手を剥がせる選手ですから彼がいなくなったことで個人での打開を封じられてしまいました。

ただ、本当に気になるのは徳島の4-4-2の陣形に対して特に変化も見せず4-2-3-1のままビルドアップを試み前進できていないことです。ビルドアップの場面に限定すると、徳島の2トップに対して2CB2枚(+キーパー)でビルドアップをし続けようとしているところです。山口は相手の2トップに対し2CBと数的同数の状況でビルドアップしようとしています。ここでキーパーの吉満を使って+1を作ることができれば良いのでしょうが、それほど効果はなく数的有利の状況が作れず当たり前のように嵌められています。もちろん何でもかんでも+1を作るためにボランチが下りてくるべきとは思っていないのですが、これだけ苦しそうにしているのならば下りても良いのではと思ってしまいます。

例えば、2失点を喫した直後の25分のシーンでは高が最終ラインに下りてビルドアップを見せます。高が下りることによって西谷を引きつけ、垣田の足を止めることに成功し、25分9秒で吉満からボールを受けた高は前を向くことができています。そして佐藤にマークしていた鈴木の背後のスペースで待っていた高井に高からパスが出て前進することができました。ここで高井が1発で前を向けずに少しもたついたことと徳島の戻りが速かったことで大チャンスにはなりませんでしたが、ビルドアップからの前進という意味では高が下りたことによって生まれた効果的なシーンだったと思います。

このようにボランチが下りても効果的な前進ができるのであれば、やっても良いのではないかと思います。もちろんこのシーンだけ抽出している私の見せ方が印象操作的になっている部分もあると思いますし、実際ヘナンが入った直後、彼が下りてビルドアップをしようとして失敗しているので一概に下りろとは言えません。おそらく何か狙いがあって2CBでビルドアップをしているはずですので、その狙いを見つけたいと思いますが、ビルドアップの部分は何にせよ早急に解決が必要なところです。


求められるリバウンドメンタリティーとベンチで見ていたあの選手の存在

再開後4試合勝利なし、今節は0-4での大敗とチーム状況としては考え得る限り最悪かもしれません。そして次節の琉球戦は中2日でやってきてしまいます。琉球は未だリーグ戦の勝利がありませんが、徳島戦を見る限り悪いサッカーをしているわけではなく手強い相手であると思います。

このような状況で試されるのはリバウンドメンタリティーのはずです。この試合のことを振り返る間もなく琉球戦がやってくるわけですから、この試合のことはいったん忘れてやるしかない状況です。ここで沈むのか立ち上がるのか、今後のシーズンの重要な分岐点となるでしょう。

山口にはこのような状況でも反骨心を出してプレーできる選手がいると思います。特にパウロや村田、古賀といった面々は逆境を大きな力に変えそうな雰囲気を持っていると感じています。そして、徳島戦の試合中から試合後に思い起こされたのが吉濱についてです。この試合ベンチに入りながらフィールドプレーヤーで唯一出場機会を得られなかった彼はベンチで何を感じていたのでしょうか。今シーズンは全て途中出場ですが、出場すればチームのために効果的なプレーを披露していると思います。私としてもここまでの彼のプレーを見て大きな期待を持っているのですが、なかなか輝く機会がやってきません。練習でのパフォーマンスが足りていないのかもしれませんが、こんな時にチームを救ってくれるのは彼なのではないかと思っています。

今年の吉濱なら、ベンチから見ていたこの試合で感じたものを琉球戦のピッチで表現しチームを救ってくれるはずです。


今の状況はまさに「GO CRAZY」を体現できるかどうかが試されているに違いありません。全員でファイティングポーズを示しましょう。


*文中敬称略



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