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チームの成長を感じて残り10試合へ 〜J2リーグ第32節 レノファ山口FC vs 愛媛FC 振り返り〜

2019年Jリーグ第32節 レノファ山口FC vs 愛媛FCの試合は,2-1でレノファ山口FCの勝利となりました。今回はその試合の振り返りです。

この試合のプレビューはこちらです。


山口の先制点のきっかけを振り返る

連敗を3で止めた山口ですが,その要因の1つは先制点を奪い追加点を取れたことにあります。これは間違い無いでしょう。特に早い時間に奪うことができた先制点は非常に良いゴールでした。個人的にも好きなゴールの1つです。ですから,まずこの先制点を振り返りたいと思います。

三幸の先制点は前半12分に生まれました。当然ゴールに直接繋がった佐藤のサイドチェンジや池上のトラップといったプレーに焦点を当てても良いのですが,ここは12分に生まれたゴールの起点となったおよそ2分前の前半9分のプレーに焦点を当てたいと思います。

そのプレーとは9分40秒頃の山口のゴールキックです。私はこのゴールキックが先制点のきっかけになったと考えています。どういったプレーだったかは映像を見てもられば良いと思いますが,簡単に言うと山口がCBがペナルティエリア内に入って繋いでいこうという姿勢を見せ,それに対して愛媛が前線からプレスをかけられるような配置にしたところを吉満が前線の宮代を狙って蹴った,そのこぼれ球を池上が拾って敵陣に進入したというプレーです。「簡単に言うと〜」とか言っておいて全然簡単に書けていないのですが,このまま進みます笑。

先制点はこのプレーで簡単に敵陣に進入できたことで愛媛を押し込めたところから始まっていますのでこのゴールキックがきっかけだと言えると思います。

ここで考えたいことがあります。私はゴールキックがきっかけで生まれたゴールだと思うからこそこの愛媛戦の先制点が好きなのですが,なぜゴールキックがきっかけだと私の好きなゴールに認定されるのでしょうか

その理由は2つです。

①. vs愛媛を考えた時にキーパーからのロングボールで敵陣に進入することが有効な手だと感じていたから

②. ついにゴールキックが自分たちのゴールに繋がったから

1つ目に関しては,愛媛vs徳島を観た時に印象に残っていたことです。この試合の前半は徳島がボールを握る時間が長く愛媛がプレスでボールを奪うことがなかなかできていませんでした。その要因の1つが愛媛がプレスをかけようとしてもGKの梶川から一発のロングボールでFWの河田にボールが収まってプレスが無効化されてしまうからでした。これはこの試合の中で何回か見られたプレーでした。例えば8分のゴールキックなどがそうです。

この印象があったので9分40秒頃の山口のゴールキックを見た瞬間に「おっ?このゴールキックは準備していたのか?」とメモしたのであります。

つまり,「愛媛の試合を分析していく中で練習から準備されたプレーだったのではないか」と感じたことが好きなゴール認定される理由の1つになるわけです。

ただ,試合を全部振り返った時にこのゴールキックが愛媛対策として準備されたプレーだったとは思えないというのが正直な思いです。なぜなら,キックミスがあったからかもしれませんがこの後似たようなシーンが見られなかったからです。ですから,このゴールキックは「ペナルティエリア内で味方選手がパスを受けても良い」という新ルールが適用されている中で想定し練習していたプレーが出たというだけだと思っています。そのプレーが出た相手がたまたま愛媛だったのだろうという思いが強いです。

だからダメだとかがっかりというわけではもちろんありません。このプレーが出せたことに意味があります。それが2つ目の理由となってきます。ゴールキックが自分たちのゴールのきっかけになったことがなぜそんなにと思われる方もいると思いますがポイントは「ついに」という部分です。


今季山口の試合の振り返りをほぼ全試合書いてきているわけですが,その中でキーパーからのキックについて言及したことがありました。

この長崎戦の振り返りではキーパーのパントキックについて改善できるところがあるのではないかということを書きました。

岡山戦の振り返りでは,流れの中でのキーパーからロングボールについての重要性を書きました。

現代のサッカーではキーパーも攻撃の起点になることが求められます。これは現代のサッカーにおいて欠かせないことだと思います。その部分についてもっとできるのではないかと感じることがありこうやって試合の振り返りの時に書いてきました。

そんな中で愛媛戦ではキーパーからのデザインされたゴールキックがきっかけとなり先制点が生まれました。こういった文脈があって生まれたゴールだからこそ私の好きなゴールの1つになったのです。つまりチームの成長を感じることができたところに好きな理由があるということです。

ここまで先制点をきっかけとなったゴールキックのみに焦点を当ててきました。
ただ先制点の全てを改めて振り返ると,愛媛戦の先制点が生まれた理由はまずゴールキックで敵陣に進入できたことが1つです。そしてこの後のボール回しで相手の中盤の4枚を動かしたことがもう1つの理由です。これによって奪われたボールをすぐに奪い返すことができました。そして最後に佐藤と池上と三幸の質の高さです。この3つが合わさったことで生まれた素晴らしいゴールでした。


10番池上丈二の帰還

この試合の勝利において池上丈二の活躍について振り返ることは欠かせません。この試合は山口の10番がついに本当の意味で輝いた試合となったと思います。

思えば昨シーズンの前半戦,山口が安定して勝ち点を積み上げていったのは池上というピースがはまってからだったと思います。3トップと三幸については開幕から不動ではありましたがIHは色々な選手が務めていました。そのポジションでは大﨑淳矢や三幸,高橋壱晟,山下,丸岡満など多くの選手が起用されていました。その中で池上は5人目の選手として第10節の町田戦で初スタメンとなりました。そこから22節の金沢戦まで試合に出続けてシーズン途中に背番号が15から10に変更されるというほど活躍を見せていました。

ただ,この後は怪我があり長期離脱,復帰した後も今シーズンも含めて昨シーズンの時のような活躍は見られていなかったと思います。今シーズンも場面場面でFKから川井のゴールをアシストしたりなどの活躍もありましたが,輝きという面ではまだまだこんなもんじゃないという印象を持っていました。

しかし,愛媛戦では背番号10としてチームを勝利に導く活躍を見せてくれました。この試合の池上は輝いていたと私は思います。もちろん2つのアシストが勝利に直結したことは間違いありません。1アシスト目のトラップは見事でした。それだけではなく守備の面でも心揺さぶるプレーが何度もありました。

まず,2分から3分にかけての愛媛のビルドアップで前野に対して強い圧力をかけボール奪取のきっかけを作りました。次に9分20秒過ぎの下川の突破に対して神谷をうまく捨てて2vs1の状況を作り出しミスキックを川井とともに誘いました。この後の池上と川井のハイタッチは胸熱なポイントです。そして72分50秒の神谷に対するディフェンスも素晴らしかったです。スプリントで追いつき神谷が切り返すことを完璧に読み切って体を入れファウルを誘いました。

チームで守っている中でのプレーですが個人の強度が高い点が池上の良かったところだと思います。他にも愛媛のコーナーキックの後のカウンターで下川にイエローカードを出させるなどチームが苦しい時にも効果的なプレーを見せていました。

このようにチームを助けるプレーで勝利に貢献しました。完全復活と呼んでも良いとは思いますが,それは次の試合の後としましょう。次の試合でもチームを勝たせる活躍をした時に本当の完全復活となると思います。


後半愛媛に押し込まれた要因は西岡大輝にあり

ここまで山口の良かった面を振り返ってきましたが,試合を見た方は「良かったのは前半で後半は愛媛に押し込まれましたよね?ということはそんなに良かったとは言えないのでは?」と言った疑問を持つかもしれません。当然私もそう思う部分もあります。後半についてはもっとできたことがあったのではないかと感じることもあると思います。

ただ,試合を見返していく中で「単純に愛媛が良かったことが後半山口が押し込まれた要因だ」という気持ちが強くなっていきました。サッカーは当然相手があるスポーツですから相手が良かったことは認めてその中で何ができたかを語る必要があります。その点で言えば山口の対応は良かった方だと私は思っています。

ですから,ここからはまず愛媛が良くなった部分そしてそれに対する山口の対応について簡単に振り返っていきましょう。

愛媛が試合の中で良くなった要因は私の力では西岡大輝の投入だったところまでしか分かりませんでした!!もう正直にいきます!この試合の愛媛は西岡がいるかいないかで良い悪いが左右されていたと読み取ることで精一杯でした。

愛媛はいつもの3-4-2-1で試合に入り,その後前半の途中で4-4-2にシステムを変更しそこで山﨑に代えて西岡を投入そして後半はまた3-4-2-1に戻すという流れでした。同じ3-4-2-1でも後半になると長沼へのサイドチェンジからゴール前というシーンを何度も作り出せるようになったわけですが,何が違うかというとやはり西岡がいるかいないかだと思います。

では西岡がいると何が良くなったのかということですが,1つは西岡個人のスキルの高さによってチームが良くなったのだと考えます。西岡のボールの持ち方で山口はプレスにいっても剥がされる場面があり次第に前線からプレスをかけにくくなったと思います。

56分40秒のシーンではプレスに来る宮代をワンタッチで剥がし逆サイドに難なく展開しました。69分のシーンは背後へのボールに追いついてターンし縦パスを通しゴール前というチャンスを演出しました。

縦パスという面では53分の藤本への縦パスもお見事でした。この縦パスによって一気にスピードが上がり前貴之のイエローカードを誘いました。また,相手がプレスに来なければ自ら持ち運んでサイドの選手へロングパスを送ることもしていました。

こういったボールの運び方や配球の妙で山口のプレスを受けずにボールを前方に送ることでチームを助けていました。ここまでは西岡個人のスキルによるプレーを列挙してきましたが,西岡と山﨑とを比べた時に1つ気付いた事があります。それはパスを出した後のサポートの動きのバリエーションの違いです。山﨑は横の選手にパスを出した時に後方にサポートをする動きを見せるだけなのですが,西岡はそれだけではなく相手がプレスに来るとパスを横に出した後,前方に抜けてサポートをするのです。

つまり,パスを出した後に後ろに止まっているだけなのか前に走って前方でパスを受けようとするのかという違いです。

この前方の動きによって何が起きるかというと,相手の前向きのプレスの矢印をまとも見受けずに済む事になります。愛媛は西岡が前に動くと中盤の選手が後ろに下がるというクロスの動きが約束事になっています。すると,西岡にプレスにきた相手の1トップの選手が西岡の前への動きについていくと,後ろに下がった中盤の選手がフリーになりボールを楽に受けられるようになるのです。後ろからボールを運んで行きたい愛媛にとってこのクロスの動きは,相手のプレスを受けないために重要なプレーなのだろうと思いました。

山﨑から西岡に代わったことで山口のプレスがかかりづらくなった要因は理解いただけたでしょうか。西岡個人の質西岡と中盤の選手のクロスの動きの2つにあると思っています。

これに対して山口は後ろのスペースをまず埋めるという対応を見せました。それが5-4-1への変更です。この変更は前線からのプレスがかからなくなった状況では良い判断だったと思います。2-1でリードをしている状況でまず後ろのスペースを埋めてカウンターを狙うという判断はとてもよく理解できるものです。結果的にはカウンターでチャンスも作りながら2-1で逃げ切ったわけですから山口の対応は良い対応だったと思います。

リード時に押し込まれた場合にどういった対応で勝利を掴みとるのかという点では山口に成長が見られると思います。その対応がなかなかできずにひっくり返された試合がアウェイの栃木戦でした。これが7月の出来事です。その後は8月の水戸戦とこの愛媛戦と後半は押し込まれながらもリードを守って勝つことができています。

このように,先制して勝ち切ることはできるようになってきています。後は先制する試合をどれだけ増やすことができるのかということと先制されても逆転して勝つということが山口の成長ポイントとなるでしょう。残りはシーズン10試合です。1つでも多く勝つためにこの2つのポイントで成長できるかを見ていきたいと思います。


*文中敬称略





























































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