リレーエッセイ「アイドル」(連想#18)
コツコツと続けているリレーエッセイ。トミーくんが前回書いたエッセイは「ヒーロー」が題材だった。子供時代に私も好きだった特撮ヒーローの名前が次々に登場し、ニヤニヤしながら読ませてもらった。
フリーライターとして仕事をする中で、最近ではTV雑誌からの依頼で、スーパー戦隊や仮面ライダーの出演者にインタビューさせていただく機会がある。ヒーローを演じる若手俳優さんたちは、みんなキラキラしていて、エネルギッシュで、取材が終わる頃にはなんだか若返ったかのような気分になる。
彼らに「あなたが考える理想のヒーローとは?」と聞くと、「誰かが間違っていたらさりげなく指摘できる人」「電車で席を譲れる人」「自分が捨てたわけでもないゴミを拾える人」といった答えが返ってくることがある。必殺技でドカーン、ズバーンと悪を懲らしめるのではなく、身近なところから気持ち良い世の中を作れる人物こそがヒーローだ、といった役者さんたちの考え方がとても清々しい。
最近のヒーローものは、世界征服を企む悪の秘密結社のような純然たる悪と戦うようなあらすじのものは少なく、侵略者側にも正義があり、悪辣な行動にも深い理由がある場合が多い。そのハシリであり、私自身が一番好きなヒーローものこそが「ウルトラセブン」である。
幼少期は宇宙人や怪獣と戦うセブンの姿に興奮していただけだったが、中学校時代に全話しっかりと見直して、結果的に自分の人格形成にものすごく関わる作品になった。「ダークゾーン」「ノンマルトの使者」「零下140度の対決」「超兵器R1号」など、非常に考えさせられる作品が多く、何度見てもゾクゾクする。
大人になってからは仮面ライダー電王、仮面ライダー響鬼、仮面ライダー龍騎にハマった。非常にざっくりとしたまとめになるが、超人的な能力を発揮して奇跡を起こしてくれる存在、それがヒーローなのだと私は思う。ヒーローが活躍すれば、われわれはスカッとした感覚を得られると同時に、心の平穏や勝利の歓喜なども味わえる。
今回、トミーくんからリレーエッセイのバトンを受け取り、ヒーローと同じようなワクワク感をわれわれに運んでくれる存在はいないものか? と考えをめぐらせてみた。そして、すぐに「アイドル」というキーワードにたどりついた。必殺技を使って敵と戦う訳ではないけれど、衣装やメイクで変身して、歌、ダンス、おしゃべり、存在感で、人の心を明るくしてくれる。いつの時代もアイドルは奇跡的な存在だ。
ということで、今回のエッセイは「アイドル」をテーマに書き進める。立派なアイドル論を書けるほどの知識や、オタクを名乗れるほどの本格的な推し活経験はないので、私が好きだったアイドルを振り返りながら、そのときどきに感じていたことを書かせていただこうと思う。いま流行りの「推しの子」を見てから書こうかとも思ったが、あえて見ずに書く。
ヒーローに関する話題からの流れで、私が目撃した「アイドルが起こした奇跡」について、まずは人生でもっとも好きだったアイドルグループ「アイドリング!!!」のことから書かせてもらう。現在テレビで活躍中の朝日奈央さん、菊地亜美さんらが所属したグループだ。
アイドリング!!!の活動期間は、2006年から2015年までの9年間。グループには、私が応援しているサッカーチーム・FC東京の応援番組で長年リポーターを務めた橘ゆりかさんも所属していた。橘さんとの縁もあってか、アイドリング!!!はFC東京と度々コラボを行っている。FC東京のマスコットキャラクター「東京ドロンパ」にちなんだ「アイドロング!!!」名義で、ホーム味の素スタジアムに登場し「アイドロング!!!が来るとFC東京は負けない」という不敗神話を打ち立てていることも有名だ。アイドリング!!!を知る前からFC東京を応援していた私にとって、両者のコラボは完全なる「俺得」。こんなにうれしいことはない。
すでに活動休止しているアイドリング!!!だが、2023年にはFC東京を応援するべくアイドロング!!!として、味スタでの1日限定復活も実現した。
その味スタで奇跡が起きた。
2023年9月23日、FC東京は味の素スタジアムでサガン鳥栖と対戦。前半は、これまで私が見てきたなかでも何本かの指に入るようなグダグダな展開で、スコアは0-2に。監督の采配も冴えず、敗戦は決定的に思えた。ハーフタイムのゴール裏はお通夜のような雰囲気だったし、DAZNで自宅観戦していた私も「後半は見なくていいかな」と思うほどだった。
だがこの日の味スタには、アイドロング!!!がいた。一緒にFC東京を応援するアイドルグループ「わーすた」のメンバーとともにピッチサイドに現れたアイドロング!!!が、後半キックオフを待つどんよりムードのゴール裏へと向かう。すると、応援チャント「サマーライオン」の大合唱が自然発生した。
「サマーライオン」は2013年に発売されたアイドリング!!!にとって20作目のシングル曲。その替え歌が、いつからかFC東京の応援チャントとなってゴール裏に定着し、今日にいたっている。アイドリング!!!の面々も、自分たちの曲が形を変えながらも歌い継がれていることを好意的にとらえているようで、ゴール裏の大合唱に笑顔を見せ、腕を振り回し、飛び跳ねて応えてくれた。これで味スタの空気が一変した。
くすぶってた炎に火が付いたかのようにゴール裏の熱量が急上昇。それに呼応するかのように試合後半の選手たちが大躍動し、一気に試合をひっくり返した。そして3-2の逆転勝利!
その場にいる人を前向きにし、奇跡を呼び込む空気を作れる人たちーー、これこそがアイドルなんだ! と実感した瞬間だった。本人たちは、それほどの大仕事をしたという感じでもないのがまたいい。映画やドラマで、歌姫が戦地へ慰問し、兵士たちが奮い立つシーンが描かれることがあるが、その効能はバカにならないのだろう。
テレビで見ていただけでも感動したし、今思い出しても胸が熱くなる。あの日、実際にゴール裏にいたら号泣していたんじゃないだろうか。すでに第一線を退いたアイドリング!!!ではあるが、彼女たちのポテンシャルは一級品なのだと再確認できた。……という評価は、ひいき目が過ぎる自覚はあるけれど、それでも私は、アイドリング!!!は永遠に最高だと声を大にして叫びたい。
……という感じで、この後もおじさんが好きなアイドルについて語るキモい文章が続く。今回ばかりはどうか許してほしい。
アイドリング!!!の活動期間は、ちょうど私がバンドでプロデビューする夢を諦め、くさくさした気分で音楽を遠ざけ、やり場のないエネルギーをFC東京の応援に注いでいた時期に重なる。冠番組で、無茶な企画に体当たりで挑み、歌い、踊り、次第に成長していくアイドリング!!!を追うことは、私にとって大いなる癒しだった。
2011年発売のアイドリング!!!にとって16枚目のシングル曲「Don't think. Feel !!!」の歌詞にはこんな一節がある。
音楽から遠ざかり、何か物足りなさを感じていた私が、仲間からの呼びかけで再び音楽活動を開始した時期と、「Don't think. Feel !!!」の発売時期が重なる。夢に破れたからといって、大好きだった音楽を捨ててしまうのは違うんじゃないのか? 身の丈にあったやり方で、楽しく音楽とつきあっていけばそれでいいじゃないかーー。よし自分らしくやってみよう! 当時、私の心に芽生えたそんな思いが「Don't think. Feel !!!」の歌詞とリンクしている。そのことに気が付いたのは少し時間が経ってからだったが、繰り返し聞いていた影響があったのだと思う。
あまり知られていないが、アイドリング!!!には名曲が多い。コード進行も気が利いていたり、ピコピコ感やキラキラ感も個人的にちょうど良い。歌唱力の高いメンバー、歌声が魅力的なメンバーも多い。アルバムの収録曲もバラエティに富んでいて、王道アイドルソングからゴリゴリのデスメタルまで幅広い。音楽面での満足度も抜群である。
地上波、CS、オンデマンド(有料配信)で放送されていたアイドリング!!!の冠番組に、番組を手がける森洋介ディレクターの自宅が登場する会が度々あったが、そのお部屋(汚部屋!)には、私もトミーくんも大好きなバンド、有頂天の限定ボックス「STOP HAND IN HAND」が映り込んでいた。森Dは私の1学年上。きっと、私と同じような音楽遍歴を歩んできたのではないだろうか。その影響が、アイドリング!!!の音楽性にも及んでいるのだろうと推測している。
冠番組の面白さは格別だった。いままで見てきたテレビ番組のなかでベスト1を選べと言われたら、私は迷わずにフジテレビの「アイドリング!!!」を挙げる。グループ名がそのまま番組名。ときに「アイドリング!!!日記」と名前を変え、CS放送のダイジェスト版を地上波で放送するような時期もあったが、番組は毎回とてつもなく面白かった。番組MCのバカリズムさんによる容赦ないイジリに、必死に食らいつくメンバーたちの姿が笑いと感動を生んでいった。
クレイジーな企画も多かった。メンバーの谷澤恵里香さんがシャア・アズナブルのコスプレで工場見学に出向いて、他のメンバーにクイズを出題する「ヤザワ少佐の社会科偵察」。丸一日の絶食後に、前日に聞き出しておいた好きな食べ物を差し出したときの反応を見る「食欲の秋をもっと楽しもう 空腹は最高のスパイス」。フリートークにオチがなく、周囲を変な空気にしてしまうメンバーたちにスポットをあてた「神秘の世界に迫るング!!!」。活動休止決定後、新メンバー3人の加入が知らされるドッキリ企画では、現役メンバーの家族がアイドリング!!!入り(うち1人は2期メンバー酒井瞳さんの母親)、などなど。
一番好きな企画としては、相撲ナンバー1を決定するなかで幾多の爆笑とドラマを生んだ「アイドリング!!!大相撲」シリーズも捨てがたいが、個人的には「歌って祝おう」シリーズを推したい。和やかに童謡を合唱するメンバーを、バカリズムさんが妨害して大混乱が巻き起こる狂気の企画、バカリズムさんの本名=升野英知さんにちなんで、企画の通称は「升野地獄」。こんな番組は後にも先にも見たことがない。
最近の朝日さんの大活躍はめちゃくちゃうれしい。河村唯さんがAbemaTV「チャンスの時間」で千鳥さんにイジリ倒されている姿にも注目している。あるいきさつからセレッソ大阪のハーフタイムショーにメンバー数人で出演することになるもFC東京のユニフォームで乗り込んだ「東京の女」=橘さんも特別な存在だ。
基本的にはグループ全体が好きな「箱推し」だが、強いて挙げるなら14号・酒井瞳さんがイチ推しである。なんなら酒井さんが大ブレイクするのはこれからなのだと信じている。
歌、トーク、モデル業、ダンス、演技などなど、様々な分野で活躍するメンバーがいたなかで、酒井さんは実にバランスがよくオールマイティーカードのように立ち回っていた印象がある。
エースを生かすために汗もかくし、バカリズムさんのイジリにも屈せず笑顔で体当たりしていく。その姿がなんだかものすごくかっこ良かった。私が生涯聞いてきた全アイドルソングの中で一推しの「あこがれアドレイション」を歌っているのも酒井さんだ(相方的存在の河村さんとのデュエット曲)。身体能力が高く、相撲、腕相撲で横綱級の活躍をしていたのも印象に残っている。宮崎県訛りを生かした方言キャラという一面もあった。本人の念願だった故郷・宮崎県の観光大使就任や先ごろの結婚発表も、ファンとしてうれしいニュースだった。おめでとうございます!
突然だがサッカーに例えるなら、アイドリング!!!での酒井さんは運動量豊富なサイドバックか、または守備重視だけど大事な場面で相手ペナルティエリアでいい仕事をするボランチのようなイメージだ。サッカーを見ていてもそういう選手が好きなので、アイドルグループでも仕事人タイプや引き締め役を担うの人物を目で追ってしまう。自分がバンドのベーシストだったから、そういう考えになるのかもしれない。ベースはバンド内で地味な存在だけど、ちゃんとしないとサウンドが引き締まらない……的な感じ。
メンバーたちがセンターの座を競い合うアイドルグループももちろんアリだが、個人的にはメンバー同士がお互いの役割を果たしながら、各自の能力が掛け合わさってエネルギーが増幅していくグループが好きだ。
かつて、日本国内でアイドルといったら「ソロ」が主流だったが、その潮目が変わったのは1985年の、おニャン子クラブ誕生がきっかけだろう。おニャン子クラブ以前に、キャンディーズ、ピンクレディー、少女隊、セイントフォーなど少人数編成のグループアイドルはあった。だが、おニャン子クラブは2年間という短い活動期間ながら延べ50人以上のメンバーが在籍し、瞬間的にすさまじい熱量を放ってインパクトを残した。
人数が増えれば、人間模様も複雑化してグループが持つドラマ性が高まる。見る側も、1人くらいは好みのタイプが見つかるかも知れず、その結果、グループを応援するきっかけが生まれやすくなる。大所帯グループはアイドル界の大発明だったと言えるだろう。
実際には、テレビの深夜番組「オールナイトフジ」から誕生したオールナイターズの方が、大所帯グループとしては先だが、当時中学生だった私にとっては、夕方5時の番組「夕やけニャンニャン」を主戦場にするおニャン子クラブのほうが気になる存在だった。映画館に「おニャン子ザ・ムービー 危機イッパツ!」を観にいった覚えもある。好きな曲は「じゃあね」と「真っ赤な自転車」。でもそれ以上に、派生ユニット「うしろ指さされ組」の曲が好きで、「技ありっ!」「渚の『・・・・・』」は本当に素晴らしい。
私が通っていた中学校には、2学年上におニャン子クラブの会員番号35番・岡本貴子さんがいた。私が中1、岡本先輩は中3。面識はなかったが、岡本先輩は私の実家が長年利用していたお米屋さんの娘さんだった。学校の廊下ですれ違っても、妙な気恥ずかしさが先立ち、岡本先輩を横目でチラッと見るのが精一杯。「アイドルなんて興味ないし」的な中学男子特有のひねくれを発動させていた。
夕やけニャンニャンで、とんねるずさんにちょっかいを出されるシーンも多かった岡本先輩。グループ卒業後は芸能界を引退したとのこと。岡本先輩のおかげで、おニャン子クラブは、ものすごく近いような、逆に近づきがたいような、私にとっては不思議な距離感のグループだった。
当時の推しは高井麻巳子さん。岡本先輩が中学を卒業し、私が中二に進級してから、所属していた天文部に「高井麻巳子に似てる」と評判の後輩女子が入部してきた。その結果、気まずさから高井さんを推せなくなり、渡辺満里奈さんに推し変。誰にも高井推しを公言していない隠れファンだったので、別に推し変する必要なんてないのに。
おニャン子クラブについて、こんなに語るつもりはなかったんだけど、書き始めたら意外にも思い出がいくつもあった。語ろうと思えばまだまだ語れる。びっくりだ。
おニャン子クラブ以前、私が小学生だった1980年代前半には「たのきんトリオ」が大ブームだった。田原俊彦さん、野村義男さん、近藤真彦さん、名字の頭文字をとって「田・野・近=たのきん」。子供ながらに変な略し方だと思ったけれど、ちょっぴり変だからこそ印象に残るのだろう。
テレビっ子だった私は、たのきんトリオが出演する映画「青春グラフィティ スニーカーぶる〜す」の宣伝番組に煽られ、母親にねだって前売り券をに買ってもらった。観にいったのは、たぶん公開して間もない時期だったと思う。
映画館の周りは、たのきんトリオファンたちで長蛇の列。当時の映画館は入れ換え制ではないため、並んだからといっていつ入場できるのかわからず、待機列に並ぶ人たちのイライラはどんどん増幅していく。
母は結婚する前、その映画館の目の前に住んでいたのだという。完全なる「なじみの場所」だったようだが、こんな状況は初めてだと言い、多分キレていた。見たくもない映画を息子にねだられ、長蛇の列に並び続けなければならないのだからキレても仕方ない。そのまま我慢して並び続けたのか、日を改めたのか思い出せないが、スクリーンで観た覚えはある。しかし、ぶっちゃけ映画の内容は覚えていない。40年以上越しになるけれど、お母さんあのときはありがとう。
「たのきん」のあと、小5の頃にシブがき隊を好きになった。当時は、女性アイドルが次々にデビューした時代。歌番組やオールスター水泳大会も楽しく観ていたが、照れなのか、真面目さゆえか、ムッツリなのか、当時の私は女性アイドルを無意識に避けていた気がする。そんななか、新曲が出るたびにシブがき隊のレコ―ドを買っていた。アップテンポな曲調とエレキギター中心のアレンジ、男っぽい歌詞。シンプルにシブがき隊の楽曲を好きになったのだ。
「zokkon命」のイントロで、スピーカーを左右に行き来するヘリコプター風のシンセサウンドを耳にして「ステレオってこういうことなのか!」と教わった。ディスカウントストアで買った激安のカセットテープに「サムライニッポン」を録音した際には、曲ラストのスクラッチサウンドがガサガサしたノイズにしか聞こえず「なるほど、安物のカセットってこうなっちゃうのね」と、いい勉強になった。
シブがき隊を好きだったクラスメイトと一緒にオリジナルの振り付けを考えて、お楽しみ会で歌とダンスを披露したこともある。最後に加入した私はフッくん役だった。ヤッくん、モッくんに比べると、存在感控えめな存在感のフッくん。でもグループには欠かせない人物である。それがいい。私自身、当時もいまも、センターでグイグイ行くタイプではない。クラスメイトとのグループでフッくん役を任されたことで、人生が方向づいたのかもしれない(だいぶこじつけ)。わが音楽人生を振り返る上で、シブがき隊は重要な存在だ。
私がアイドルを好きになる条件として、曲が好みかどうかは譲れないポイントである。アイドリング!!!もシブがき隊も、iTunesに取り込んであるのでいまでも時々聞く。歌唱力に著しく難があるおニャン子クラブも、バックトラックがよくできているので、聞き応えはかなりのものだ。
アイドルソングの作り手はプロの職業作曲家、プロの編曲家、プロのスタジオミュージシャンたちである。たとえやっつけ仕事だったとしてもクオリティーは高い。話題作りのために、名のある作り手がアイドルソングに携わることもあり、そうなるとメンツを保つためにも楽曲のクオリティはおのずと高まる。
おニャン子ブームの後にバンドブームが到来し、私自身もエレキギターやエレキベースを手に取ってプロを目指した。独学で音楽理論を学び、流行りのバンドのサウンドを分析し……というプロセスを経たのち、子供時代に聞いていたアイドルソングを振り返って、その質の高さに度肝を抜かれた。松田聖子さん、中森明菜さんは、完全に後追いだが名曲だらけだ。
巨匠作曲家・筒美京平さんはアイドルシーンで数々の功績を残した。松任谷由実さんは「呉田軽穂」名義でアイドルに多数の楽曲提供を行っている。また、SMAPのアルバムに、アメリカで活躍する一線級のスタジオミュージシャンが多数参加していた話も有名だ。そういえば、私の愛聴曲でもある劇場版「機動戦士ガンダム」の主題歌「哀 戦士」「めぐりあい」を手掛けた井上大輔さんは、シブがき隊の曲を数多く手がけた作曲家だ。私はシブがき隊のファンである以前に井上さんのファンなのだろう。
80~90年代当時「アイドルなんてくだらない」という論調があった。いまも、そう思っている人は少なからずいるのではないだろうか。だがそれは、音楽の味わい方を知らない人たちの残念な声だと私は思っている。確かに「これはちょっと……」と思わざるを得ない曲はあるけれど、それはアイドルシーンに限った話ではない。
2000年代中頃からアイドルグループが大量に誕生し、地下アイドルやご当地アイドルといった、いわゆるインディーズ系の動きも活発になった。サブスクでの楽曲配信が手軽になり、チェキや会員制SNSなどでマネタイズもしやすい状況が整ったことで、いまや全国区の流通網や大手メディアとのつながりを持たなくてもアイドル活動は成り立つ。そんな一連の状況は、メジャーデビューにこだわらないロックバンドが自力で全国区の人気を獲得していった、バンドブーム後期のムーブメントと地続きな印象を受ける。
そして、アイドルたちの仕掛け人側には、バンドブーム世代を生きたツワモノたちの影が見え隠れする。培ってきた作曲術、レーベル運営術などが、アイドルとして輝きたいと願う少女たちの情熱と結びついて大きなエネルギーを生んでいるのではないだろうか。
シブがき隊を好きになり、おニャン子クラブがブームになった当時は、小泉今日子さん、菊池桃子さん、南野陽子さん、富田靖子さんも好きだった。きっかけはラジオ番組。小5~中学時代はラジオ番組の面白さにもはまり、テレビとは一味違う彼女たちのおしゃべりに心をつかまれた。
「キョンキョンランド」(文化放送)での小泉今日子さんは、歯に衣着せぬトークでアイドルのイメージを変えた。「あなたと星の上で」(ニッポン放送)の菊池桃子はほんわか癒し系。「ナンノこれしきっ!」(ニッポン放送)では、南野陽子さんの特撮ヒーロー愛に驚かされ、パーソナリティーが名著を朗読する「チャレンジ名作ライブラリー」では富田靖子さんの真っすぐな声の引き込まれた。
近年、ラジオの帝王とあだ名される伊集院光さんは、いつだったか番組内で『ラジオは話し手の姿が見えないからこそ、自分だけに声が届いているかのような感覚があるので、1対1で話しかけるようなしゃべりが大事』みたいなトークをされていた記憶がある。小学校高学年から中学生という多感な時期に、ラジオを通じてアイドルを好きになるのは、ごく自然なことだったのだと思う。おしゃべりのテンポ感、トークの方向性、話術、声の良さなども、私にとってアイドルを好きになる条件だ。
私が好きになったアイドルについて語り尽くす上では、モーニング娘。についても語る必要があるだろう。テレビ番組「ASAYAN」の中で「CD5万枚を手売りすればメジャーデビュー」という企画に挑んでいた頃は正直興味はなかったが、99年リリースの「真夏の光線」「ふるさと」あたりで「あれ? なんだか曲がいいぞ」と気になるように。
当時、私よりもモーニング娘。に詳しかったトミーくんから「今度新加入する後藤真希ちゃんは歌もうまいし、かわいいし、すごい」と言われた直後に7枚目のシングル「LOVEマシーン」がリリースされ、そのクオリティの高さに驚いたことも覚えている。ダンス☆マンが手がけたファンキーなディスコサウンドも、いままでのアイドルソングにはないテイストだったし、「日本の未来はWow Wow Wow Wow 、世界がうらやむ Yeah Yeah Yeah Yeah ♪」という歌詞の斬新さたるや、とんでもないインパクトだった。
「ザ☆ピ~ス!」の「選挙の日ってうちじゃなぜか投票行って外食するんだ♪」という歌詞にも驚いた。しかもその後「好きな人が優しかった♪」である。身近な幸せを種類かまわず詰め込み、行間にある他の幸せを受け手に想像させる構造が見事だ。こんなにもピースフルな歌詞は凡人には書けない。また、派生ユニット・プッチモニの「ちょこっとLOVE」の歌詞にある「恋という字を辞書でひいたぞ あなたの名前そこに足しておいたぞ」もすごい。吾輩の辞書に不可能の文字はないと語ったナポレオンもびっくりだ。プロデューサー・つんく♂さんの作詞センスは、モーニング娘。の大きな武器。大好きだ。
そして私が一番好きな曲は「ここにいるぜぇ!」である。軽快なバンドサウンドと前向きな歌詞が、自分の好みにピッタリくる。
4thアルバムに収録されている「いきまっしょい!」も名曲だ。ダンサブルな4つ打ちドラムと、ユニークなベースライン、エグみのあるシンセサウンドが融合したバックトラックに加えて、10~20代女子の等身大の悩みや矜持が詰め込まれ歌詞も絶妙である。サビの「いきまっしょい♪」の畳みかけもテンションが上がる。
モーニング娘。は、楽曲のクオリティの高さに加えて、本エッセイの序盤で語った「メンバー同士の関係性によって織りなされるドラマの面白さ」いう面でも興味深いグループである。2期メンバー加入時のグループ内のヒリヒリ感を、テレビ番組で映し出したのは斬新だった。いまでは当たり前だが、グループ内に「同期」という概念が生まれたのは、私が知る限りモーニング娘。が初めて。テコ入れのための思いつきだったのか、当初からのシナリオ通りなのかはともかく、この方式もアイドル界における大発明だと言えるだろう。当時は宝塚歌劇団みたいだな、と思った。
私が詳しいのは2004年ごろ、5期メンバーが加入したあたりまでである。またもサッカーに例えるが、エースの安倍なつみさんと後藤真希さんがツートップ、リーダーの中澤裕子さんがトップ下に君臨、いじられキャラだけど実は歌唱力抜群の保田圭さんと、小柄な体型を感じさせないダイナミックなダンスやバラエティ番組での器用さが目立つ矢口真里さんはダブルボランチ、みたいなイメージでグループを見ていた。
モーニング娘。は、CDを買った以外に、メンバー何人かの写真集を買った。コンビニで売られていた全100種越えのトレカもコンプリートした。いまどきの推し活としてはだいぶ物足りないように思えるが、握手券ビジネスが流行する前は、CDやレコードを買う以外にはコンサートを見に行ってグッズを買ったり、会費を払ってファンクラブに入ったりするのが、推し活の定番だった印象がある。番組にリクエストはがきを送るなんてのも当時はあった。
アイドルに費やした時間や金額でファン同士がマウントを取り合うのを見聞きするのは苦手だ。また私は基本的に、アイドルのコンサートやイベントに行かないと決めている。一度行き始めてしまうと、歯止めが利かなくなる性格なのを自分で分かっているので、ある種の決意を持って「行かない」と決めた。
味スタで、アイドロング!!!のハイタッチ会に行ったことはあるが、あれはサッカーを見に行ったらアイドロング!!!がいた、というテイなのでセーフ。また、アイドリング!!!のラストコンサートで武道館にいったが、あれも「これがラストだから、このあと際限なく通い続ける心配がない」という状況だったので、特例としてOKとした。言い訳が見苦しいが。
いまとなっては、50歳過ぎのおっさんが、若い子たちが集まる場所に行って空気を壊してしまいたくない気持ちも強い。また、握手会やファンミなどは、自分ごときに時間を割いてもらうのが申し訳ないような気がしてしまう。私の推し活は、距離感を保ったままでほどほどに小金を落とし、SNSのいいね!ボタンを押す程度だ。その程度じゃファンを名乗る資格はないかもしれないが、アイドルを推すときは末席に身を置いているような感覚で応援している。推しから認知されたいという願望もない。
調べてみたら「推しから認知されたくないファン」は意外に多いようだ。「認知されたら推しから嫌われるかもしれないからいまのままでいい」とか、「何かがきっかけで特別扱いされて、他のファンから妬まれるかもしれず心配」など。その心理にもいろいろな種類があるらしい。
認知されたい願望はないが、フリーライターとして好きなアイドルを取材したい気持ちはある。駆け出しの頃のように、思い入れの強い相手を前にガチガチになってしまうことはなくなったが、それでもウキウキと緊張で心がぐちゃぐちゃになるので、引き受けるには覚悟が必要だ。
また、作詞・作曲、DTMが趣味なので、あわよくばアイドルに楽曲提供できないものか、という思いもある。しかし、最新のDTM事情に疎いため、近頃は尻込みがちだ。いつか縁があれば。
誰が言い出したのか「推しは推せるときに推せ」と言われている。至言だと思う。アイドルだって、推されている実感がなければ頑張れないだろうし、好きなアイドルに一日でも長く輝いてもらうためには推してなんぼだろう。だが、握手会、ツーショットチェキ、配信でギフトを贈ると名前を呼ばれる、……みたいな方法とは違うやり方でアイドルに推したいのだ。その点、CDや写真集はちょうど良かった。
モーニング娘。は、CDや写真集を買うことで応援できている実感があった。握手券付きではなかったからこそ、CDを大人買いする必要もなく、ある意味平和。社会現象的な人気だったため、コンサート会場に行かなくてもコンビニや文房具店などでもグッズを買えた。
モーニング娘。は、最初は「箱推し」だったが、ほどなくしてグループを仕切る中澤裕子さんから目が離せなくなった。当時、自分もロックバンドでリーダーだったので、どこか自分を重ねていたのだと思う。やがて、中澤さんがグループ内で矢口真里さんをかわいがっていることを知り、矢口さんに注目するようになった。
バラエティ番組での気の利いた発言や空気を読む力、小柄ゆえに他のメンバーと動きを合わせるために大振りでダンスをする様子、何気に高い歌唱力と声の良さなどに惹かれ、2000年頃からは矢口さんを推すように。それ以来の矢口推しである。矢口さんが元気そうにしている様子を見ると、こちらも元気になる。トーク、歌、パーソナリティーなどなど、矢口さんは私がアイドルに求める要素を全部持っているパーフェクトな存在だ。きっとこの先も揺るがずナンバー1である。
恋多き女性と噂され、スキャンダルもあった。しかし、遠く離れていても魅力的に思える人物が、近くにいる他の誰かからモテちゃうのは仕方がないことだ。そもそも恋愛に無縁なアイドルなんてファンタジーが過ぎる。また、人間が誘惑に弱いのもしょうがない。一般的にはどうかしている考えなのかもしれないけれど、例のスキャンダルは「人間らしいなぁ」と思えた。傷つく人がいるのはよくないけれど、誰しも生きていれば人を傷つけてしまうことはある、と私は思う。
たくさんの元気をもらっていたのに、矢口さんが芸能活動をお休みしていた間、「何があってもファンです」と心の中で思い続ける以外、私には何もできなかった。申し訳ない。
矢口さんの芸能活動再開は本当にうれしかった。母となり、以前とは違った温かさ、強さ、幸せオーラをまとっている感じもステキだ。過去の出来事をいじられても気丈に振る舞い、むしろ笑いに変えていく。矢口さんのそんなド根性スタイルには胸を打たれるばかりである。YouTube「佐久間宣行のNOBROCK TV」で、矢口さんが後輩アイドルに「かくれんぼNGドッキリ」を仕掛ける様子はすばらしかった。笑った。企画した佐久間さんもクレイジーだが、やり切った矢口さんが強すぎる。
矢口さんは、2016年から2022年までAbemaTVで「火曜TheNIGHT」という2時間枠の深夜生放送番組でパーソナリティーを務めていた。番組は、毎週一組の駆け出しアイドルをゲストに招き、魅力を掘り下げていく構成。番組を通じて推しの魅力を再発見できたファンも多かっただろうし、新たなアイドルと出会えた人も多かっただろう。番組主催のフェスも行った。放送期間中のアイドルシーンへの矢口さんの貢献度は高い。
矢口さんについて語り足りないけれど、おまけとしてこの動画を置いておきます。
2005年に矢口さんがモーニング娘。を去り、ゆっくりとスライドするかのように私の興味はアイドリング!!!へ。その一方で、ハロー!プロジェクトの駆け出しグループだった「スマイレージ(S/mileage)」の1stアルバムとDVD(PV集)をヘヴィロテしていた時期もあった。2011年に仕事でメンバーを取材することになったのがきっかけだったが、つんく♂さんの作るメロディ、歌詞の良さ、アレンジチームの本気度に脱帽しまくりだった。
「夢見る15歳」「ぁまのじゃく」「あすはデートなのに、今すぐ声が聞きたい」も名曲だけど、私が一番好きなのは「同じ時給で働く友達の美人ママ」。バンドサウンドとシンセのピコピコ感のバランスが完全に自分好みだ。
そんなわけで「よし、これからはスマイレージも推そう!」と思ったのだが、その直後にメンバー4人中2人が立て続けにグループを卒業。さらに、グループ名も変更や新メンバーが大量加入が発表され、あっという間に気持ちが冷めてしまった。そういうこともある。好きになったタイミングが悪かった。
本エッセイにて、自分の推し遍歴を垂れ流しているわけだが、友人、知人、仲間うちで、私に「アイドル好き」というイメージを持っている人はそれほど多くないと思う。だが、物心ついてからは、気になるアイドルが常にいる人生である。推し活に傾けるエネルギー量は一般的なアイドルヲタにほど遠いため、私自身も「自分がアイドル好き」だという自覚は薄かったが、今回のエッセイを書いて「アイドルから元気をもらって生きてきた自分」に改めて気付いた。
いま推しているグループは、ユーチューバーとして動画を毎日投稿しながらアイドル活動もしている「おこさまぷれ~と。」というグループだ。チャンネル登録者数は、2024年3月3日に64万人に到達。
ある日突然YoTubeのホーム画面でレコメンドされ、何の気なく見たドッキリ企画が面白く「この人たち何者?」と探るような感覚で、毎日投稿される動画と過去動画をポツポツ見ているうちにーー、ハマってしまった! 初めて見た動画は、マジシャン・あたらしくんとのコラボ動画(あたらしくんのチャンネルも好きです!)。これが面白かった。
手の込んだ企画が多く、動画編集やテロップの入れ方もバッチリで、メンバーの進行やリアクションもうまい。最初はてっきりプロのクリエイターさんや大手事務所、腕のいい構成作家さんなどが一枚噛んでいるのかと思った。だが、どうやら諸々自分たちでプロデュースしていることがわかってきて「これをアイドルたちが自力でやってるの?」と驚かされ、一気に応援したい気持ちになった。
動画配信に加えて、アイドルとして楽曲リリース、ライブ、ツアーなどの活動も。歌とダンスのレッスンにも余念がない。必要に応じて、有能なスタッフさん、裏方さんたちの協力を得ているにしても行動力がすごい。
動画の編集も、かつてはパソコンが得意なメンバーが手分けしていた様子。また、動画の冒頭で各回の趣旨やルール説明をしているメンバーが企画者とである。企画者を中心に、他のメンバーが動画を成立させるべく全力でぶつかっていく様子は「やらされてる感」が皆無なので、動画がイキイキしている。
ユーチューバーらしい「やってみた」系やゲーム企画、体当たり系のチャレンジ企画も見ごたえじゅうぶんだが、要注目なのはドッキリ動画だ。メンバー同士でドッキリを仕掛け合い過ぎた結果、ちょっとやそっとではだまされないメンバー向けに手の込んだシチュエーションが用意されることもあり、とにかく企画がよく練られている印象を受ける。
メンバーのキャラかぶりもない。何本か動画を見ているうちにメンバーの個性も分かってくると、狙い通りに進まずグダっている動画や、ルールがブレブレなゆるい企画も、愛くるしく感じられるようになる。おこさまぷれ~と。を知って数か月後に「これは課金しなくては!」という思うようになり、現在はメンバーシップ歴1年2か月である。
動画の面白さに加えて、音楽面も充実している。歌唱力抜群のちゃきさん、かすみんさん、音大生でピアノが抜群に上手なごりかさんの存在は、他のアイドルグループにはない強みだ。個人的おすすめ曲は「サマースパークル」「ハッピースパイラル」「スイム」「ねっちゅーしょーさまー」「SIX STARS」「バレバレンタイン」。
現在のメンバーは6人。上記3人以外のメンバーもキャラクターが立っている。「3歳児キャラ」ながら裏ではしっかり者でダンスが得意なひめかのんさんは、ジョジョやガンダムにも詳しくて個人的にポイントが高い。演技力と運動神経が抜群で底抜けに明るいもんちさん、ぶっ飛んだ言動が目立つ一方で絶妙にグループ内のバランスをとっているりあらさんの存在感もすばらしい。ぶっ飛んでいるのは、ちゃきさん、かすみんさんも相当なもの。ごりかさんも、何かとツッコミどころが多くて目が離せない。
これまで、のべ10人のメンバーが所属し4人が卒業。動画編集ができるメンバーの立て続けの卒業や、リーダーにしてドッキリスターでもあったのぴさんの卒業により、グループ存続の危機なのでは? と思うような時期もあったが、なんとか乗り越えて現在に。毎日追えるから、メンバーと一緒に歩いている感覚があるし、舞台裏のドラマを想像して感情移入してしまう。22年終盤の新メンバーオーディションは、ドキドキしながら見させてもらった。
近頃は、YouTubeの規制強化の影響などもあるのか、一時期に比べて過激さは落ち着いてきている印象だが、それでもちゃんと面白い。時代を読み、メンバーの個性を生かし、現状にフィットする企画を打ち続けるおこさまぷれ~と。をこれからも応援し続けたい。
おこさまぷれ~と。も、基本的には箱推しだ。ただ、まだまだ魅力を隠し持っているように思えるひめかのんさんは気になる存在である。加入直後のドッキリ企画で見せていた、正義感の強さや、ブレない自分を持っている感じも良かった。キャラとルックスに注目が集まりがちだが、個人的にはパーソナリティに惹かれる。
おこさまぷれ~と。について語り合える知り合いが身の周りにいないので、つい語り過ぎてしまう。ライブやコンサートは未経験。本エッセイの中ほどで「コンサートには行かない」と語った私だが、思い返してみればバンド活動をしていた時期は「みんな! ライブに来てくれ」と心の底から思っていた。もしかしたらおこさまぷれ~と。は見に行っちゃうかもしれない。恥ずかしながらポリシーぶれぶれ。それくらい気になるグループである。
坂道シリーズや、BiSH、ももいろクローバーZの人気は理解できる。曲はいいし、メンバーのキャラクター性も申し分ない。そもそも覚悟を決めて世に出て、アイドルとして活動しているみなさんは全員尊敬に値する。
そんななかで、私はどうしても「振り切った面白さ」を求めているのだと思う。モーニング娘。は、冠番組「ハロー!モーニング」で毎週のようにコントや体当たり企画に挑んでいた。アイドリング!!!の面白さは言わずもがなだ。振り切った笑いがあり、音楽がよくて、メンバーの個性が掛け算式な相乗効果を生んでいるといった点で、おこさまぷれ~と。は、私の価値観においてはアイドリング!!!やモーニング娘。に重なる。
そういう意味では、佐久間宜行さんがプロデュースするアイドルグループ「ラフ×ラフ」は気になる存在だ。最近動画をチェックできてなかったので、近いうちに一気見したい。
最後にちょっと毛色の違うエピソードも記しておこう。
トミーくんと一緒に活動していた有頂天のコピーバンドに、毎年のようにアイドルかるた作って新年会にやってくるMちゃんという女性メンバーがいた。ハロプロ系強め。なぜにバンドメンバーとアイドルかるたをやろうと思ったのかは謎だが、そういうヘンテコなことに寛容な仲間がそろっていたし、Mちゃんの自作かるたで最新のアイドルを知ることもできたので、個人的にとても楽しんでいた。
Mちゃんとはウマがあい、お互いにアイドルが好きだったことから、「一緒にアイドルグループをプロデュースしてみない?」という話になった。どちらが言いだしたのやら。そして、一連の過程を番組化して、同じバンドの某メンバーに向けて配信するというお遊び企画に打って出た。ライブ配信ができるプラットフォームがまだまだレアだったなか、いまはなきUstreamとTwitterの組み合わせで番組を流し、実際にアイドル候補を募集した。だが、Mちゃんとスケジュールが合わず、配信場所の確保も難しかったことから、応募者ゼロのまま数回で自然消滅。アイドル志望の子から本当に連絡がきたらどしよう、その子の青春を預かる責任をとれるのか? という不安もあったので立ち消えになって良かったのだと思う。
当時の配信データは消滅しているみたいだけど、Twitterアカウントだけは残っていた。Mちゃん、元気にしているだろうか。いまどんなアイドルが好きなのか、連絡してみようかな。
ダラダラ書いていたら、本当に長くなってしまった。リレーエッセイをスタートさせて最長である。ところどころ削ってスッキリさせるべく読み直しているうちに「これも書いておこう」や「あれも書かなきゃ」が思いついて、余計に長くなってしまった。毎回思うことだが、もっと短く書きたいんだ、本当は。最後まで読んでくださった方には感謝しかない。
ということで、お次のエッセイも、トミーくんよろしくお願いします。「アイドル」からトミーくんが何を連想するのか、楽しみにしいてます。