ほしかったもの
誕生日プレゼントになにがほしいかと聞かれ、指輪がほしいと答えた。わかった、と彼は言い、その足で近くにあったジュエリーショップに入った。
一緒に店内を1周しただけでなにも買ってもらわず、その日はそのまま別れて帰った。
大事にできないな、と思ったのだ。
この人から指輪をもらっても。
埋め合わせのデート。
適当に見つけたジュエリーショップ。
なにかあげときゃいいだろう、と透けてみえる態度。
そわそわと帰りたがる彼。
家で待つ、私の知らない女性。
ほしがったくせにいらないと言う私に、彼は不服そうな様子だった。
彼にはわからないのだ。
形ばかりのものなどいらない。
私だけを好きなあなたがほしいのだと。
わかってもらえないことがわかってて、
それが全部の答えなんだということを。
目の前にいる人は鏡で、
ろくでもないあなたは私だということを。
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