卒園を綴る-わたしの忘備録
早いもので、卒園式を終えてから2週間過ぎてしまう。
早起きの練習と、遅々と進まない入学準備…。
完全にわたしは氣が抜けているのか、いまいちやる気が出ない。
春の芽吹きの時期の強烈なエネルギーにあてられてしまっている感が否めないが、気が付くと入学式になってしまうので、ぼちぼち、準備を始めなければいけない。
そんなわけで、ようやく卒園式を振り返ってみようかなぁと思い始めたので、パソコンを開く。
長くなりそうだ。
普段はスマホで呟いているのだけれど、長く書きたい時はパソコンを開く。
わたしにとってPCは原稿用紙に書くのと同じ感覚。
時折、想いが強すぎてタイピングのスピードが追い付かない。
けれどカタカタとPCに向かっている時は集中している。
書きながら気持ちを整理していくタイプ。って全然、卒園の話じゃない。
気持ちを切り替えて…
息子の卒園式はクラス単位で行うことになった。
参加者はクラスの子ども達と保護者と先生方のみ。
3クラスあるので、それぞれ1時間程度の式。終わったら、クラスで卒園アルバムを授与して解散。
今のご時世、式ができるだけいいのかもしれない。
式の練習は3学期が始まるあたりからぼちぼちと始まった。
まずは歌。歌が好きな息子さんは楽しく歌っている。
けれど、このころから徐々にお友達と遊べるのも、会えるのもあと少しだということを意識し始める息子さん。「この歌を歌ってるとなんだか泣けてくるんだよね」と呟いていた。
この3年間で息子さんにはお友達ができた。仲間意識も芽生えてきた。好きな子、嫌いな子、それぞれに対する想いもあるようで、ケンカもしたし、時々、嫌なことを言われたりして傷ついたりもした。でも、わたしが見ている限り、彼は少なくとも声をかけてくれる仲間ができて、幼稚園は楽しく行けている感じだった。一体、どんな話をしていたりどんな風に過ごしていたかは皆目見当がつかないのだけれど、毎年、いつの間にか朝、教室へ行くと誰かが彼の名前を呼んでくれる。そして、いつの間にかわたしのことも覚えられて、お迎えに行くと誰かが彼にお母さんが来たよと教えている。それに彼は「分かってるよ。大丈夫だよ」とクールに応じている。
時々、わたしを見るなり泣き出してしまうこともあったけれど、酷く、行きたくない日もあったけれど、行ってしまえば楽しく過ごせていた。
本人曰く「お友達との時間は好きだけれど、幼稚園は嫌い」
いかにも彼らしい言葉だと思う。
食べられない給食の時間が苦痛で、遊びたくても思うように遊べない活動の時間があって…きっと逃げ出したかったに違いない。それでも逃げずに過ごしていた。毎日、けっこう疲れていたに違いない。
公立の幼稚園だからなのか、延長保育や預かり保育などはなく、お勉強系に力を入れているわけでも、運動系に力を入れているわけでもなく、○○教育といった教育法を採用しているわけでもなく、とにかく、のびのび過ごせるというのか、昔ながらの幼稚園。
療育に通っていたり、発達が遅れていたり、凸凹している子が多く、どの子も特別な配慮なく過ごしている。意外と自然にインクルーシブな感じになっているのか、この年代だから過ごせているのか、入園当初は、息子の特性が気がかりだったけれど、行ってみたら、彼の特性も性格の一つで大丈夫じゃないかと思えるくらいだった。とはいえ、それぞれの家庭での悩み事はあるのだろうし、ベテランの先生方の力と言えばよいのか、少なくとも、息子にとっては悪くない環境だったのだろう。
そう、良い縁に恵まれて、幸せな子です。
2月も半ばあたりだったろうか?急に制服を着たくない、行きたくないと言い出してしまった。
連日の卒園式の練習で遊ぶ時間が少なくなってしまったらしい。
よくよく話を聞いてみると、卒園式の流れがよく分からないという事みたいで、何をどうすればいいのかが分からなくなっていたようだ。
周りをよく見て同じようにする、それでも分からなければ聞く、練習だから失敗しても大丈夫。そんな話を長々とした日もあった。
卒園式、参加できるかのかとうっすら不安になったのだけれど
彼は自分で何とか乗り越えたらしい。
どこで、何を思ったのか、感じたのかは分からないけれど、3月になると問題なくスムーズに練習に参加できるようになった。
流れが分かって、動けるようになったのだろう。
「卒園の練習?ばっちりだよ」とまで言えるようになった。
そして、式ではどんなことをするのか秘密になってしまった。
一体、どんな式になるのか…
式当日はいつもより早く登園しなければなく、バタバタと当日を迎えた。
幼稚園の3年間、もうあっという間で、本当に卒園?というくらいわたしには実感のない日だった。毎日、車で片道20分の送迎。それもこれで終了と思うと見慣れた車窓からの景色もぼんやりと霞んでしまう。
予定より早く着いてしまい、門が開くまで待つことに。
お友だちを見つけては一緒にはしゃぐ息子さん。
全く誰も知らず、隣に座る子を気にしながらの入園式とは違い、実に楽しそう。
始まる前に転んで制服を汚さないかヒヤヒヤなわたし。そんなのお構いなしの息子さん。お友達と楽しくはしゃいでいる姿もこれで見納め。なんだかジーンとしてしまう。弾むように教室へ向かう姿。いつも通りな感じ。これから卒園式があるのだろうか。やっぱり実感のないまま式場のホールへ。
座席には卒園のしおりが置いてあった。
ペラペラとめくると、子どもたちの将来の夢が名前の横に記されていた。
息子さんは「Youtuber」と書かれていた。この3年、いろんな夢を語っていたけれどYoutuberで落ち着いたようだ。よく見てみると、クラスで何となく同じ職業が並んでいた。きっと誰かが言うとそれにつられて、僕も、わたしもな感じなのだろう。それでも、憧れの職業。みんなの夢が叶いますように。
実感のないまま式が始まろうとしていた。式の簡単な説明の後、まさかの園長先生の欠席の知らせが…。濃厚接触者とのことで、せっかく、園児は皆、出席となったのですが、ちょっと残念。いつの頃からか、息子は朝と帰りに園長先生を見かけると先生に突進して挨拶していたので、晴れ姿を見てもらいたかった。
そして、卒園式が始まる。
運動会に一生懸命に踊った曲に合わせて入場。
なんだか涙があふれてきそうになる。そうだ、そうなのだ。
この3年、いろいろあったのだ。
ぴしっと決めた子どもたちが一人ずつ入場してくる。
しっかり前を向いて、堂々と入場して自分の席の前で立っている。
不思議と入園式の情景が思い浮かんでくる。心もとなくフワフワとした感じで先生に連れられて入場していた子たちが一人一人、しっかりとした足取りで歩いている。もう、それだけで十分に成長したのだと感じてしまう。
そして、卒園証書授与の時が来る。一人一人、ステージで受け取り、保護者の元へ渡しに来るのだけれど、息子さん、ステージ上でしっかりわたしの方を見て、行くよとでも合図をくれたのか、それは堂々と歩いてきてくれた。大きくて立派な卒園証書。いつもはちょろちょろと落ち着きのない彼、やる時はやる子なのだ。なんというか、格好よかったぞ!!
しっかりと自分の席に戻る後ろ姿も随分と逞しくなったものだ。
こうやって人は成長していくんだね。だんだんと手を離れてやがては1人で勝手に行ってしまう。
その背中を見送って、自分もまた自分の道を歩く。背負ったり背負われたり…
なんてことを考えていると子どもたちの卒園の言葉が始まった。
ピアノの伴奏に合わせて歌が始まる。5分を超える歌を大きな声で一生懸命歌っている。卒園ソングはなんと涙を誘うのか、いろんな想いが溢れてくる。
「いっぱい遊んだ幼稚園」と声を揃えた後は幼稚園で楽しかったこと、頑張ったことなどを発表していく。
卒園式の練習が始まったぐらいに「前は平気だったんだけど、たくさんの人の前で何か言うのって恥ずかしくなるんだよね」なんてことを言っていた。
果たして彼はどんなことを言うのだろうか。
何度か質問してみたのだけれど、かたくなに秘密だった。
「お友だちとたくさん遊べて嬉しかったです」
よく通る大きな声ですらすらと発表していた。
お友だちが欲しいと入園して、ちゃんとお友だちをつくって、たくさん遊べたんだね。
何だかいろいろと大変だったことも、これからの心配事も小さなことのような気がしてしまった。
彼自身が築いていった幼稚園での日々。
「幼稚園なんて嫌いだ。消えてしまえばいい」なんて悪態をついていたけれど、そんなに悪い世界ではなかったんだね。
楽しいことも嬉しいこともちゃんとあったんだね。
涙が止まらない。
そして全員が発表し終わると再び合唱。息子さんが好きだと歌っていた歌だ。
これも5分を超えるもので、歌2曲に発表と子どもたち、毎日、頑張ったんだねと思うと涙腺崩壊。
そして、退場。
最後の最後までビシッときめていた。
入園式の時は飛んでいくかのようにステージに上がってしまい先生に連れ戻されていたのに…
ごめんよ。息子さん。わたしは少し心配していたのだよ。
こらえられずに立ってしまうのではと。
やるときはやる。そんなことは分かっていたのだけれど、どこか遠くの方で心配しているわたしがいた。
全く、情けない。
わたしはこの3年間で何を見てきたのだろう。
驚くほどに成長していく姿に追い付いていかなくなってしまっていたのだろうか。
出来ないことばかり気にしていたのではないだろうか。
もっと自由に
もっとのびのびと
そんな環境をつくってあげれていただろうか。
君の立派な姿に母、反省。
そして、ありがとう。
最後のクラス時間は卒業アルバムを頂いた。
そして、息子さんからの手紙も。
そこには
おかあさん、ありがとう。
と書かれていた。
こちらこそありがとう。
これから小学生。
幼稚園とは違う世界が待っている。
お勉強、お友だち、そして、自分自身の成長。
わたしが悩むより彼自身が悩んで越えていかなければいけないことがたくさんなのだろう。
嫌だと逃げてしまうかもしれない。
我慢だけではどうにもならないこともあるかもしれない。
けれど大丈夫。
わたしは信じている。
生きてることが嬉しく思えるように。
旅立つあなたへ
次の場所でも
君は君らしく咲けばいい。
誰より美しいその花を咲かせばいい。
愛してるよ。
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