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小説「或る日の北斎」

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文政12年秋、浮世絵師・葛飾北斎は版元・西村屋与八から依頼された錦絵揃物「富嶽三十六景」の創作に悩み苦しんでいた。読本の挿絵、北斎漫画で絵手本のそれぞれ新境地を切り開いたが、細工…
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2023年9月の記事一覧

小説「或る日の北斎」その7

 浅草寺の鐘が昼八つを知らせている。時は配慮も躊躇もせず過ぎていく。聞き慣れた単調な音色…

小説「或る日の北斎」8

「富嶽よ」 「富嶽?富嶽なら錦絵や挿絵にこれまで何度も描いてきたでしょう。先生程の腕をお…

小説「或る日の北斎」最終その9

 陽光が西に傾き、座敷の奥まで射し混んでいる。近くの社の木立から、百舌のけたたましい鳴き…