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人と組織づくりLabo. 第9回:エンゲージメントの向上~従業員満足度があがるとエンゲージメントもあがる!組織力もあがる!

 『人と組織づくりLabo.』第9回のレポートをお送りします。4月から新年度を迎え、皆さん何かと忙しい時期かと思いますが、今回は「初めまして!」の方も2名ご参加くださり、ありがたい限りです。

 さて、今回のテーマは『エンゲージメント』。“engage” という言葉には「約束」や「契約」という意味があります。また「エンゲージメントリング」からも分かるように「婚約」という意味もあります。つまり、会社や組織と、その従業員が「対等」な関係であることが、まず大前提になると思っています。「婚約」する男女の関係に上下なんてないですよね。お互いに「相思相愛」な関係。それが「エンゲージメント」の本質といえると思います。

一般的に、企業や組織における「エンゲージメント」とは、
・社員が仕事に対して誇り・価値を感じている状態
・会社に対して信頼感・愛着を感じている状態
・会社の目的達成のために自主的に貢献している状態

を指します。

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似たような言葉として「ロイヤリティ」「従業員満足度」などがありますが、「ロイヤリティ(loyalty)」には「忠誠・忠実」という意味があり、社員の企業に対する忠義心を意味します。社員と企業とが「主従関係」、「上下関係」であることが背景としてあります。
 また「従業員満足度」は、その名のとおり会社における社員の満足度を指し、業務内容や人間関係、職場環境などに社員がどれくらい満足しているかを表す言葉です。「エンゲージメント」と似ていますが、こちらは「社員→会社」という一方向の評価になります。
 「双方向」なのか「上下」なのか「一方向」なのか。この「関係の方向」が「エンゲージメント」と他の言葉との違いと言ってもいいかと思います。

 さて、少し前になりますが、2017年5月、衝撃的な記事が日経新聞に掲載されました。『「熱意ある社員」6%のみ 日本132位、米ギャラップ調査』という見出しで紹介された記事は、以下のように書かれていました。という見出しで紹介された記事は、以下のように書かれていました。

世論調査や人材コンサルティングを手掛ける米ギャラップが世界各国の企業を対象に実施した従業員のエンゲージメント(仕事への熱意度)調査によると、日本は「熱意あふれる社員」の割合が6%しかないことが分かった。米国の32%と比べて大幅に低く、調査した139カ国中132位と最下位クラスだった。企業内に諸問題を生む「周囲に不満をまき散らしている無気力な社員」の割合は24%、「やる気のない社員」は70%に達した。
          (2017年5月26日付 日本経済新聞 電子版より抜粋)

 約4年前の調査ですが、4年経った今、この数字が劇的に改善されている印象は正直ありません。下手すればさらに下がっているんじゃないか!?なんて不安もよぎります。
 なぜ、日本人の「エンゲージメント」はこんなにも低いのでしょうか?ギャラップのジム・クリフトン会長兼CEOによると、「高度成長時代のマネジメントスタイルを捨てきれない世代の上司と自分の成長に重きをおくミレニアル世代の部下との相克が原因」とのこと。確かにこれはひとつの大きな要因と自分自身も実感しています。ただ、これは個人的な印象ですが、決してミレニアル世代をはじめとした若い世代の人たちばかりが「熱意がない」「やる気がない」というわけではないと思っています。むしろ気になるのは、所謂「団塊ジュニア」世代と言われている、現在40~50代の「おとな」こそが元気がないんじゃないか?という気がしてならないのです。

 さてさて、毎度のごとく前置きが長くなってしまいましたが、「人と組織づくりLabo.」第9回のレポートをはじめます。

▶「社員エンゲージメント向上」宣言

 今回は国内総合エレクトロニクスメーカー/総合ITベンダーのグループ会社様にお勤めの飯室様に、ご自身がマネージャとして「社員エンゲージメント向上」に取り組んできた2年間のご苦労、そしてその成果を共有いただきました。具体的な事例だけでなく、飯室様のご苦労や心の葛藤なども赤裸々にお話いただき、非常に「濃い」時間になりました。

 飯室さんが最初にしたこと。それは「宣言」でした。年度が変わり最初の事業部キックオフ。あるプロジェクトのマネージャに着任し約2ヶ月が経った頃でした。飯室さんは「信用・信頼されるマネージャ」として「働きやすい職場環境をメンバー全員で作り上げること」を宣言します。つまり「社員エンゲージメントの向上」です。その背景には飯室さんご自身が、以前のプロジェクトでストレスを抱え、苦い思いをした経験を繰り返したくない、同じ思いをメンバーにさせたくない、そういう想いがあったはずです。

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▶「RPDCA」の徹底

 では「社員エンゲージメントの向上」のために、具体的になにをしたのか?印象的だったのは、「RPDCA」の実施です。「PDCA」は皆さんもよくご存知かと思います。おなじみの「Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)」です。そこに飯室さんはひと工夫を加えました。計画を立てる前段階において「R」、つまり「Research(組織状態の把握)」を徹底されたのです。当たり前といえば当たり前ですが、これが意外とできていないってコト多いんじゃないでしょうか?前任のマネージャとメンバー全員にインタビューを実施したり、前年度の従業員満足度調査の結果をもとに、リーダークラスと対話を繰り返すことで、現状の課題を洗い出しました。その結果見えてきた課題は3つ。「離職率」、「残業体質」、「人材育成」。このあたりは、顧客や市場の見えないニーズを徹底的に深堀りすることから始まる「デザイン思考」にも通じるプロセスかも知れませんね。

▶「実行」~「改善」の繰り返し

 課題が定まったら、それを解決・改善するための施策を練り、実行計画を立てます。例えば「離職率」については、メンバーとの関係づくりから見直していくわけですが、定期的なミーティングや朝礼、ランチ会などを活用して積極的にメンバーとのコミュニケーション機会を増やしていきます。そして飯室さんならではの仕掛けが「偏愛マップ」の活用でしょう。飯室さんご自身のことをメンバーによく知ってもらうことはもちろん、旧知のメンバー同士も互いに知らなかった面にあらためて気づくことにつながり、コミュニケーションがより活発に、チームとしての結束がより強化されました。
 「残業体質」や「人材育成」においても、単純に業務プロセスを見直すことよりも、業務を通じた育成プランを見直したり、eラーニングを含めた社内外の研修機会を充実させるなど、メンバー一人ひとりのスキルアップを念頭に置かれていることが印象的でした。コーチングの方法論を取り入れた振り返りや、社内SNSを活用したコミュニケーション活性化など、「ひと」の成長、「ひと」の関係性を重視されていることがよく分かります。

▶客観的成果の証明

 飯室さんとメンバーの皆さんが一体となって改善に取り組んだ結果、自己都合による退職ゼロ、売上や利益は増えても所謂残業代は削減、幹部社員やリーダーの登用の他、研修受講回数も大幅にアップと、確実にその成果をあげています。そして総合的な指標としての「従業員満足度」は約0.2ptアップ!特に「コミュニケーション」における満足度の向上(約0.23ptアップ)は目を見張るものがあります。皆さんも実感されているかと思いますが、リモートワークへの移行により「コミュニケーション」はその量、質ともにいろいろと課題が浮き彫りになっています。そんな状況、環境にも関わらず「コミュニケーション」における満足度が上がっているというのは素晴らしいと思います。

▶「プロ上司のオレに任せておけ」

 また、メンバーの皆さんからのコメントには「社員を大切にしてくれる」、「意見を聞いてもらえる」、「自分次第でチャンスを掴むことができる」などなんとも嬉しい意見が・・・。マネージャにとって、業績という目標の達成はもちろん大切な指標のひとつではありますが、やはりそこで働くメンバーの満足度、やる気、熱意・・・そういった「目に見えない」ものを大切にしたいと思いますし、飯室さんはそれを「従業員満足度」の向上という「目に見える」結果として示されたことが素晴らしいと感じました。これぞ「プロ上司」。「オレに任せておけ」と堂々といえる飯室さん。そりゃメンバーもついていきたくなりますよね。「エンゲージメント」向上のための具体的な施策だけでなく、マネージャとしての「あり方」において純粋に「カッコいい」と感じました!

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▶会社と社員の相思相愛の関係づくりのために

 「熱意ある社員」を増やすこと、つまり社員の「エンゲージメント」をあげることは、日本企業において喫緊の課題です。それは単に制度や仕組みを整備するだけでは不十分です。冒頭に記したように「エンゲージメント」は会社や組織と、そこで働く社員との「関係性」が重要な要素になります。会社主導の一方的な取り組みでなく、会社と社員とが相互に協力しあうことが大切です。そのためには、会社が社員を信じる。社員が会社を信じる。そんな「相思相愛」の関係づくりが大切です。そしてそこには飯室さんのような「プロ上司」がいてほしい。「自分はこんな組織を創りたいんだ!」という強い意志を持ち、メンバーを巻き込んで愚直に取り組んでいく。そんな頼りになる「プロ上司」にならなきゃいけない。「プロ上司」を増やしていかなきゃいけない。そのためにはやはり「団塊ジュニア」世代が元気でいなきゃいけない。「おとな」のひとりとして、そう思うのです。

▶次回のお知らせ

 次回の「人と組織づくりLabo.」第10回は「5月19日(水)19時~」開催予定です。詳細は追ってTwitterで発信しますので、楽しみにお待ちください。まだ参加したことがない、興味がある!という方も、ぜひTwitterをフォローしていただければ幸いです!
https://mobile.twitter.com/hitososhikilabo

それではまた!最後までお読みいただき、ありがとうございます!

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