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豊かな暮らしのヒント

北欧デンマークには、これからの日本の豊かな暮らしを実現するためのヒントがたくさんあるような気がしています。その一つが「エコビレッジ」です。コペンハーゲン に次ぐ大きな都市オーフスの北東35kmにある「フリランド」も代表的なエコビレッジですが、ここで実践されている持続可能で幸せな暮らし方を、デンマークのカオスパイロットに3年間留学中の教え子が紹介してくれたので、忘れないようにメモしておきます。

世界一幸福な国デンマーク

ブータンの国王が唱えた「国民総幸福GNH」が1位のデンマークですが、その指標は「持続可能で公平な社会開発」「自然環境の保護」「有形、無形文化財の保護」「良い統治」という4つで成り立っています。ちなみにGNPでは第3位の日本は、GNHではなんと先進国最下位の90位です。幸せに暮らすために日本はもっとGNHの高い国に学ぶ必要があると思います。

日本には、あまり馴染みのないデンマークで実際に幸せな暮らしを実現しているエコビレッジの一つ「フリランド」について教え子から聞いた話をメモしました。

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エコビレッジ

デンマークのライフスタイルについては、近年になって、HYGGEやLYKKEという幸せをキーワードとする本が日本でも相次いで出版されて注目され始めました。これらはどちらかというと個人の暮らしについて言われることが多かったのですが、それをコミュニティ単位で具体的にまちづくりとして実験的に実現しているのが、エコビレッジのようです。

HYGGEやLYKKEについては、別項「デンマークに学ぶ」で紹介しました。

エコビレッジの定義は、「生活のための装備が十分に備わった住居があり、未来に向けて持続的である場所」とされていますが、日本でも限界集落の再生で似たような取り組みをしているところもあると思います。しかし、環境条件やそこで暮らす人々の考え方も様々なので、できるだけ多くの成功例の中からモデルを探すというのも一つの方法ではないかと思います。

フリランド(Friland Eco Village)

ここではデンマークの「フリランド」に実際に行ってきた教え子の写真とお話から一つの事例を紹介しようと思います。

プロジェクト名:Friland Eco Village
場所:デンマーク、フリランド
サイズ:10ヘクタール、105人(大人75人、子供30人)、
設計/計画日:2002
デザイナー:スティーンモーラー他
CLIENT / DEVELOPER:フィンランドのコミュニティ
管理者:コミュニティオブフリランド

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フリランドの歴史的な背景やプロセスについては、専用のサイトを参照してもらうことにして、ここでは送られてきた写真を通して、持続可能な豊かな暮らしを象徴するキーワードを見つけようと思います。この写真には、フリランドの特徴がよく表れています。つまり、

再生可能/リサイクル素材を使用した建物
借金のない生活様式
無駄の発生を最小限に抑える/停止する方法

何より驚いたのは住宅ローンを借りてここに住むことはできない、つまり借金のないコミュニティが実現していることです。さらに、藁(わら)または他の再生可能な建築材料を使用し、自分で家を構築することは非常に安価であり、それを近隣住民が知恵を出し合って支えることでフリランド特有の景観を生み出しています。

このページのトップの写真は、日本で言えばマンションの1階に備えられている集合郵便受けです。これをどのように集合してどのように設置するのかも、それぞれのコミュニティーで話し合って決めて、それに従って自分たちで建築するのだそうです。

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それぞれの家は、そこに住む人々によって建設されますが、そのデザインや建築方法についての全体的なルールはありませんが、再生可能材料とリサイクル材料の使用は決められていて、そのほかにも藁造、木造、石造りの家があるそうです。

ちょっと前の資料によれば、現在、フリランドには37区画に33世帯が住み、約100人のコミュニティとなっているようです。各区画の間には道路を含む共有スペースがあって、住人が誰でも使えるコミュニティーガーデンを始め、樹木が茂っただけの土地、普通の庭、子供の遊び場、湖などが作られているようです。

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家の中はどうなっているの

このフリランドは一般の見学者も快く受け入れてくれるそうで、室内の暮らしぶりも拝見できたそうです。特徴的なのは冬の寒さ対策も断熱をしっかり考えた家の作りだけではなく、エネルギーを効率的に使えるような「ロケットストーブ」のようなものを構築して、これで暖をとることと調理することを兼ねていることです。実際に焚べる薪の量は通常の1/5程度に抑えられるようです。

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デンマーク人特有の概念であるHUGGEは、「親しい人との気の置けない会話やコミュニケーションから生まれる、小さいけれど居心地の良い幸せな時間のこと」ですが、それを実現するための様々な工夫が室内で見られるようです。冬が長く、曇りや雨のどんよりした日々が続く時はキャンドルに火をともし、ソファーやクッションにもたれかかり、食事に工夫をしてワインを飲みながら、親しい友達と会話をして過ごすスペースが備えられています。

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トイレもナチュラルで、まるで自然の中にいるようです。

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電灯や家電製品はソーラーパネルの電力も利用していて、寒い冬は冷蔵庫は止め、その代わりに広い倉庫があって、ここに食材やジャムなどを蓄えておくとのことでした。

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これらの話を聞いていると、持続可能な暮らしの実現を、様々な工夫で達成していて、自然や農地などの環境と住まいとの連続的な構築によって、自分たちの暮らしを豊かにする姿勢が伝わってきます。

ほんの一部の紹介でしたが、このシステムをそのまま取り入れるというのではなくて、日本の自然環境やエネルギー政策、人と人との付き合い方など、多様な条件の中で、しかしこのフリランドの暮らし方に学んだりヒントを得たりする部分が、とてもたくさんあるように感じました。いずれ、ゆっくり訪ねて自分の目で体感してこようと思います。

東京と石垣島との2拠点居住を始めて20年になります。それぞれの土地と情報との中で人生を豊かにする暮らし方「スマートライフ」を実現しようと試行錯誤しています。それぞれの場所で日常の中に見つけた「暮らし」を発信しようと思います。