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 英語で差別語や卑語など、いわゆる「放送禁止用語」とされる単語のいくつかを婉曲的に表現する際、その本来の単語の頭文字を取って「F-word」「N-word」などと表現することがある。
 以下はその例(アルファベット順)で、基本的にはアメリカの話として理解していただきたい。

C-word

"Cunt"(女性器)のこと。「この女」的な罵倒の意味で女性そのものを指すこともある。女性に対して口に出すのは極めて非礼とされる。
 女性にとってはそれを言われた体験を語ることさえ憚られるらしく、有名なサイコサスペンス映画『羊たちの沈黙』では、囚人に「Cuntが匂うぞ」という言葉を浴びせられた体験を正直に告白した女性捜査官クラリスが、カリスマ的悪役「レクター博士」にその率直さを賞賛される場面がある。

F-word

 ”Fuck”(性行為をする)のこと。代表的な放送禁止用語。
 ただし口語としては日本語の「クソっ!」「ちくしょう」的なニュアンスで割と気軽に使われ、中指を上方に向けるジェスチャーがこれを意味することは広く知られている。
 また、ただ下品なだけで特定集団に対する差別語でもないので、キャンセルカルチャーに発展することも少なく、YouTubeなどでも下品さを売りにする配信者(例:CinemassacreチャンネルのAngry Video Game Nerdシリーズなど)は普通に使っている。

N-word

 "Negro"(黒人)やその訛った言葉である、"Nigger""Nigga"などのこと。
 黒人自身が使う場合では許される場合もかなりあるが、白人やアジア系など黒人種以外の者が使った場合、人種差別主義者の烙印を押される危険性の極めて高い(というか、ほぼ避けられない)言葉である。
 また少しでも音の似ている言葉を使った場合でも「勘違いさせる方が悪い」「その言葉を思い出させる方が悪い」という無茶苦茶な理屈で攻撃されるケースもある。この傾向は2020年のBLM暴動によってさらにエスカレートし、中国語で「あれ」を意味する【那个(ネイガ)】という単語を教えた大学教授が授業担当を外されるという理不尽な事態まで発生している。
 実際に間違えられ、キャンセルカルチャーや暴行(未遂)などに発展したことがある単語として、上記中国語の【那个(ネイガ)】の他、【韓国】語の「ニガ(君、お前)」、日本語の「苦い」などがある。

R-word

 "Retarded"(馬鹿な)。「精神遅滞の」を意味する医学用語"mental-retarded"に由来する。米口語では医学上本当にそうである人だけでなく、一般の人や単にばかげた行為をも指して実際にはかなり使われる。
 アメリカのブラックユーモアアニメ『サウスパーク』では差別問題もしばしば皮肉っているが、校内新聞の編集長を務めるジミー少年が、紙面でこの言葉を検閲すべきかどうかをめぐり「ポリコレ派」の校長と対立する展開が描かれる回がある。

「今日は”R-word”の使用について君と話したい」
(『サウスパーク』19シーズン8話)
字幕はNetflix版より

S-word

  普通は”shit”のこと。糞という意味だが、意味の広がり方も日本語と似ており、"shit!"と一言で言えば「クソッ!」「畜生!」というような意味になり、また「駄目な」「駄作の」という意味も持つ。shitty gameといえば日本語でいう「クソゲー」になる。
 また”suck”を指す場合もあり、本来は「吸う」であるが、フェラチオを意味する卑語でもある。さらにshit同様「駄目である」という意味もあり、”This movie sucks."といえば「この映画はクソだ」の意である。


 これらのような”〇-word”という伏せ方のほかに、特に卑語系には4文字の単語が多い(fuck,cunt,shitなど)ことから"four-letter-word"と呼ばれることもある。

参考リンク・資料:

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