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たかが掃除、されど掃除。

日本がKIREIなのは歴史に関係するのか?
「日本はKIREIですねえ」日本に来た外国人からよく聞く言葉です。
「なぜ、日本はKIREIなのか。」この質問は実に深く、簡単に返せる明確な答えはないでしょう。しかし、この答えには日本の歴史と文化、日本という国の立地等々が関わっていると私は考えています。

日本は太平洋に浮かぶ島国です。陸続きにどこかの国と接していることはなく、日本独自の文化が発達しやすい環境にありました。古くは中国からの文化が伝来することや、江戸時代の鎖国下でもオランダと貿易を重ねるといった、多少の海外の交流はありましたが、本格的に他国と交流するのは、1868年(明治時代)以降です。
そう考えると、日本は独自文化の発展期間がすごく長いことがわかります。日本が今、他の国の人々から見て「とてもKIREIですね」と言われる根本的な原因は、この長い独自文化が発展してきた時間の中にあるのではないでしょうか。

無意識下の清潔意識
日本独自の文化の中に大きく関わってくるものの一つに「神道」と呼ばれるものがあります。神道とは日本特有の自然発生的な宗教で、日本人の生活にはすごく馴染み深く、生活のあらゆる場面に染み付いています。例えば、以下のようなものが挙げられます。

・神社にお参りに行く。
・七五三をする。
・節分で豆まきをする。
・お正月になるとお餅を食べ、門松を飾る。

これらの行為はすべて神道の行事です。
神道のルーツは「説明出来ない事柄はすべて神様の仕業である」という考え方にありますが、山の神様、太陽の神様、といったような自然物にも神様は宿っているといったアニミズム的な思想を持ち合わせています。日本人はあらゆるものに神様の存在を見出すことがあるのです。
そのため、自分の身の回りのものを「清める」という行為を自然に行います。この考えは、風水にも活用されています。
例えば、「玄関を常にKIREIにすれば神様は見ていて幸運が訪れる」とか「トイレをKIREIにすることで金運が巡ってくる」などです。
こういった風水的な考え方はおまじないのような要素が強いですが、根本的に「モノを大切に扱う」という行為は日本の神道に由来するものと考えられます。
また、公共の場ではよりKIREIを保とうとする意識が強く働きます。
「モノを大切に扱う」
「日頃から掃除をして、その場と自分自身を清める」
このような行為は、日本人の無意識下にある清潔意識によるものではないでしょうか。

お坊さんが掃除をする理由
日本では「掃除」は、単にその場をKIREIにするだけを意味しません。
そこには自分の心を「清める」という意味も含まれます。

日本にはお坊さんがお寺にいます。お寺と言えば仏教によるものですが、日本はここも独特で、神仏習合と呼ばれる「神道」と「仏教」が融合する期間がかつてあり、そのまま日本文化として今も残っています。
お寺にいるお坊さんも日本で生まれ育ったことにより、「神道」の影響を大きく受けています。そんなお坊さんの日課の多くは掃除から始まります。

お寺の床拭きや水回りの掃除、境内の掃き掃除といった様々な箇所を掃除します。ですが、彼らはなぜ掃除をするのでしょうか。
それは、単にお寺をKIREIにするだけではなく、掃除をすることで自分の身も心もKIREIにするといった精神的な活動のためだと考えられます。しかし、これは精神論だけの話にとどまりません。

清潔な空間にいること、そして、清潔な空間にすることで、精神的な安定やストレスの改善に繋がること、滞っていた仕事の進捗が捗り生産性が向上するといった現象は、今や様々な研究によって明らかにされています。

KIREIは、精神的な考え方だけでなく、実利を伴い、人としての様々な向上に繋がると言えるでしょう。

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